第40話 地味メガネ魔術士エイミーは見た

「あれ? エイミーちゃんも顔が赤いけど大丈夫?」


 レイラちゃんも指摘してるから、やっぱり気のせいじゃないよな。

 広いおでこまで紅潮させてモジモジしてる。

 あ、オシッコ我慢してるんだろ。きっとそうだ。

 男の俺がいるから言い出せなかったのかもしれん。お年頃だもんな。


「だ、大丈夫よ。ほら、いつもの、アレだから・・・」

 アレ? アレってどれのことだ。オシッコじゃなかったんか。

 乙女の秘密ってメッチャ気になるわ。超知りたい。


「なーんだ。熱があるんじゃなくて、気持ち良かっただけかあ」

 気持ち良かった? それは聞き捨てならんな。

「ちょっとレイラちゃん、止めて、男の人がいるんだから・・・」

 ほほぅ、どうやらとっても恥ずかしいことらしいな。ムフフ

「大丈夫。イクゾー君は私のお兄ちゃんだから平気だよ!」

「もぉ、どおしてそうなるの。意味が分からないわ」

 ロリピュア理論は考えたらダメさ。感じナイト。


「おい、いつまで無駄口を叩いている。早く車に乗れ」

 いつの間にかスチームカーの運転席に座り、蒸気エンジンを始動させていたピーナが、ウンザリした顔で即時撤収を求めてきた。 

 ついさっきまで蕩けた顔をしてたくせにメチャクチャ変わり身が早いな。

 さすが女忍者でござるよ。ニンニン



「あの・・・アナタはレイラちゃんのお婿さんですよね?」

 二人掛けシートが向かい合った後部座席の対面に座るエイミーが、遠慮がちだが探りを入れるように問いかけてきた。

「そうだよ。それから僕のことはイクゾーと呼んでよ」

「あれ、二人ともまだ自己紹介してなかったの?」

「うん、レイラちゃんと別れてすぐに僕は森に入ったから」

 そうだったよねと地味メガネの方に顔を向けると、また少し頬を染めていた。


「あ、私、エイミーっていいます。レイラちゃんと同じギルドで仕事をしている五等冒険士です」

「僕はアレイド・イクゾウ。とても遠い国からやって来て、今はレイラちゃんたちの家に婿入りしてるんだ。これからよろしくね」

「あ、こちらこそよろしくお願いします」

「イクゾー君は、私のお婿さんでお兄ちゃんなの。いいでしょー」

 12歳で身長186センチの巨娘な妹が俺に抱き着きながら兄自慢を始めた。

 

「ホント良いわね。私もときめき欲しい・・・」

 俺たちを羨ましそうに見てから、エイミーは白けた顔でぶっちゃけた。

 だったら素直に彼氏を作ればいいのにと思ったが、この世界では巨乳の女はデブ扱いでモテないことを思い出した。

 それにこの爆乳でメガネをしてるってことは、もしかしてエマと同じ病気か?

 魔力循環障害でオッパイに魔力が溜まって頭まで十分に行き渡らず、目に影響が出るんだったよな。うーん、何か急にこの娘が身近に感じられてきたわ。

 よし、俺が力になってやろう!

