第8話 エマ司祭の年齢とスリーサイズ

「アレー様、ワタクシの名前は、エマニュウエルです」


「え、魔乳!?」

 思わず口走った。でも魔乳って言った。確かに魔乳って言ったんだもん。


「エマニュウエルですわ」

 やっぱり魔乳だ!

 エエ魔乳Lカップですよね、分かります。

 名は体を表すとは本当によく言ったもんだ。


「皆はエマと呼んでいますのでアレー様も宜しければそうお呼び下さい」

「はい、僕もエマさんと呼ばせていただきます」


「ええ是非。ワタクシは見ての通り神官をしておりますわ。パーティーの癒し手として励むかたわら、非常勤司祭として教会の務めも果たしておりますの」


 非常勤司祭!


 何だろう、妙に切ない気分にさせられる職業だわ。

 やっぱりこの魔乳のせいで常任司祭的な職には就けないのかな。

 本当に可哀想だ。早く俺が慰めてやらないと。ムフ


「この家では家事全般、特に料理を担当しております。アレー様のご希望する料理がありましたら何なりと申し付けて下さい。遠慮はご無用ですわ」


 俺が希望するご馳走なんてエマさん自身に決まってます!

 なんてことは当然言えないので笑顔で肯くだけにしておいた。


「何かワタクシに聞きたいことは御座いますか?」

 エマさんの全てが知りたいです!

 とはさすがに言えない。

 でも男のタイプと乳のサイズだけは激しく知りたい。

 何とか上手く聞き出せないものか・・・


「これはお見合いですから、年齢とスリーサイズは基本じゃないでスカ?」


 救世主キタコレ!


 俺が座るお誕生日席から見てテーブル右側の近い席にエマさんが居るが、メシアが座っているのはその隣になる。

 まだ名前すら知らないがどうやら強力な味方のようだ。


「おだまりなさい。ローラ」ゴゴゴゴゴゴゴ


 うおっ、聖母のように穏やかだったエマさんが荒ぶってらっしゃる。

 だけどそれでも俺は聞きたいんだ。年齢とスリーサイズを!


「いいんじゃない。この人だってきっと知りたがってるわよ」

 さらに援軍キター!

 今度はテーブル左側で俺に近い席にいる女からだ。いいぞもっと言え。

「本当に知りたいのですか?」

 エマさんが許して下さいと目で訴えていたがこれだけは譲れない。ゴメンよ。

「とっても知りたいです!」

 あぁ、その絶望と屈辱にまみれた顔も素敵だ。もっと見たくなる。


「22歳・・・ですわ」


 プシューと気が抜けたような感じで俯くエマさん、そこへ追い討ちがかかる。

「さばを読まなかったのは褒めてあげるわよ」

 エマさんが声の主をキッと睨みつけるが俺の援軍は華麗にスルーして酒を口にしていた。

 しかし、22歳なら全然若いじゃないか。

 何でそんなに気に病んでいるんだろうな。ちょっとフォローしておくか。


「22なんて気にするような年じゃないですよ」

 アラサーならともかくクリスマス前なら余裕もいいところでしょ。


「22はとっくに行き遅れなのデス」

「間違いなく行き遅れよね」

「行き遅れだと思います」

「くっ・・・」


 俺のフォローが他の3人にバッサリと切り落とされエマさんは唇を噛んだ。

 さすがに気の毒になってきた。

 ここは真剣に慰めると共に俺の株を上げる場面だ。


「僕は本当に気にしませんよ。祖国では30代になってから結婚する女性も珍しくありませんでしたから」

 そう言いながらエマさんの左手を取り両手で優しく包み込む。


「えー、それはスゴイですね」

「アンタの国ってちょっとおかしいんじゃないの」

「作り話は良くないと思うのデス」


 外野の感想は放置して俺は彼女の手を握った両手に力と熱を込める。

 真っ直ぐにエマさんを見つめて、だから僕のモノになってよと目で訴えた。


「ワタクシのためにそこまで仰ってくれるなんて感動しましたわ」

 ホッ、瞳に力が、表情に輝きが戻ってきた。

 何とか立ち直ってくれたようだ。


 しかしこの冒険者パーティー大丈夫なのか?

 エマさんへの突っ込みが冗談の域を超えてたぞ。

 いつもこんな調子なのか、それとも俺という異分子のせいなのか・・・

 ともかく俺は全力でエマさんをフォローしないとな。

 

「年はセーフで良かったですネ。スリーサイズは無理だと思いますケド」


 たしかローラと呼ばれてた女からまたえぐり込むような突っ込みが来た。

 まだ握っていたエマさんの手がビクンと跳ねる。

 ローラよ、お前エマさんに恨みでもあるのか?


「その通りね。往生際が悪いわよ、エマ」

「胸のことは言わない方が皆のためじゃないかな・・・」

「くっ・・・」


 あぁ、またエマさんが苦悶の表情で唇を噛んでらっしゃる。

 ホントこいつらときたら情け容赦ってものを知らんな。

 ここはまた俺がフォローして好感度を上げるチャンスだわ。


 だがしかし、助け舟は出さない!


 だって知りたいじゃないか。

 エマさんのスリーサイズが死ぬほど知りたいんだ俺は! 


 B・W・H! B・W・H! B・W・H!


「エマさん僕たちの間に秘密なんていらない。そうでしょ?」

「そ、そんな・・・無理です・・・」

 なにが無理か!

 それだけ物理的に自己主張しておいて今さら数値だけ隠して何になる。


「せめて、乳、いや、胸だけでもサイズを教えてください!」

 彼女の左手をさらに強く握りしめパーブルアイを熱く見据えて想いを伝える。

 えーいキリキリ吐け、吐くんだエマ!


「分かりましたわ。アレー様にそこまで熱望されたら断れませんもの」

 ヨシッ、落ちた!

 さあ、全力で気になるエマさんのバストサイズはいかに? 


「ワタクシの胸のサイズは・・・3シャーク6スーンですわ」

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