第68話 反対派議員アーク・ドイル攻略

「断じて痴女などではありません。これは金庫室専用の制服です!」


 制服!

 このレースクイーンみたいなハイレグレオタードにハイヒールを履いた姿が、お堅い銀行の正式な勤務服だと言うのか。ソントック銀行、最高だな。

 しかし、一体何がどうなったらこんな制服が産まれるというのだ・・・


「これはまた素晴らしい制服ですね。デザインした方は天才と言えるでしょう」

「よく分かっているではありませんか」

「もちろんですよ」

「そう、これは銀行員による盗難を防ぐための完璧なデザインです」

 あ、そういうことかぁ。

 防犯目的とはな。てっきり色仕掛けで客引きするためかと思ってたわ。

 いや、それは表向きの理由で、実はスケベ頭取のロマンという線が濃厚だろ。


「お金を隠す場所がありませんし、ヒールの音が響くので忍んで歩けません」

 へぇ、ハイヒールはその為だったか。

 割と考えてるんだな。ただのスケベじゃない。頭の良いスケベだわ。

 お陰で俺も良い目の保養ができた。

 巨乳メガネ三十路女のレースクイーンなんて初めて見たぞ。

 後ろにいる女子銀行員も粒ぞろいだし今後の楽しみが増えたな。ムフ


「アレー様、嫌らしい目で見るのはおやめなさい」ゴゴゴ

 10代中頃の美少女二人を見ていたら注意された。心外だ。

「美しいものを見つめてしまうのは人のさがですよ」

 そう言いながら目の前のジェシカを上から下まで鑑賞させて頂いた。

 この異世界では邪道になるが、エマと同じ175cmぐらいの長身と豊満な肉体は俺の好みど真ん中で絶好球だ。見逃す訳にいかんだろ。


「ジェシカったらこんな若い子に口説かれるなんて羨ましいわぁ」

「貴方は黙ってなさい」

「私はイヴォンヌです。アレー様、これから宜しくお願いしますね」 

 人妻の色気が漂う20代後半の女がねっとりした視線を飛ばしてくる。

 むろん、大歓迎だ。

荒井戸幾蔵アレイド・イクゾウです。こちらこそ宜しく」ニッコリ

 俺も舐め回すような視線でイヴォンヌの身体を観察してあげた。

「あぁ、嬉しいぃぃぃ」

 おおっ、見られて喜ぶとは思わぬ逸材だな。時間ができたら攻略しよう。


「ほら、もう行くわよ」

 ジェシカはイヴォンヌの手を引きさっさと歩き始める。

「失礼します」

「バイバーイ」

 そう挨拶してから10代の美少女たちも後に続いて行った。

 そのスラリとしたピチピチのお尻と脚線美を見つめながら思ってしまった。

 ソントック銀行が業績不振に陥っても契約延長してやろうと・・・



  

「レイラちゃんの三等冒険師昇格を祝って乾杯!」


 カチン カチカチン カチンチン カチン カチン 

 セクスエルム・シスターズの家の食堂にグラスを打ち鳴らす音が響いた。

 皆はワインを口にすると、レイラちゃんに祝いの言葉を並べていく。

 12歳の新成人という異例の若さで上級冒険師メジャーの仲間入りをした巨娘は、嬉しさ一杯の表情でお礼を言うとご馳走を詰め込み始めた。

 

「やっと緊張から解放されて食欲が戻ったようですわ」

 昇格を決めた今日のクエストに同伴したエマも心底ホッとしたことだろう。

「きっと今週は良い事ばかりが続くよ」

 ぎゅうっと手を握り、必ず懐妊するからねと伝えた。

 魔乳司祭はそうなった時のことを想像して幸せな夢の住人となる。

 妄想タイムに入ったか。そっとしておいてあげよう。


「ヴィンヴィン・・・体の調子はどうですか?」

 まだ『さん』を付けずに呼び捨てにするのに慣れてない俺だった。

「まだまだね。魔力が暴れ出すと制御が難しいわ」

「そうですか。じゃあしばらくはまだ部屋に行かない方がいいですね」

 良いと言うまで部屋に来ないでと言われてから四日経つが、それからまったくツンドラ魔導師と二人きりになれてない。


「部屋に来るのは構わないけどエロ助の好きなことは出来ないわよ」

 え、妊娠初期ってエッチしても問題なかったよな。ダメなんだっけ?

「正直、残念でなりません」

 俺は心底ガッカリしたという表情で嘆いた。

「仕方ないでしょう。アナタが出来なくしたんだから」

「えっ、どういうことですか?」

「また出たわね」

 縦じま球団の監督をしていたアニキ!

 いや、今はそんな字面で遊んでる場合じゃない。

「僕がまた何かやらかしてしまいましたか?」

「アナタの世間知らずが無知がまた出たと言ってるのよ」

「というと?」

 はぁ~と深いため息をついたツンドラ妊婦は呆れ顔で俺を見ている。


「ヴィヴィっちは妊娠したから穴が塞がっちゃったのよ~♪」

 ブロックホール!

 この異世界ではそんな女体の神秘が存在したのか。

 じゃあしょーがないわ。素直に諦めよう。

「知らなかったとはいえ、申し訳ありませんでした」

「もうアナタに常識だけでなくデリカシーが無いことにも慣れてしまったわ」

 言葉はそっけないけど声色や表情には何やら余裕を感じる。

 以前のとげとげしさが薄れてきたな。正直ちょっと寂しい。

 俺がヴィンヴィンを大人にしてしまったのか。罪な男だ。

 あ、そうだ、約束してたんだった!

