入学
第9話
*
三年越しの入学式は寂しさを感じつつも少しわくわくしていた。
異能者の才を認められ、将来的にはこの日本の異能に関わっていく生徒を育てる有名学校。
それが清衆院学園。
入学式を終えた俺は一人、考え事をしながら教室の外を眺めていた。
クラスメイトのほとんどは入学式を終えて帰宅して行った、でも俺は一人になって考えたいことがあった。
それは舞からの手紙の事だ。
「……あんなの今更見ても……つれーだけじゃん……」
両想いだった事実を俺は三年越しにしった。
でも舞にはもう俺では無い彼氏がいる。
受け入れよう、そう思っても中々上手く行かない。
舞もそして聖も良い奴だ。
だから余計に二人と居るのが辛い。
今日は入学式が終ったら、舞や聖が俺の為に退院祝いと入学祝いをしてくれると言っていたが、正直行きたくない。
「家に帰ったらどうせ居るだろうしな……」
あの二人が仲良くしているのを見るだけで胸が張り裂けそうになる。
自然と瞳から涙が流れそうになる。
そんな地獄みたいな場所に誰も行きたくはない。
でも、あの二人の俺を思う気持ちは素直に嬉しかった。
だから「ありがとう、楽しみにしてるよ」なんて心にも無い事を言っちまったんだろうな。
「はぁ……本当だったら俺も大学生なのにな」
新しい教室に新しい学校、校庭の桜は満開で空は綺麗に晴れていた。
学校の敷地面積は広く、東京ドームが5個入ってしまうらしい。
まぁ、ここは学校意外にも研究施設が入っているから広いのは当たり前なのだろうけど……。
「帰るか……」
流石にそろそろ帰らないと不信がられると思い、俺は鞄を持って立ちあがる。
すると、突然教室のドアが勢い良く開いた。
「あれ? まだ人居たんだ!」
誰だこの子?
銀髪のロングヘア―の女子が教室に入って来た。
ちなみにこの学校は色々な国から留学してくる生徒も多い上に、校風も自由なので金髪でもそこまで目立たた無い。
まぁ、この子の場合は美少女って意味で注目されそうだけど。
「あのさ! 君も一年だよね? 私と同じクラスに居たし」
「あぁ、そうだけど?」
「あのさ、お守りとか落ちてなかった?」
「お守り?」
「うん、これくらいのお守りなんだけど、色は紫で……」
銀髪の女の子は細かくお守りの詳細を話し始めた。
「悪いけど、そんなお守りは見なかったな」
「そっか……ごめんね、帰ろうとしてたのに引き留めちゃって! それじゃ! ありがとう!」
彼女はそう言って教室を後にしていった。
明るい子だったなぁ……ずっとニコニコしてたし。
それに舞に負けないくらいの美少女。
「お守りねぇ……」
俺にはどうでも良い話しだと思った。
だから、この時の俺は何も考えずに帰ろうと思っていた。
しかし……。
「迷った……」
校内が広すぎて迷子になってしまった。
まさか学校の中で迷子になるとは……だから先生は校内マップのアプリをダウンロードしろって言ってたのか。
生憎俺のスマホは充電切れ、アプリをインストールすることも出来ない。
「どうしたもんかなぁ……」
俺が悩んでいるとなんだか見覚えのある銀髪が廊下を歩いていた。
「あ! さっきの!」
「また会ったな」
教室で出会ったお守りを探している女の子に出会った。
この子、まだ探してたんだな。
まぁ、でもそのおかげでこの状況もなんとかなりそうだ。
「悪いんだけど、昇降口の道を教えてくれないか? ちょっと道に迷っちまって」
「あ、そうなの? それなら連れてってあげるよ! ついてきて!」
「お、おう。ありがとう」
彼女はそう言いながら道を案内してくれた。
お守りを探すついでだと言っていたが、ありがたい話しだ。
「そう言えば何君だっけ?」
「俺は与那城水面、君は?」
「私は幸城拍莉(ゆきしろ ひょうり)、同じクラスだよ」
「探してるお守り、大事な物なのか?」
「うん! お母さんから貰った大切な物なんだけど、入学式の時にどっかにいっちゃったみたいで」
「そうか……」
どうせ家にも帰りたくないし……それなら折角知り合えた可愛い子に協力するのも悪くないかもな。
それに、俺にはこの学校に知り合いがいない。
女子でも話せる相手は作っておいた方が良いだろう。
「手伝うか?」
「え? 良いの?」
「あぁ、まぁ暇だからな」
「おぉ! 君親切だね!! じゃぁ、お願いしちゃおっかな!」
暇だから彼女に付き合うだけだ。
それに探している間に学校の地理も理解出来るようになるかもしれない。
「てか、なんでそんな大切物を無くすんだよ」
「いつもは肌身話さず持ってたんだけどねぇ~、新しい環境で途惑ったからかな?」
「ふーん、じゃぁどこで落としたか見当は立ってないのか?」
「そうなんだよねぇ~、一体どこに言ったんだろう?」
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