第4話
そこに居たのは女らしくなり、綺麗になった舞だと一目で分かった。
なぜだろうか、ずっと好きだった初恋の人の成長した姿だというのに、俺はその姿を見た瞬間俺はなぜか絶望するのを感じてしまった。
「水面!!」
「……舞」
彼女は俺の名前を呼び、そして泣いていた。
医者の話では毎日のように俺を見舞ってくれる女の子が居たと聞いた。
きっとそれは舞なのだろう。
三年間、舞は俺を心配し見舞ってくれていたのだろう。
「やっと……やっと……目が覚めたんだ……」
「あぁ……心配かけたみたいでごめん」
彼女は綺麗になっていた。
そりゃあそうだ。
三年間姿が変わっていない俺と違い、彼女は三年で成長していた。
あぁ、なんで俺は三年も眠ってしまったのだろう。
なんで三年の間、彼女と過ごせなかったのだろう。
愛しい人に会えたはずなのに、俺は現実を突きつけられ絶望した。
「も、もう平気なの? 寝て無くて大丈夫?」
「あ、あぁ……大丈夫だよ」
無理に笑ってそう言う。
舞は一体どんな三年間を過ごしていたのだろう。
化粧もうまくなっていて、前から出ていたところも更に出て……。
「良かった……もう目覚め無いんじゃなないかって……心配で……」
「あぁ、ありがとう」
こんなに心配をかけてしまった。
俺は何をやっているんだ、なんで氷漬けなんかに!!
「あのぉ……そろそろ僕も入って良いかな?」
「え……」
「あ、ごめんね。水面、彼は佐原聖(さはら せい)、高校の同級生なの」
「初めまして、無事に回復して本当に良かったです」
「あ、ど……どうも」
誰だこいつは?
高校の同級生?
ただの同級生が一緒に見舞いに来るか?
もしかしてこいつ……舞の……。
いやいや、そんなわけ無い。
でも……三年経ってるし、もしかして……。
「聖はね高校で知り合ったんだけど、水面のお見舞いに何回も一緒に来てくれたんだよ」
「いや、同級生になるはずだったからね。いつ目覚めて一緒に学校に通えるようになってもいいように、彼女から君の事を聞いてたんだ」
「そ、そうだったんだ……わ、悪い。そろそろ検査があるんだ」
「え? そうなの? じゃ、じゃぁまた来るから!」
「あ、あぁ」
「僕もまた来ても良いかな?」
「も、もちろん」
嘘をついて俺は2人を帰した。
検査なんてもうない。
眠ってる間に俺は嫉妬深くなったのだろうか?
舞が男といるだけでこんなに嫌な気分になるなんて。
「くそっ!!」
俺は再び枕を壁に向かって投げつけた。
どうしようもなく腹が立った。
*
それから入院中、舞と聖は毎日お見舞いに来ては三年間で起こった出来事を話してくれた。
舞は異能の才能を認められ、今年の春から才能ある異能者を育成するための大学に通うらしい、聖も異能の才能があるらしく、同じ大学に通う事になっているという話だった。
ただの友達だと舞は言っていたが、俺はどうしてもその聖の事が好きになれなかった。
しかし、そんな俺の考えと違い、聖は良い奴だった。
俺へのお見舞いを毎回欠かさなかったり、俺を励ましてくれたり、一人で見舞いに来たり。
嫌いになりたいのに、なんでか嫌いになれなかった。
「じゃぁ、また来るよ水面君」
「お、おうなんか悪いな……こんな知らない奴の見舞いに毎回……」
「何を言ってるんだよ、もう友達だろ? あ、あとから舞も来るって言ってたから」
「お、おう……」
素晴らしくできた奴だと俺は聖にそんな印象を持った。
舞と聖は本当に友人だけの関係なのだろうか?
そんな事を考えながら横になっていた。
「飲み物でも買って来るか……」
全然頭の整理が出来ない。
目が覚めたら三年後で俺に三系統の異能の能力があって、しかも好きな子には怪しい影がある……。
「はぁ……これからどうなんだろう」
飲み物を買い、俺はそのまま病室に帰ろうとした。
すると、廊下から舞の声が聞こえてきた。
「ねぇ、彼にはいつ話すんだい?」
「……わかってるわよ。でも……水面だって目が覚めてまだ日が浅いし」
「……そうだね……ごめん。それじゃぁ僕は先に帰るよ」
舞の声ともう一人は聖の声だった。
二人は俺に何かを隠している。
ま……何となく察しはつくが……。
「はぁ……マジで……なんで俺、氷漬けになってたんだよ……」
俺はその場で顔に手を当てため息を吐く。
なんで俺だけがこんな目に合わなきゃいけないんだ。
みんなは先に成長し、俺だけが取り残され、好きな子すらも他の男に……。
「ちくしょ……なんでだよ……」
もう少しで言えたはずだった。
なのに……あのフードの男のせいで俺はこんな目に……。
「あいつ……一体何だったんだよ……」
俺は何となく舞と顔を合わせたくなくなり、わざわざ二つ上の階の談話室に来ていた。
窓の外を見ながらそんな事を呟きながら、考えていた。
「俺が凍ってる間も舞は舞で生きてたんだ……そりゃあ好きな奴も出来るよな……」
まさか、こんな形で舞を諦める事になるとは思わなかった。
せめて、振られるなら告白して振られたかった。
そんな事を考えながらため息を吐いていると、後ろから誰かが近づいてきた。
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