第50話 エイミー許すまじ!
「メスピーナ殿と森で破廉恥な行為に及んだそうだな」ゴゴゴゴゴ
ぐぎゃぁぁぁあああああああ!!!
あの地味メガネ、やっぱりゲロってやがったぁ。
やってくれた
許すまじ、エイミー許すまじ。この恨みは必ず、必ずぅぅううう。ハァハァ
エイミーには後で落とし前をつける。ハァハァ、だが今はこの場を切り抜けて生還しなくては。ハァハァ、とにかく誤魔化すしかない。ハァハァ
「エ、エイミーの見間違いでは?」
「目撃者がエイミーとはまだ言っていない」ギラギラ
「あっ・・・」
「心当たりがあるのだな。やはり事実か」ギラギラギラ
「くっ・・・」
「エマ殿を捨ててメスピーナ殿を選ぶつもりかっ?」ギラギラギラリーン
「誤解だ! 断じてそういう事ではない!」
真夏の太陽の様に直視できない元女軍人の瞳から顔をそらし何とか反論した。
「誤解か・・・実はな、私も話が逆ではないかと思ったのだ」
んんん、話が逆って何がどうアベコベだというんだろうか。
「というと?」
「メスピーナ殿が貴殿を森で襲ったのではないか?」
「えぇぇぇえええええ」
「彼女は長身で胸も尻も脚も太く目は不吉な赤だ。年も二十歳で盛りを過ぎている。気性も粗野で愛嬌がない。貴殿が自ら望んで相手をするとは考えにくい」
それがするんだなぁ。
この世界では危険球でも俺にはストライクゾーンど真ん中なんだわ。
それに今のピーナ批評はブーメランだぞ。
お前にもほぼ全て言えることじゃないか。それも輪をかけて。
「ピーナさんは魅力的な女性です。襲われたんじゃありません」
「ではエイミーの言葉通りで間違いないのか・・・」
アイリーンがちょっと信じがたいという表情をしている。
地味メガネの奴、一体どんな伝え方をしたんだ。
「彼女は何て言ってたんですか?」
「玉袋で煮えたぎる熱いマグマを解き放ってくれ!」
「げぇ、エイミー」ジャーン、ジャーン、ジャーンと頭で警告音が鳴り響く・・・
後はアイリーンの語る事実を全て認めるしかなかった。いわゆる完落ちだ。
こうなったらもう彼女の判決を待つしかない。
「これは由々しき問題だ」
当事者の俺たちの中では納得済みの行為なんだよ。ほっといてくれよ。
「だが情状酌量の余地はある」
勝手に問題にしといて今度は何を勝手に決めたんだ?
「私とて男の色欲に多少の知識はある。同じ女と続けて三回性交したら別の女でリフレッシュする必要があるのだろ。どこでも娼館が賑わう
あ、そういえば、ギルマスがそんなこと言ってたな。
だけど今回の俺のケースはこれと何の関係もないから。
「しかし、それをメスピーナ殿に求めるのは頂けない」
ピーナも嫁にするからイイんだよ、とはまだ言えん。
「これには込入った事情があるのです」
「その事情とは?」
「部外者にはまだ話せません」
「いつ話せる?」
「早ければ今月中、遅くとも3カ月以内」
「またそれか」
「事実ですから」
「その間にパーティーが崩壊するのではないか?」
「それは無いです。僕が絶対にそんなことにはさせません」
「だが、貴殿の制御不能な煩悩が既に問題を起こしているのだぞ」
それを言われたら返す言葉が無いわ。
実際、バーサーカー・モードで何度も大暴れしちゃってるし。
はぁ~、何だか話がこじれちまったなぁ。
どうしたら良いのこれ?
「そこでパーティー担当である私から提案がある」
おっと、これだなアイリーンの目的は。
ここまでの長い前振りはこの提案とやらを俺に飲ませる布石でしかない。
さぁ、一体どんな要求をしてくるつもりなんだ。
まさか、ギルド推奨娼館の割引チケットを出す訳じゃなかろう。
「お聞きしましょう」
「私がイクゾー殿の下の処理も担当しよう」
「なるほど」
「異論はないな。それでは早速・・・」ゴソゴソゴソ
「あいや!しばらく!しばらく待たれい!」
とりま、ナチュラルに俺のベルトを外しにかかった手を止めさせた。
とんでもない提案をしてきたけど、これは想定内というか『妄想内』だ。
こんな展開があったらいいなとエロ妄想して楽しんでた。
だが、現実で起こるのなら、喜んでる場合じゃねー。
明らかにこれは、毒まんじゅうだ。
喰ったらどうなるか分からん。
ただ致死レベルで危険なのは分かる!
「なぜ拒む。私と似たメスピーナ殿でイケたのだ。私でもイケるのだろ?」
そんなん、めちゃイケに決まってる。
「私の方が年増だが尻と脚には自信があるぞ」
ミニスカから伸びる美脚を俺の足に絡ませてきたっ。
この香り・・・最初から気になっていたが、この甘い匂い、まさか媚薬か。
あ、またアイリーンの手が迫って来るぅ。
頭が朦朧とする、ヤバイ、もう抵抗できない・・・
元女軍人は少しウェーブのかかった紫の髪をかき上げ顔を近づけた。
あぁぁぁぁ、もうダメだ・・・喰われる・・・!!
「そこまでだ」
「ピー助!」
「誰がピー助だ、このエロ助」
薄幸の女忍者はあっという間に音もなく車内に乗り込んできた。
二人なら割と余裕のあるつくりだが三人はさすがに狭い。
自然と俺は赤い瞳を持つ美女二人に密着して挟まれることに。たまらん。
「これは何の真似だ、アイリーン?」
「もうご存じの筈だ。ずっとそばで聞いていたのだから」
マジかっ、最初からいたんならもっと早く助けてくれよ。
「エロ助の下の処理など貴様の出る幕ではない。差し出た真似はするな」
「貴殿は嫌がっていたとエイミーは証言している。パーティーの為に身を犠牲にする姿勢は尊いが、崩壊を防ぐために私が代わるべきと判断した」
「私は別に犠牲になどなっておらん」
「では、証拠を見せて戴きたい」
「貴様は私まで試験しようと言うのか?」
「出来ぬと言うのなら私がやるまでのことだが」
結局、アイリーンからの挑戦をピーナは受けた・・・・・・・・・
5分後、天を仰いで息を整えていると、不意に誰かと目が合って仰天した。
軽トラの様なギルド社用車のコクピットには、後部の荷台が覗ける小窓が付いているのだが、逆にそこから誰かが覗いてる・・・
おでこが広く、大きなメガネをかけた、地味な顔の少女だ。
またしてもエイミーが見ていた。
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