第6話

「とりあえずわかったのは二つ、お前の二系統目の異能が雷であること、そしてもう一つの異能をお前がまだ扱えていないことだ」


「簡単に言いますね」


「まぁ、複雑に言っても理解出来ねぇだろ? それで……ここからはお前の今後の話だ」


「今後?」


「あぁ、分かりやすく簡単に言うぞ。お前、この高校に行け」


「いや、ザックリしすぎじゃないですか?」


 この医者は恰好から何から適当だな。

 俺がそんな事を思っていると、見かねたもう一人の医者が説明を始めた。


「君の体が正直言うとまだまだ検査を続けないと分からないことばかりだ」


「なんでですか?」


「三系統の異能の保持と言うのは異例なことだ、今後体に何か変化が起こってもおかしくないし、もしかするとまだまだ異能が目覚めるかもしれない」


 そんな体になっちまったのか俺は……しかし、それと学校と何が関係あるんだ?


「君をこの学校に入学させる理由は研究設備が整っており、医療設備も充実しているからだよ」


「それって……俺の体を……」


 研究の為に都合の良い場所に俺を入学させて、俺を自分たちの管理下に置くってことか?

 そんなのごめんだ!

 俺は異能が三系統備わっていようと、三年氷漬けにされていようと、俺は普通の人間だ。

 そんなモルモットみたいにされるのは嫌だ。


「あぁ、違うよ違うよ! 別に君を研究するために学校を進めてるわけじゃない。むしろその逆、君がモルモットになるを防ぐためだ」


「え? どういう事ですか?」


 俺がそう尋ねると先生は丁寧に説明してくれた。

 紹介された学校は異能者の育成に力を入れている学校、清衆院学園だった。

 俺でも名前くらいは知っている異能の有名学校だ。

 国内では一番大きな異能者育成の学校で、設備も最先端の物が揃っており、自分の異能と向き合うのにも持ってこいらしい。

 

「なるほど……」


「まぁ、親御さんとも話して決めるといいよ。それに無理強いはしないよ、君が普通の高校に通うというのなら、それでも大丈夫なように手を回すよ」


「手を回すって……」


 一体この先生何者なんだよ。

 そう言えば俺先生の名前知らないな……。

 俺はそんな事を考えながら、先生のネームプレートに目をやる。

 名札には石川と書いてあった。

 そうか、この先生は石川先生というのか、今日まで名前を憶えていなくて申し訳ない。

 こんなに俺の事を考えてくれていたというのに……。

 てか、話し戻るけどこの石川先生って本当にただの医者だよね?

 今なんか手を回すとか権力者みたいな事をいってたけど。




 俺は両親とも相談し、石川先生に進められて学校に進学する事にした。

 学費は俺の体の研究データーを活用するという名目で半分は国の機関である異能庁(いのうちょう)が持つらしい。

 本来は入学テストを受け、合格した人のみが入学出来るらしいのだが、俺の場合は特例らしく入学テストを免除してくれるらしい。

 至れり尽くせりとはまさにこの事だが……まさか俺が異能者を育成する学校に通う事になるとは……しかもあのエリート校に……。


「ま……でも、回りは全員三つも年下だけど……」


 舞は今年で卒業する年齢。

 一緒に高校生活を送りたかったが、それも無理になってしまった。

 まさか、三年もダブった状態で高校に通う事になるなんて……。


「ほんと……どうなってんだよ」


 俺からしたらほんの一週間の出来事だが、本当は三年も経過している。

 中々その事実を理解するのは難しい。

 俺がそんな事を考えて居ると病室のドアが開き滝沢先生が入って来た。


「よぉ、なんだお前寝てばっかりだな」


「まぁ、一応病人扱いなんで」


「あ、そう言えばそうだった」


 この人は一体俺をなんだと思ってるんだ……。

 

「お前、来週で退院な」


「え? 本当ですか?」


「あぁ、まぁ体には異能が増えた意外にこれといった変化はないし、何より健康だからな。それに学園入学の準備や日常生活にもなれないといけないからな」


「はぁ……あの、異能はこれまで通り使わないほうが良いんでしょうか?」


「あぁ。だが絶対に使うなとは言わない。異能を見せろと言われて頑なに見せないのもおかしいからな、それにお前は確かに三系統の異能を持っているが、自分で発動をコントロール出来るのはまだ二つの異能までらしいからな」


「わかりました」


「それと、俺の敵検診に来い、正直お前の体ががどうなって異能が二つ増えたのかも分からないからな」


 まぁ、それは仕方ないな。

 事例が無いって聞いた時点でそう言う定期的な検査が覚悟していたし。

 それにこの人から異能の事も聞けるから、俺としては別に良い。


「しかし、お前あの学校に言ったら気をつけろよ」


「なんでですか?」


「あのなぁ、あの学校は異能者のエリートが集まる学校だぞ? 警察庁の異能犯罪対策課とか日本異能自衛軍なんかに進む奴らも多い、あとは独立対異能組織とかにも何人か進んでる。血気盛んな奴らも多い上に、授業の一環で異能を使った模擬戦なんかもやる学校だからな」


 異能が生活の中に浸透し、異能犯罪が増えた昨今。

 対異能のための組織もこの世界には多く存在する。

 警察組織の中の異能犯罪対策課、対テロ用に発足された日本異能自衛軍、そしてそのどちらでもなく、どちらも相手にする独立対異能組織。

 これら大きく分けて三つの組織が現在のこの国を守っている組織だ。

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