第11話 エマ司祭 + 女剣士レイラ - 俺 = 22

「・・・ハイ。不束者ですが末永く宜しくお願い致しますわ」


 スイカップ・ドリーム・カムトゥルー!!!!!


 俺やった。夢叶えた。エマさん射止めた。凄いよ。最高だよ。

 ありがとうエマさん。俺なんかに人生を賭けてくれて本当にありがとう!

 歓喜と感謝と興奮で脳内にヤバイのがドバドバ出て錯乱状態になっていた。


「エマさん・・・エマさん・・・エマさん!」ハァハァハァハァ


 これ以上ないってぐらい全力でエマさんを抱き締めた。

 これは夢じゃなくて現実なんだと実感したくて夢中でエマさんを求めた。

 それに応えるようにエマさんは俺の腰に両手を回してくる。


「アレー様・・・ワタクシのお婿様ぁ・・・」

 あぁ、良かった、夢じゃない、俺は本当にエマさんと・・・


「いつまで抱き合ってんのよ! 馬鹿じゃないの!」

 えーい邪魔するな。死がふたりを分かつまで抱き合うに決まってるだろ!


「エマさん、アウトー」

 お互い合意の上なんだから完全にセーフだ。リクエストを要求する!


「エマさんズルイですよー。みんなで決めた約束はどうるすんですかー?」

 約束?何を決めてたのか知らないがノーカン!ノーカン!!ノーカン!!!


 俺は絶対にエマさんを離さないからな!

 もう俺のモノだ!誰にも渡さん!ハァハァハァハァ

 

「アレー様、お話があります。どうかお聞きくださいませ」

 ハッ!?

 エマさんの落ち着いた上品な声で俺は我に返った。

 いかんいかん、ちょっと初号機なみに暴走してたわ。


 スーハー スーハー 


 二回ほど深呼吸して気を落ち着かせる。

 メチャクチャ名残惜しいけど上半身をエマさんから引き剥がすように離していく。

 だが下半身はまだくっついたままだ。

 恥ずかしながら俺のジュニアは上向き姿勢を維持している。

 エマさんから離れると盛大なモッコリが他の3人にバレてしまうのだ。

 それは不味い。


 そんな俺の苦悩を察したのか、エマさんはこの体勢のまま一緒にススっと椅子の前に移動し皆に隠すようにして俺を座らせてくれた。

 そして彼女も直ぐに自分の席へ座った。

 さすがエマさんそつがないわ。ほんまによくできた嫁やで。

 

「アレー様、婿取りについて皆で決めたルールをご説明致します」


「お願いします、エマさん❤」

『エマさん』の部分にあからさまに愛情を込めて言ってみた。

 おぉ、照れてる照れてる。こういうの溜まらんなぁ。これがリア充気分か。

 チッとヴィーが舌打ちしてるが全然余裕だわ。これがリア充バリアか。


「コホン、時間が押してしまいましたので簡単に説明しますわ。アレー様にはこれからひと月の間、ワタクシたち6人と一緒に暮らして頂きます。そして皆と親交を深めて人となりを理解されたうえで、ひと月後に伴侶となる者を選んで頂きたいのです」


「え、僕の伴侶は皆さんが選ぶと町長から聞いてますが?」


「それは町長の誤解ですわ。そんなお婿殿の意に添わぬ結婚など長続きする訳がありませんもの」

「本当に僕が選んでいいのですか?」

 そんなのエマさんを選ぶに決まってると言外に匂わせて言った。

「もちろんですわ」

 エマさんが極上の微笑みを見せながら答えてくれた。

 うん、心は一つだ。

 俺に選択権があるんだからこれで完全にエマさんルート確定した。

 あのイカサマ天使、最後の最後で良いシナリオ書いたじゃないか。


「フン、まぁ今の内にせいぜい楽しんでおくことね」

「私たちはまだ婿取り坂を登り始めたばかりなのデス」

「1ヵ月あれば何が起こっても不思議じゃないです。私も頑張ります!」


 申し訳ないけど、俺の中ではエマさんトゥルーエンド一択なんだわ。

 しかも脳内では既に新婚生活始まってて赤ちゃんまで出きてるんだわ。

 うーん、なんて名前にしようかなぁ。ウフフフフ


「伴侶指名までのひと月の間、ワタクシたち6人は積極的に自己アピールをさせて頂きます。どうか無下に拒むことなく受け入れて下さる様お願い致しますわ。アピールの方法は自由ですが虚偽の伝達と最後の一線を越えるのはご法度です」