 来年中に子供を抱かせてあげたら何でも言うことを聞いてくれるって。

 今は3月でこの世界の子供は半年で生まれるから来年どころか今年中に抱かせてやれるな。つまり、賭けは俺の完全勝利だ。

 さあ、一体どんなお願いを聞いてもらっちゃおうかなぁ。ムフフ


 しかし、今週はエマ妊活強化週間だ。

 それが終わって他にもいろいろある問題が片付いてからだな。

 三等冒険師になったらレイラちゃんとも妊活するつもりだったけど、幸か不幸か今週は生理のようだ。やはり今はエマに集中しろとの天意だこれは。逆らうまい。

 という訳で、パーティーの後は魔乳司祭と朝まで種付けに励んだのだった。




「よぉ、お前らが来るのは分かってたぜ」


 3月15日水曜の朝。

 俺とピーナは滞納野郎アーク・ドイルの職場であるドイル不動産に来訪した。

 綺麗なお姉さんに社長室へ案内され、にやけた歓迎をされたとろこだ。


「僕たちがここへ来た用を知ってるんですか。それは凄いですねえ」

「ほざくな。ラムンの町おこしに反対したことを責めにきたんだろがっ」

「おやおやぁ、あなた何か勘違いされてますよ」

「あぁぁん?」

「僕たちが来たのは別件ですから」

「は? じゃあ何しに来やがったんだよ!?」


「もちろん、不動産を買いにきたんですよぉ」ニタァ


「ふざけんなぁぁああああ!!」

 パリーン!

 高価なワイングラスが床に叩きつけられ粉々になった。勿体ない。

 ただ、俺に向かって投げなかった分だけは成長したな。


「不動産屋に土地を買いにきてふざけるなと言われてもねえ」

「全くだ。商売する気が無いのなら看板を下ろせ。この痴れ者がっ」

「な、テメーら、マジで土地の購入に来たってのか?」

「最初からそう言ってるじゃないですか」

「チクショー、今度はどうやって俺をハメるつもりなんだ!?」

「そんな気はサラサラないですよ。単純にある場所の土地が欲しいだけです」

「どこだ?」

 壁に貼ってあったウェラウニの地図の該当場所を指で円を描き差し示す。

「この辺を売って下さい」

「そんな何もねー場所を・・・ハッ、そこに俺を埋めるつもりかぁぁぁあ」

 おいおい、変なクスリでもやってるのか。脂汗が尋常じゃないぞ。

「家が手狭になってきたんで大きな家を新築したいだけです。それに、人柱なんて埋めるつもりはありませんから安心して下さい」

 エマ道場のことは伏せておいた。妨害工作でもされたら面倒だからな。


「本当に罠じゃねーんだな」ハァハァ

「神に誓って」

「・・・良いだろう。売ってやる」

「値切るつもりはありませんから、吹っ掛けるのもやめて下さいね」

「タダ同然で奪ってくのかと思ったぜ」

「それは僕のやり方じゃありません」

 成功報酬を踏み倒してたお前のやり方だろと目で皮肉っておいた。

 アーク・ドイルは一応信用したのか渋々と手続きを始めた。



「町おこしの件については何も言わねーのかよ」

 エマ道場の土地購入を終えたところで、アークから切り出してきた。

「こちらから言う事はないですが、反対された理由はお聞きしたいですね」

「ケッ、あんな自作自演野郎を英雄になんてされてたまるか」

「気持ちは分かりますが、町に人が増えれば不動産屋の貴方には良い事ずくめじゃないですか。ビジネスライクに割り切ったらどうです?」

「ちっとばかし観光客が来たからって大して儲かるかよ」

「観光事業は、僕がこの町を発展させる手始めに過ぎません」

「あぁぁん?」


「だから、僕がウェラウニをウルプスからシウダーへ昇格させると言ってるんです」


「バカかお前! 町から市になる為の条件を知ってて言ってんのか?」

「もちろん知ってますよ」

 空いた時間にラムンやエマたちからいろいろ教わってるからな。 

「ハッ、糞ガキのオメーに一体何ができるってんだ!?」

「とりあえず、貴方以外の反対派議員の考えを変えてみせてあげますよ」

「やれるもんならやってみやがれ」

「じゃあ、僕が反対派の説得に成功したらアークさんはどうします?」

「何もしねーよ」

「それでお願いします。町おこしに賛成も反対もしないで下さい」

「何だそりゃ? それで俺に何の得があるってんだ」

「その代わり、僕がウェラウニを町から市にした後、貴方のに賛成も反対もしません。悪くない取引きだと思いますよ」

 むろん、見逃せない違法行為があれば全力で潰すけどな。


「抜かせ。ここが市になるなんて無理なんだよ」

「でも、僕なら可能ですよ。アークさんもちょっとはそう思ってるでしょ?」

「チッ、知ったふうなこと言いやがって」

「じゃあこの取引は無しですね。僕は他の反対派を全員賛成に変えますから、貴方一人だけ反対したところで何の問題もありません」

「ちょ、ちょっと待て。分かった。取引する」

「もう遅いですよ。取引したいなら中立じゃなくて賛成に回って下さい」

「くっ・・・良いだろう。だがテメーがこの町を市にできなかったら許さねーぞ」

「貴方が邪魔さえしなければ必ずウェラウニを市にしてみせます」

「ケッ、そんな命を捨てるような真似するかよ」

 その理性をずっと保ってくれたら良いんだけどなぁ。どうなることやら。

 何れにしろまずは一人、町おこし反対派を賛成に転向させることに成功した。

 残る反対派議員は4人。

 司祭様と保安官と木工職人の親方と教育委員会の委員長だ。

 火種を残さない為にも全員この俺が転ばせてやる。

 さあ、次は誰をどんな風に口説いてやろうか。

 ふふふふふ、何だかちょっと楽しくてなってきたぞー。

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