第10話

 俺達は彼女が今日歩いた道を二人で歩きながらお守りを探した。

 

「無いな」


「そうだねぇ・・・・・・はぁ、どこにいったんだろ」


 悲しそうな表情を浮かべる幸城。

 大切な物が見つからないのだ、そんな顔にもなる。

 俺だってスマホを無くしたり、財布を無くしたらショックだ。


「外も探してみようぜ、もしかしたらあるかもしれない」


「そうだね、行ってみる!」


 しかし良く笑う子だ。

 笑顔を絶やさないとはこう言う事をいうのだろう。

 喜怒哀楽のしっかりした子だ。

 中庭に行ってお守りを探し始めるが、やっぱりお守りは出てこない。

 もしかしたら既に誰かに拾われているのかもしれない。


「ないな・・・・・・」


「うん、そうだね・・・・・・あ、疲れたらいつでも帰って良いからね、十分探してくれたし」


「幸城はどうするんだ?」


「私はもう少し探すよ」


「・・・・・・・・・」


 一生懸命捜し物をしている女の子を見過ごす男なんて居るのだろうか?

 例えその子が可愛い子では無かったとしても、男ならその子が諦めるまで付き合ってしまうのではないだろうか?

 俺は彼女のお守りを探す姿を見ながらそんな事を考えてしまった。


「はぁ・・・・・・ここまで来たら最後まで付き合うよ」


「え・・・・・・でももう暗くなって来たし・・・・・・」


「良いよ・・・・・・俺も家に帰りたくないし」


「え?」


「ほら、探すぞ」


「う、うん」


 俺たちは暗くなりつつある学校を内を探し回った。

 しかし、目当てのお守りは出てこなかった。 時刻は16時を過ぎようとしていた。

 

「無いな・・・・・・」


「あはは・・・・・・もうここまで来たら、諦めるしかないのかな?」


「・・・・・・」


 彼女の顔は先程までのあの明るい表情では無くなっていた。

 なんでだろうか、その表情を見た瞬間俺まで気分が落ち込んだ。

 きっとよほど大切だったのだろう、俺は彼女になんて言って良いか分からなかった。


「そんなに大事な物なのか?」


「うん・・・・・・お母さんがくれたの・・・・・・もうお母さん居ないんだけどね」


「・・・・・・」


 更に重い話しになってしまった。

 やばいなぁ・・・・・・これは絶対見つけださないとこの子泣いちゃうんだじゃないか?

 くそっ!

 俺の三個目の異能がこう言うときに役立つ能力だったら良いのに!!

 なんてことを俺が考えていると、目の前を猫が通る。


「にゃー」


 白と黒のぶち猫。

 ん? こいつ何か咥えてないか?


「あ!! 私のお守り!!」


「え!? 嘘!!」


 猫が咥えていた物を俺は再度確認する。

 確かにお守りを咥えていた。


「マジか! よし、捕まえるぞ!!」


「で、でも猫って素早いしどうやって?」


「幸城、お前煮干しとか持ってない?」


「入学式に煮干しを持参してくる女子高生なんて居るわけ無いでしょ!」


 まぁ、そりゃそうだよな。

 猫はお守りを咥えながら、ジーッと壁を見つめていた。

 一体何をしているのだろうか?

 

「どうする? 幸城、お前猫を捕獲するのに特化した異能とか持ってないの?」


「そんな異能存在しないと思うけど!」


「俺は水を出すくらいだし・・・・・・」


 水にビックリして逃げられたらアウトだ。

 電撃の方の異能もまだ使いなれていないから、力加減を誤って猫を殺してしまう恐れもある。

 どうする?

 幸い猫はジッとしてるし、捕まえるなら今なのだが・・・・・・。


「あ! 水出せるんだよね?」


「え? あぁ、少しならな。でも猫相手には・・・・・・」


「大丈夫! 猫の周りを囲むように水を出すことって出来る?」


「そんな都合良くは難しいけど・・・・・・」


「お願い! やるだけやってみて!」


 何か作戦でもあるのだろうか?

 俺は彼女に言われるままに猫に向かって水を出そうと構える。


「いくぞ! 猫を囲むようにだな!」


「うん!」


「よし! いけっ!」


 俺は水を勢いよく猫に向かって噴射した。

 俺の能力は発射した水をコントロールする事も出来る。

 俺は蛇が蜷局を巻くようなイメージで猫の周りに水を走らせる。

 猫は驚きすかさず逃げようとする。

 やっぱりダメか・・・・・・そう思った瞬間、俺の水が突然氷付いた。


「え!?」


 それを見た瞬間、俺は三年前氷付けにされた光景が脳内にフラッシュバックした。


「やった! 閉じ込め作戦成功!!」


「・・・・・・ゆ、幸城・・・・・・お前の能力って・・・」


「うん、氷系統の異能なんだ! 液体なら何でも凍らせられるよ!」


 氷の中に閉じこめられた猫。

 俺はそれを見た瞬間、猛烈な吐き気を感じた。


「うっ!!」


「え!? どうしたの? 大丈夫!!」


「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・悪い・・・・・・」


 吐くことは無かったが、俺は氷の中の猫を見て酷く嫌な気分になった。

 

「早く出してやろうぜ・・・・・・」


「う、うん。本当に大丈夫? 顔色悪いけど・・・・・・」


「あぁ、大丈夫だよ」

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