 おっと、妄想中にも説明が続いてた。

 そのうえ聞き捨てならない話があったな。


「それは逆に、最後の一線を越えなければOKということですか?」


「そういうこと。エマもいつまで隠し通せるかしらね。フフフ」

「ワタクシはもう何も隠すつもりはありませんわ。しかるべき時と場所で全てを告白しアレー様の決断を尊重するだけです」

「そう、最愛の婿に裏切られないといいわね」

 それは無い。そして俺もエマさんの想いを尊重するだけだ。


「自己アピールは6人揃ってから始めますので、それまでは抜け駆け禁止ですわ」

「アンタがそれを言うのって感じよね」

「フライングはアウトだと思いますケド」

「頬っぺにキスで喜んでた自分が馬鹿みたいです」

「ワタクシは自己紹介しただけですわ。貴方たちが調子にのって墓穴を掘ったに過ぎません」

 確かにその通りだな。

 ヴィーとローラがエマさんの年齢や乳を弄ったからああなったわけで。

 そう考えるとこの二人が俺たちのキューピットとも言える。

 だが感謝はしないぞ。

  

「不在の二人ですが今週中に帰る予定です。説明は以上になりますわ」

「その二人はどこに行ってるのですか?」


「一人はこのパーティーのマネージャーをしておりますので、今後の仕事の調整で近くの都市へ出張してますわ。もう一人はこの家への引っ越しを報告しに実家へ帰っておりますの」


 冒険者パーティーにマネージャーなんているのか!


 いやでも確かにその方が合理的だな。適材適所は円滑な業務の基本。

 リーダーだからってクエストと経営の両方に秀でてる者ばかりじゃないもんな。

 ともかく、この世界は冒険者業界でも分業制が浸透してるのだろう。


「分かりました。また何か疑問が湧いたら質問させてください」

「はい、いつでもどうぞ。では、自己紹介の続きをさせて頂くことにしましょう」

 そうだった。すっかり忘れてたがまだエマさんしかしてないわ。

 俺の心は決まってるとはいえ、これから一緒に暮らしていくんだから変なわだかまりが出来ない様に他のメンバーの話もちゃんと聞くべきだな。

 

「はい!はい! 私が自己紹介します。いいですよね?」


 レイラさんか。そういえば彼女もさっき泣いてたのに今はすっかり元気だな。良かった良かった。

 長身銀髪ロングに女秘書のような装いで見た目は素敵な大人の女性なのに中身はどうも子供っぽい。そこが溜まらない魅力でもあるのだけど、今後の生活でそれが吉と出るか凶とでるか・・・


「どうぞ。でもあまり変なことを言ってアレー様を困らせてはいけませんよ」

「とはいえ、お見合いですから年齢とスリーサイズは基本だと思いますケド」

「ローラ、貴方はまた引っ掻き回すつもりですの?」

「でもお婿さんの方は興味津々みたいよ」

 馬鹿ヴィー、俺に振るな。

 ほら、エマさんが切なそうな顔してるじゃないか。


「アレー様、私の体に興味を持ってくれてるんですね!」

 いやその、無いと言えば嘘になりますです、はい。

「お婿様にはメトリック法で教えたほうが反応良いみたいデスヨ」

 ローラ! お前ホントに油断ならんな。だがグッジョブ。

「ありがと。アレー様、私の名前はレイラ・カイルスっていいます」

 名前はもう知ってる。それよりも抜群のスタイルの数値化はよう。


「スリーサイズは上から92・56・94です」


 おおおおおぅ、分かっちゃいたけどレイラさんも凄いわ・・・ゴクリ

 数値を出されると改めてスタイルの良さが際立つよな。

 特にウエストの細さは特筆もんだろこれ。


 まさにボォン!キューッ!ボ~ン!


