第24話 夜這い 第2ラウンド 感想戦

「・・・かーーめーーはーーめーー波ァァァアアアアアアア!!!」


 んあっっっ出たぁぁぁあああ何かスッゴイのが出たぁ超気持ちぃぃいいい


 ガクン、バタッ!



 チュンチュンチュン、チュチュンがチュン!

 ・・・小鳥たちのさえずりが聞こえる・・・ん、朝か・・・

 あれ、俺たしか昨日、ヴィンヴィンに夜這い、あっっっ、


 見開いた目の前に青肌魔導師が寝てらっしゃる!

 こちら向きで端正な寝顔を見せながら上品な寝息をたてられてらっしゃる。

 しかも俺と抱き合うようにスッポリと収まる感じで。


 何がどうなってこういう状況になったんだっけ?


 まさか、俺たち一線を越えてしまったんじゃ・・・

 いや、それはない。

 さすがにってしまったのなら憶えてるはずだ。

 思い出せ、昨夜何があったのか、何をやらかしたのか思い出すんだ。


 そ、そうだっ、ヴィンヴィンの全身を舐め回して汗から大量の魔力を摂取したら、もの凄い万能感に突き動かされて窓から外に向けてかめはめ波を放ったんだ!

 しかし、その後の記憶がポッカリと失われている・・・


 ダメだ、その後は何も思い出せねー。

 脳内に浮かんでくるのは細くて綺麗なうなじ、芸術品の様な足指、つるつるスベスベな太もも、際どい下着を穿いた小尻、そして艶めかしい青白い肌だ。

 あ、それにヴィンヴィンさんの体が良い反応してたのも憶えてるわー。ムフ


 改めてヴィンヴィンの寝顔を眺めてみた。

 ホント黙ってさえいればお姫様のような美しさなんだよなぁ。

 俺はその抗い難い魅力に吸い寄せられるように顔を近づけていった。


 柔らかそうな唇まで10センチ・・・あと5センチ・・・


 バチィィィッ


 そんな擬音が聞こえそうな勢いでヴィンヴィンの両目が開かれた!

 メドゥーサに睨まれたかの如く俺は石のように固まって動けない。

 漆黒の瞳に射抜かれたまま数秒が経った。

 その瞳の色からはヴィンヴィンが何を考えているのか読み取れない。

 だけど、普段の彼女とは少し様子が違うことだけは分かった。


「目を覚ましたのならとっとと出ていきなさい」


 いつもよりほんの少しだけ弱気な声で言いながら両手で俺を押し返す。

 逆に俺は魔力ハイによる万能感・無敵感の残滓で強気になっていた。


「嫌だ、もう少しこうしていたい」


 また距離を詰めて優しく抱きしめた。

 ヴィンヴィンは抵抗しなかったがそれに応えようともしない。

 ただただ俺の腕の中にいるだけだった。

 しばらくの沈黙のあと、彼女は何かを決心したようだ。

 この至近距離で真っ直ぐに俺の目を見据えて問いかけてくる。


「どうしてエマの部屋じゃなくて私の所へ来たの?」


 そ、それは・・・いろいろと複雑な事情があってだな。

 うーんダメだ。この状況で正直に話したらどうなるか分からん。

 俺が答えられないでいるとヴィンヴィンはさらに追及してくる。


「初日は部屋を間違ったのかと思ったけど昨夜は意識的に私を襲ったわよね?」


 襲ってない!汗ペロしただけだ!

 いやでも、ヴィンヴィンにしてみれば夜這いされた訳だからそうなるか。

 だがそんなことはどうでもいい。今はこのピンチを切り抜けないと。


 だけど、何て答えたらいいんだ?


 下手なこと言ったらマジで『殺される』まであるかもしれん。

 見た目通りプライドが高そうだからなぁ。ていうかプライドの塊だもの。

 正直には言えない。

 俺に魔力が無いことも絶対に知られたくない。

 でも今のヴィンヴィンに嘘はつきたくない・・・!