 その為には、仲良くなって事実を確認しておかねば。


「僕もエイミーちゃんって呼んでいい?」

異世界転移の際に15歳の肉体に若返り、顔までピュアピュアにしてもらった。

それを活かした無邪気な極上の笑顔でニッコリと地味メガネを攻略にかかる。

「え、あ、はい、いいですよ・・・」

「エイミーちゃん、僕とも友達になってよ」

「私と友達にですか?」

「うん、僕もエイミーちゃんと仲良くなりたいんだ」

「それがいーよ。みんなで仲良くした方がいいに決まってるもん」

 良いぞ!さすが天然ロリピュアのレイラちゃん。ナイスフォロー。


「・・・分かったわ。じゃあ改めてよろしくイクゾー君」

「こちらこそ」

 俺はそう言って右手を差し出した。

 エイミーは少し躊躇ちゅうちょしてから右手を出してくる。

 俺はその手を迎え撃つように捕らえてギュウっと強めに愛情を込めて握った。

 その気持ちは正確に伝わったようだ。また顔を赤くしてドギマギしてる。

 うむ、ここまでは順調だな。さらに攻めて行こう。


「エイミーちゃんは何歳なの?」

 女に年を訊くのはタブーだが、この若さなら問題ないだろ。

「13歳よ」

 マジかっ。想像以上に若かったな。

 身長は155センチ程度だけど、全体的な印象で15か16歳だと思ってたわ。

 性格も落ち着いてる分、大人びて見えるし。

 それに、オッパイ年齢は堂々の20代後半だもの。フヒヒ


「もぉ、変なとこばかり見ないで・・・」

 あっ、無意識に爆乳をガン見してたら突っ込まれてしまった。

 地味メガネ魔術士はオッパイを隠すように腕を組んで身をよじっている。

 その仕草が妙にエロスを醸し出してて股間に響くわ。


「お兄ちゃんダメだよ。エイミーちゃんは胸が大きいのを気にしてるんだから」

「ごめんね。でも気になっちゃったんだ。胸が大きくてメガネをしてるから、もしかしたら、エマさんと同じ病気なんじゃないかなって」

「そ、そうなのよ。だからあまり見ないでね」

 やっぱりエマと同じ魔力循環障害だったか!

 子供を作れば治るらしいが、さすがに13歳は不味いな。

 早婚のこの世界でも結婚適齢期は14から16歳だし。

 今はとりあえずキープしておくか。

 ウェラウニの弱小ギルドを強豪へ改革しようとしている俺にとって、この娘は重要な戦力でもあるからな。大事に育てよう。


「大変だね。でもきっと治るから大丈夫だよ」

「ありがとう、イクゾー君」

「そうだ、さっきのことも教えてよ」

「さっきって言うと・・・」

「山で『熱があるんじゃなくて気持ち良かっただけ』とか言ってたじゃない」

「もぉ、本当にイクゾー君はエッチなんだから・・・」

 サーセン。見た目はピュアな少年だけど、中身は汚れのオッサンだもの。

「友達のことだからちゃんと知りたいんだよ」

 でも君だってクエストの戦闘中に気持ち良くなってたドスケベだよね。

「そうだよ。もう友達なんだからお兄ちゃんにも話してあげて」

 俺のロリピュアがGJグッジョブアゲインだ。

 これで落ちるだろ。さあ、キリキリ吐け、吐くんだエイミー!

 

「・・・術士は魔力を一気に放出すると気持ち良くなっちゃうの・・・」


 えっっっっっ!?

 そんなん、色んな意味で危険すぎますやん。

 戦闘で魔法を使う度に快感に襲われて身悶えしてたらやられちゃうだろ。

 それに、快感がクセになったら夜ベッドの中で魔法を使っちゃうよね。

 つか絶対やってるだろ魔法オ☆ニー! 略してマホニー!