 そのうえ足がまた長いんだよなぁ。

 実際、アニメキャラのフィギュアが人間になったような感じだもん。

 こんなん絶対にビキニアーマー似合うじゃん。

 ぜひ自己アピールの時に着てもらおう。拝み倒してでもだ。ムフ


「パーティーでは戦士やってます。今は魔法戦士目指して特訓中ですよ」

 いいねぇ魔法戦士。セラムン的なコスプレもアリだな。


「家では主に力仕事を担当してます。アレー様の部屋も私が模様替えしました」

 俺の部屋をもう用意してくれてたのか。なんか嬉しいな。ありがとう。


「アレー様、何か私に聞きたいことはありませんか?」

 お姉さんたちもそんなけしからんボディをしてるのかい?

 なんてことは聞けないもんなぁ。他に何を訊こうか・・・


「肝心な事を言い忘れてますケド」

 ローラまたお前か。でもちょっと何のことか楽しみではあるな。

「やめてよローラ、アレー様が訊いてこないんだから別にいいじゃない」

「あの、すみません。もし良かったらそれ教えてくれませんか? レイラさんのことも良く知っておきたいんです」

「お婿様にこう言われたらもう話すしかないですネ」


「分かりました・・・アレー様がどうしても知りたいというのなら仕方ありません」

 おお、レイラさんの秘密ってなんだろう。ワクワクしてきたな。


「私の年齢ですけど──」

 なんだ年か・・・でも確かにまだ聞いてなかったわ。

 見た感じでは20歳はたちか、いや案外これで16とかあるかもな。


「12歳・・・です」


 じゅ、じゅ、じゅ、じゅう、じゅうに、じゅうにぃぃいいいいい!?。

 じゅうぅぅぅにぃぃぃぃいいいいいいいいいいい!?!?!?


「・・・本当に、12歳なのですか?」

「黙っていてごめんなさい。あまり言いたくなかったんです」

「いや、確かにもの凄く驚きましたけど隠すような事ではないですよね?」

「アンタってどうしようもなく鈍いわね」

「ヒント、レイラの身長は186センチなのデス」

 つまり、どういうこと? 

「正直、サッパリ分かりません」

 レイラさん、いや、レイラちゃんはチラチラ俺を見ながら不安そうにしている。

 ヴィーは愉快そうにニヤニヤして俺の鈍感ぶりを堪能してから答えをくれた。


「これからまだまだ伸びるってことよ、レイラの身長は」


 あっっっ、そういうことかー。

 12歳で186cmてことは18歳で2m超えもあるよな。もっと早いかもしれん。

 なるほど。レイラちゃんはそれを気にしてたのか。

 爆乳よりも背の高さを気にするところなんて子供ならではだなぁ。


 でも、リビングで言った通り、俺は巨娘が大好きだぞ。

 たとえ2m超えでもレイラちゃんなら愛せる自信があるよ。

 だからそんな悲しそうな顔はしないでくれ。


「僕言いましたよね。レイラさんみたいな発育の良い女性が好きだって」

「もちろん憶えてます! だけど・・・」

「たとえ2mを超えてもレイラさんなら平気ですよ」

「えっ、嘘・・・本当に?」

「はい、だから安心してお腹一杯食べて下さい。せっかくの料理が勿体ないですよ」

「ありがとう・・・ございますぅぅぅぅ。ムシャムシャムシャムシャ」


 ふふふ、無邪気な食べっぷりは本当に子供だよなぁ・・・って、子供!?

 いやちょっと待て、大事なことを忘れてたわ。


 12歳で結婚なんてできないだろ! どうするんだこれ?

 

「あの、12歳ならレイラさんは結婚できないのでは?」


「この国の成人年齢は12歳だから合法ロリなのデス」


「本当にアンタって何も知らないのねぇ」

「アレー様は遠国の方なのですから仕方ありませんわ」


 12歳で成人ってマジかよぉ。


 だから、22歳で行き遅れになってしまうのか。

 とにかく文化が違うわ。俺がどうこう言ってもしゃーない。

 だがしかし・・・

 思わずレイラちゃんをジロジロと観察してしまう。

 うん、これだけ育ってれば何も問題ないか。

 ロリどころかむしろ綺麗なお姉さん系だもんな。セーフセーフ


「ちなみに、結婚適齢期は14から18と言われてマス。21になっても未婚の人は相当な訳ありなのデス」

 やめローラ!