 

 「ヴィンヴィン(の汗)が欲しかったら来た。それだけだ」


 ギリギリ嘘じゃないぞ。

 ある意味本当のことだからこれで許してちょうだい。頼む。

 さあ、青い女王様のジャッジはいかに・・・?


「フン、まぁ同じ家にいれば私を襲いたくなるのは仕方ないわね」


 ふぅ、どうやらセーフだったようだ。

 それにヴィンヴィンはいつもの調子に戻ったみたいだった。

 俺を嘲笑 あざわら うような口調で糾弾してくる。


「いくら一線を越えられないとはいえ、あんな下劣な真似をするなんてアンタ頭おかしいんじゃないの?」


 それは全身舐め回しプレイのことですね。

 でも、ちゃんとセーブしてたんですよ。

 顔とオッパイと下着ゾーンは泣きながら撤退したじゃないですかぁ。


「お下劣とは心外ですね。あれは僕の国の愛情表現の一つですよ」

 俺もいつもの口調に戻ってヴィンヴィンとやり合うことにした。


「本当かしら? 単にアンタが変態なだけじゃないの?」


「違います。それにヴィンヴィンさんだって喜んでたじゃないですか」

 俺はちゃんと見てたぞ。ちゃんと憶えてるからな。


「な、何のことかしら? 妄言で私を おとし めるつもりなら許さないわよ!」

 

 コイツしらっぱくれる気か。

 本当は黙っててやろうと思っていたが、この闘いはお前が始めたんだからな。

 後悔してももう遅いぜ。

 突き付けてやる!

 決定的な事実を!!


「足ピン3回」


「くっ・・・」

 ヴィンヴィンは絶句したまま俺を弱々しく睨んでいる。

 ふふふ、どうやら悟ったようだな。己の敗北を。

 だが、まだだ。

 さらに辱めて今度は俺が優位な立場につかせてもらうぜ。


「うなじで1回、太ももで1回、お尻で1回」


「あ・・・」

 ヴィンヴィンはもう俺を見ることもできずその瞳は泳ぎまくっていた。

 どうだ恥ずかしかろう。悔しかろう。

 下僕と思って見下していた俺に三度も昇天させられたんだからな。

 よーし、こんなこと初めてだからもっと楽しませてもらうとするか!


「分かって頂けましたか。あれが愛情表現だということを」

「あんな真似はよほどの好意を持ってないとできませんからね」

「特に足指の間を舐めるのは最上級の愛の証だとされています」


 おおぉ、ヴィンヴィンさんが頬を染めて可愛く照れてらっしゃる!


 これイケるんじゃね?

 このまま甘い言葉を吐き続ければ落とせるんじゃね?

 パーティ最難関だと思ってたツンドラ魔導師をモノにできるんじゃね?


 よし、トドメにとっておきの殺し文句で決めるぜ!



「僕はヴィンヴィンさんならお尻の穴だって舐められますよ」キリッ



 ドカドカドカッ!

 な、何故だ?

 キック三連発でベッドから蹴りだされてしまった。

 キスマイアスを言われずともしてあげると言ってるのにマジ解せん。

 

 ヴィンヴィンは寝返りをうって俺に背中を向けてしまった。

 どうやら俺の殺し文句は不発に終わったどころか逆効果がだったようだ。

 早すぎたんだ。この遅れた世界では。やれやれ時代を先取りし過ぎちまったな。

 そんな感じで凹んでいる俺にツンドラ美少女は容赦なく追い打ちを駆ける。

 