「だから仕方ないんだからね・・・」

 そう言い訳するエイミーの顔がまたまた赤い。それに目が泳ぎまくってる。

 あ、この娘は既にクセになってるっぽいな。

 地味メガネだから奥手かと思ったのに、まったくけしからん。ムフフ


「そうだったんだ。変なこと言わせちゃってごめんね」

 羞恥プレイはこの辺にしておくか。

 初対面で友達になったばかりなのに、これ以上攻めたら嫌われてしまう。

 エイミーだけじゃなく、レイラちゃんの機嫌も損ねちゃうしな。

 という訳で、話題を変えるとするか。


「遅くなったけど、レイラちゃんクエスト成功おめでとう!」

「ありがとー」

「これで昇格試験も連続2回合格だからあと4回だね」

「うん、絶対に三等になってギルドと専属契約できるようになるね」

「レイラちゃんならきっとなれるよ」

「だけど、今日はちょっと危なくて焦っちゃった」

「ピーナさんが言ってたけど、体の軸がブレていてバランスが良くないって、だからイメージ通りに体が動かないらしいよ」

「それは私も見てて思ったわ。そのせいで、今日のツライグマみたいに小さくて素早い魔獣には手こずってしまうのかなって」

 へぇ、エイミーも良く見てるじゃないか。伊達に冒険者やってないわ。


「えー、自分だと全然気づかなかったよー」

「案外そういうものよね」

「だけど、体の軸ってどうやって鍛えればいいのかなぁ?」

 ふむ、要するに体幹トレーニングだろ。

 とういうことは、アレを使えば良いのさ。


「レイラちゃんの体の軸を鍛える方法は僕が何とかするよ」


「え、イクゾー君が?」

 エイミーはあからさまに疑わしい目を俺に向けている。

「僕に任せておいてよ。約束する」

「うん、お兄ちゃんは絶対に約束を守ってくれるもんね」

 レイラちゃんは信頼しきった目でニコッと笑った。守りたいその笑顔。

「ああ、絶対だ」

 ゴム製の方は時間がかかりそうだが、何とかなるだろ。うん。


「ところで、討伐したツライグマは持って帰ってどうするの?」

 まさか食べたりしないよな・・・

「うーん、ギルドで査定が済んだら捨てちゃうんじゃない」

 知らんかのい!

 そーゆーところだぞ、レイラ君。

 三等冒険師になるつもりなら、もっと仕事に興味を持たないと。


「帽子にするのよ」

 帽子!?

 アライグマもどきを頭にかぶるってどういうことだってばよ。

 今度は俺が疑わしい目をエイミーに向ける番だった。


「もぉ、馬鹿ね。毛皮をとって帽子にするのよ」

「なるほど」

 思わずポンと手を打ってしまった。

 帽子と言われてすぐに気付かない俺も相当なアホやわ。


「でも、半分ぐらいしか帽子作れないかも・・・」

 レイラちゃんが巨体を小さくして心配そうにつぶやいた。

「そうねえ。何匹かはめった切りにしちゃったから」

「うん、赤字にならないといいけど」

「アイリーンさんは黒字になるって言ってたからきっと大丈夫よ」

 そうだな。あの鉄血担当なら冷静に見切って発言してるはずだ。

 

「毛皮は帽子になるとして、肉はどうするの?」

「食べるわよ」

 マジかっ!?

 ラスカルを見て育っただけにちょっとこれはエグいわ。

「えー、エイミーちゃんツライグマを食べちゃうの?」

「まさか。食べるのは私じゃなくて家畜よ」

 そーゆーことか。脅かすなよ。

 あ、地味メガネがドヤ顔でニヤリと笑いよった。

 やられた、確信犯か。クソ、いつか孕ませてやる。


 そんな他愛のない話をしている内に、ピーナが運転するスチームカーはギルド裏口に到着した。ここは冒険者が討伐した魔獣や採取した植物の受付をする所だ。

 車から降りると、先に到着したアイリーンの車の荷台からルークがツライグマ12匹を降ろす作業でヒイヒイ言っていた。

 ま、奴はこういった単純労働の為に雇った助手だから同情はいらない。

 情けないと感じて強くなればいいだけのことだ。

 俺としてもルークが剣士として戦力になってくれたら有難い。頑張れ若者よ。

 

 エイミーもルークを手伝う気はサラサラないみたいだ。

 クエスト成功の報告書提出の仕事が残っているレイラちゃんやアイリーンに別れを告げて帰宅しようとしていた。

 ふと俺の方を見た爆乳メガネは、少し迷ってからこちらへ近づいて来る。

 一応、友達になった俺にも別れの挨拶をしてくれるようだ。嬉しいね。

 無視されて帰られてたら地味に凹むとこだったわ。

 しかし、エイミーの口から飛び出した言葉はそんな生温いもんじゃなかった。

 またしてもドヤ顔をしながら、小さな声でボソッと爆弾を落として行く。


「森の中でしてたことは、黙っててあげるね」ニッコリ

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