第4話 廃墟
「あのー、痛いんですけど」
俺がおそるおそる話しかけると、美少女は銀髪をさらりと風になびかせ振り向く。
「ここ、入るから……」
たどりついたのは、ある廃墟だった。
しかも、ラブホテルの廃墟。
ちょっと、前に廃墟について調べることにはまったときに、ウチの学校から歩いて行ける距離に廃墟があるってしったのがこの場所だった。
これは本当に物語りみたいだ。
廃墟について興味があっても、実際に廃墟にいこうとする高校生がどれだけいるだろうか。
大抵の奴は、廃墟に興味をもっても、その様子を本やネットでみて満足する。
イマドキ、わざわざ身の危険を冒してまで実物を見ようとするやつなんていない。
だって、不良にからまれたらどする? 警察に見つかって不法侵入とかで補導されたら? なにか犯罪に巻き込まれたら?
そんなことを考えると、実際に冒険にでる高校生なんていないのが普通だろう。
見たこともないくらい綺麗な妖精みたいな美少女に誘われない限り。
それに、俺たち現代の高校生は忙しいのだ。物語にでてくる高校生のように試験休みなんてないし、授業をサボるのだって面倒くさい。テストも課題も次から次へとやってくる。
きっと、物語の中のような青春を送れるようになるには大学生にでもならないと無理なのだろう。
高校三年間というのは、俺みたいな陰キャであっても課題やら学校生活で忙しいのだ。
もちろん、俺の周りにはアルバイトをしているがやつなんかいない。
大抵のことは、気になってもネットで調べて、はい終わりなのだ。
それだけで大抵のことは事足りる。
リスクを冒してまで自分でやらなくていいことはたくさんある。だれかがやっているのならば、その誰かの得た知識や撮った写真をありがたく拝借させていただいて、時短するのがすごく無難だし効率がいいのだ。
旅行だって、なんで旅番組があってネットでいくらでも素晴らしい景色(実際にいっても自然の景色は天候に左右されるし、場合によっては写真ならドローンなどで本来は見られないような景色を撮影できる)があるし。
美味しい食べ物だって、大抵は全国どこにいてもお取り寄せができる。わざわざ、金と体力と時間をつかって、何かを食べにいくより、家の自分のお気に入りのソファーに腰掛けて美味しいものを頬張るのがどれだけ幸せだろうか。
ずっと、そんな風に思っていた。
だから、廃墟の前にたどり着いたとき、俺の心臓はドキドキした。
有り得ないくらい可愛い女の子が俺の小指とはいえ、手を握っているからだけじゃない。
珍しい物、興味があったものの本物を実際に自分の目で確かめたら、なぜだかすごくドキドキした。
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