「早く出て行きなさい! 皆にバレない様にしなさいよ!」


「・・・分かりました。じゃあ失礼しますね」

 ここは素直に撤収するべきだろう。

 これ以上機嫌を損ねるのは得策じゃない。


「でも・・・」去ろうとする俺に彼女が何か言おうとした。

「でも?」


「夜這いに来るなんて口だけの男じゃなかったみたいね」


 そう言ってヴィンヴィンは今度こそ話は終わりよ帰りなさいオーラを全開にして俺を拒絶していた。

 でも、ありがとうな。

 その言葉で少し気が楽になったよ。救われたよ。

 実際、汗から魔力を頂いて命も救ってもらったしな。

 本当に感謝してるよ。

 このお礼は、お嫁さんにして幸せにすることで返すからな。ムフ


 勝手な妄想をしながらも細心の注意を払って誰にも見つからず部屋まで帰った。

 自分のテリトリーに戻って一息つき心が落ち着いてくるとある事に気付いた。

 股間がちょっと気持ち悪い。

 なんだかガサガサするというか変な感触がする。

 原因を調べようとズボンを脱いでパンツを下ろすと白いシミが・・・


 え、なんか大量に出ちゃった痕跡があるんですけど。


 昨夜、ヴィンヴィンのベッドの中で夢精しちゃったのか?

 いやそれはないな。

 夢精するほど気持ちいい夢なんて見てない。ていうか夢自体見てない。


 まさか、ツンドラ美少女が俺の寝てる間に悪戯いたずらしたのか?

 これもないだろうな。

 もしそうなら証拠隠滅するはずだ。俺を殺してでも闇に葬りそうだもん。


 となると、何が原因だ・・・・・・あっ、


 かめはめ波か!!


 あの時、全身に魔力が充満してて炎玉 ファイアボール か何かが絶対に出る気がしてた。

 それで実際に俺の体から放たれたのがコレだったわけかぁ。

 どうりでメッチャ気持ちよかったはずだよ。HAHAHA!

 いやぁ腰が抜けそうだったもんなぁ。

 んん、本当に腰が抜けて倒れたちまったんじゃなかったっけ?

 ということは倒れた俺をベッドへ運んでくれたのはヴィンヴィンてことになる。

 これはちゃんと謝らないとダメだな。そんでお礼も絶対にしないとな。ムフフ


 まだ早朝だが部屋にいてもしょーがないので着替えてリビングへ下りていく。

 ソファーに座ってゆっくりしているとレイラちゃんが朝練から戻ってきた。

「おはよーイクゾー君!」

 今日も元気だ戦闘服姿が眩しい。

「おはよーレイラちゃん」

 んんん?

 そのレイラちゃんはソファーに座る俺の後ろに立ったままでモジモジしてる。

 どうしたんだろう?


「今日は・・・舐めないの?」

 

 汗ペロかっ!

 昨日やっちゃったから期待させちゃったみたいだな。

 でも、もういんだよ。

 残念だけどレイラちゃんの汗には魔力が含まれてないんだ。

 

「ありがとう。だけど今は汗よりもレイラちゃんとお話がしたいんだ。シャワー浴びたら一緒にお話ししてくれるかな?」


「もちろんいいよ!」

 言うが早いかビュンと移動を始めるレイラちゃん。

「ゆっくりでいいよー、ちゃんと待ってるからー」

 消えて行く女戦士の背中にそう伝えておいた。

 

「おまたせー!」

 は、早っ!

 また今日も5分ぐらいで出てきちゃったよ。

 レイラちゃんは足早にソファーまで歩いてきて当然の様に俺の右隣に座る。

 白のミニスカワンピースから伸びた長い脚の小麦色がスカートの白とコントラストをなして互いに魅力を増幅させていた。


 妹宣言をしてから大人っぽい服じゃなくて年相応の可愛い服を着るようになったレイラちゃんだけど、そもそも体がスタイル抜群の巨娘なので、恵まれた体とキュートな服自体がコントラストをなしてたりする。


 銀髪ロングストレートは今日も見事に乾いていた。

 この短い時間で一体どうやってるんだろうか。

 乙女の不思議だな。今は何も聞かずに秘密のままにしておこう。


「レイラちゃん、今日から文字を教えてもらうけどその際にお願いがあるんだ」

「なーにぃ?」

「僕が教わるんだからレイラちゃんは妹じゃなくて先生だよね」

「うん、そうなるよね」

「だからレイラちゃんには女教師の格好をして欲しいんだ」

「それってどんなの?」

「白いシャツにピチピチのタイトスカートでハイヒールを履いて欲しいんだ!」


「そんな女の先生はいないよー」


 レイラちゃん、それを言っちゃあお仕舞よぉ。だが負けない。粘ってやる。

「僕の国にはいるんだ!お願いだよ!ね?」

「うーん、イクゾー君がそんなに言うんならいいよー」ニッコリ

 やった!