「くっ・・・」

 ほら見ろ、せっかく俺が幸せにしたエマさんがまた唇を噛んでらっしゃる。


「あらあら、早くもお婿さんは年増よりもピチピチの新成人の方が良いってことに気付き始めたんじゃないかしらぁ。エマとの年の差婚よりレイラとの方がお似合いだもの」

「決してそんなことはありませんから」

 これ以上エマさんを弄ぶことは俺が許さん。

「大丈夫ですわ。ワタクシは気にしておりませんから」プルプル

 いやでもこぶしが震えてるじゃないですかぁ・・・


「年の差婚って言ってますが、お婿様とエマさんって何歳差なのですかネ?」

「そういえば一体アンタ何歳なのよ?」

「15歳だと思うのですがハッキリしません」

「アンタの国って貴族ですら戸籍がまともにないの? 本当にひどい所ね」

「ここで暮らすためにちゃんと確認した方が良いと思います!」

「そうですネ。ここはエマさんの出番だと思うのですケド」


「そのようですわね。アレー様、準備が必要ですので席を外させて頂きますわ」


 エマさんが席を立ちリビングへ向かう。

 うーん、事情が呑み込めないが、ここも成り行きに任せよう。

 一応これまで天使のシナリオに間違いはなかったしな。

 心臓に悪い事ばかりだが。


「アンタって体は15でも通るけど、その顔は子供にしか見えないわよ」

「あ、私もそう思ってた。だからよくても一つか二つ上ぐらいかなぁって」

「今度は年齢詐称疑惑ゥゥゥ」

「いえ、さすがに15より下ってことはない筈です」

 思春期男子は身長に敏感だからな。当時の身体測定結果はよく憶えてる。

 だから絶対に15歳以上なのは間違いない。賭けてもいいぞ。


「お待たせ致しました」

 エマさんが戻ってきた。それだけで心がウキウキする。

 右手に持っているのは物騒な形をした杖みたいだが何だあれは?

 もしかして、バトルメイスってやつか!

 聖母のようなエマさんに凶器というミスマッチが逆に魅力的だった。

 左手には紙を丸めたようなものを持っている。

 一体それで何をするつもりなんだろう?


 エマさんはダイニングに設置されてある別の小さなテーブルに向かう。

「何してるの、アンタも行くのよ」

 俺だけでなく全員がゾロゾロと小テーブルへ集まる。

 勧められるがままエマさんの隣に密着して座った。


「このメイスを両手で握って下さいませ」

「はい」

 右腕にエマさんの魔乳が当たりドキドキしながら言われた通りにした。

 その俺の両手に被せるようにエマさんの両手が重ねられる。


「アレー様の年齢を主に問いますわ。答えはこの羊皮紙に現れます」


 エマさんの視線の先にはテーブルに置かれた羊皮紙があった。

 紐から解かれペタっとテーブルに張り付いている。

 ふむ、グロリアさんのような奇跡をエマさんも持ってるみたいだな。

 さすが実力だけなら司教レベルと言われるだけはある。婿として誇らしい。

 ブツブツと小さな声が聞こえてくる隣ではエマさんが祈りを捧げていた。

 祈りの文言が終わると、今度は請願を高らかに唱える。


「主よ、この者が誕生してから幾度の朝を迎えたのか教え給へ!」


 ピシャーッ!


 バトルメイス先頭中心部の玉石が激しく輝き御業みわざの咆哮が轟いた。

 眩んだ目が視力を回復すると、羊皮紙に何やら焼き付けられているのが見える。


 そこには俺には読めない文字で5478と刻まれていた。


「これって何歳になるの?」

「計算は苦手なのデス」

「フン、私にだって不得手なものぐらいあるわ」

 どうやら羊皮紙に現れた日数を年に換算できないでいるようだ。


「エマさん、アレー様は何歳なんですか?」

 レイラちゃんの問いにエマさんは何故か答えず沈黙している。

 急に垂れこめた重い空気がしばし場を支配したあと、エマさんはフルフルと震えながら怯えるような目で俺の顔を見つめる。

 そしてキュッと目を閉じるとまるで余命宣告のように俺の年齢を告知した。


「ア、アレー様の年齢は・・・・・・12歳・・・ですわ」ガクッ

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