 合法ロリ女教師レイラ爆誕!

 ほんと素直で良い娘だわーレイラちゃんは。

 絶対に妹からお嫁さんにするぞー。

 とりあえず今はお礼にお尻をナデナデしておこう。

 

「今日も皆でギルドに行くのかな?」ナデナデ

「んん・・・そうだよ」

「今日はどんなことするの?」

「予行演習って言ってたよ」

 ふむ、銀行の開店はまだ先だけど警備の練習をしておくのかな。


「そういえば、銀行はいつオープンするの?」ナデナデ

「ん・・・4月1日・・・んんっ」

 なんか日本人の俺には凄いしっくり来る開店日だわ。

 ところで、そもそも今日はいつなんだろうな。

「今日って何月何日なのかな?」

「3月3日だよ」

 雛祭りだったか!

 この世界では関係ないが女の子の日とはまさにレイラちゃんの為の日だな。

 よし、ギルドから帰った後の勉強会でたくさん可愛がってあげよう。ムフ


 そこへリビング正面のドアからエマさんが現れた。


「イクゾー様、おはようございます。レイラもおはよう」

「おはようございます!」と元気溌溂レイラちゃん。

「おはようございます。エマさん」


 あぁ、今日もまた本当にお美しい。

 ブラウンのノースリーブニットタンクトップはハイネックで首を隠しているのに脇は無防備にさらされている。

 グレーのタイトスカートはムチッとお尻の形を浮き上がらせていた。

 そして今日はスリッパまで生足を晒しておられる。

 ちょっとガードの甘い若奥様という感じが素敵ですよエマさん。


 昨日の濃厚接触の余韻が残っているのかエマさんは今朝もご機嫌でキッチンへ行き、冷たいミルクを持ってきてくれた。

 そして空いている俺の左隣りに座って優しく微笑んでいる。

 なんかもう言葉が出てこなかったので左手でスキンシップしたおした。


 もちろん右手はレイラちゃんにボディタッチ継続中だ。

 そうしてまったりとしているとローラがやって来てエマさんが朝食の準備をして皆でダイニングのテーブルについた。

 いや、今日も一人だけ、ヴィンヴィンだけまだ来てない。

 まさかまた俺のせいで寝不足だとチクチクやるつもりか?


「待たせたわね」ガチャ


「ヴィー、その恰好はどうしたのですか?」

 ヴィンヴィンは何故か既に外出用の全身を覆う魔導師ローブを着ていた。

 その下には黒いハイネックのアンダーシャツを着て手袋もしていたので、肌が見えているのは顔だけという装いだ。

 これが魔導師の正装なのか忌み嫌われる青い肌を可能な限り隠したいのか俺には分からなかった。


「今日は勤務初日ですもの。遅れないように準備してきただけよ」

 ホッ、そういうことなら特に問題ないか。

「ヴィーがそんなにやる気満々だったなんて知らなかったー」

「ハイネックの戦闘服を下に着こむなんて本当に意欲的ですわ」

 何ぃ? ヴィンヴィンも戦闘服を持ってたのか。これは今後が楽しみ・・・


「悪い虫に首元を吸われた跡を隠すためですよネ」


 ブーーーッ!!

 モーニングティー噴いた。

 そ、そういうことなのか?

 俺が一杯キスマークを付けちゃったのか?

 童貞だから気付かなかったよ。


「魔力の枯れかけたお年寄りではないのですから、ヴィーにそんなことは有り得ませんよ」

「そうだよー。人6倍魔力のあるヴィーに虫なんて近寄りもしないよ」

 この世界ではそういうことらしいな。

 だがローラが言ってるのはそういう意味じゃないんだよ。

 ていうか、どうして下半身デブ闇エルフが夜這いのこと知っているのか・・・

 マジで危険だこいつ。何とかしないと。


 しかしヴィンヴィンはずっとスルーしてるけど何を考えてるんだ?

 俺はツンドラ魔導師の様子をうかがってみたが顔色一つ変えてないな。

 大した強心臓だ。見習いたいその面の皮の厚さ。


「何チラチラ見てんのよこのエロ助!」

 

 ヒャーーーッ!

 暗黒の瞳の中で怨念が燃え上がってたわ。軽蔑の光が宿ってたわ。

 そうですよね。僕が調子に乗って全身にキスの雨を降らせたせいですもんね。

 これはまぁしゃーない。好きだけ蔑んで下さい。女王様。


「ヴィー、本当にどうして貴方はイクゾー様と仲良くできないのですか?」

 フォローありがとうございますエマさん。

 だけど、この件はもうそっとしておいて下さい


「喧嘩するほど仲が良いのデスヨ」


 もう良いだローラ!

 マジでどこまで知ってるんだこの肉堕ちダークエルフは。

 とりあえず、肉を差し入れて口留めしておかないとダメだな。


「そうなんだー。じゃあ心配いらないね」

「イクゾー様、お気になさらないで下さいね」

 気遣ってくれるエマさんに大丈夫ですと笑いかけておく。

 とにかく別の話題を振って流れを変えないとな。


「エマさん、今日はどんな予定になってるんですか?」


「はい、ギルドへ行って金庫室警備のリハーサルを始めます」

「もうですか。オープンは4月1日ですからまだ30日以上ありますよね?」

 この世界の1ヵ月は36日だから、正確には34日後になるな

「ええその通りですわ。ですがプレオープンが3月19日ですの」

「プレオープンというと?」

「融資や両替は行わず、預金業務だけ先に開始するようです」

 なるほど。いきなり全業務を始めるより理に叶ってるか。

 それにまず預金を集めないと融資だって難しいのかもな。


「ギルマスはエマさんたちが守る銀行なら大繁盛間違いなしと言ってましたよ」


「さすがにそれは買い被りですわ」

「大事なお金を預けるんだからそんなに甘い訳ないでしょ馬鹿ね」

「この町にも私たちの噂は届いてますケド、所詮しょせん噂は噂なのデス」

「クエストをどんどん成功させて私たちの評判を上げましょう!」


 えー、マジっすかぁ。

 話が全然違うじゃないかギルマスさんよー。

 銀行が儲からないと弱小ギルドも甘い汁吸って太れないじゃないか。

 ギルドも銀行も町も太らせてから俺が頂くつもりなんだからそれは困るぜ。

 よし、仕方ないから俺が描いてやるとするか。

 銀行大繁盛プロデュースの絵をな!




「ギルマス、話がある」ガチャ


 エマさんの運転するスチームカーでギルドビルにやって来た俺は、6階の金庫室に向かう彼女たちと別れてそのままマスター室へ入った。


「婿殿? 朝っぱらから一体どうしやした?」

 お前の見通しが甘々だから早速テコ入れしてやろうというんだよ。

 俺はズンズンとギルマスの机まで歩き前に置かれた椅子にドカッと座った。

 おや、机の上に帳簿らしきものが何冊かある。

 こいつ珍しく仕事してたのか? 雨でも降らなきゃいいが。


「それは帳簿か?」

 

「へぇ、一応マスターですから確認のサインだけはしてやす」

 サインだけじゃダメだろ!

 チェックしろよ。仕事しろよ。

「ちょっと見せてもらうぞ」

 見ても読めんとは思うが帳簿がどんなもんか見てみたかった。


 ん、んんん?

 俺にも読める文字が書き込まれてる!

 どういうことだこれは?

「ギルマス、この文字は何だ?」

 俺は読める文字を指差してラムンに帳簿をつきつけた。

「ああ、それは名宰相の家計文字でやすよ」

 

「いや、これはどう見ても・・・・・・アラビア数字だろ」

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