Singularity World-日常の特異点-

Prologue"独白"-日常のはじまり-

　――日常の崩壊。

　これまでの常識を根底から破壊する超常は、何の前触れもなく、ある日突然やってくるのだと。人類が思い知らされたのは今から五十年以上前のこと。

　世界に開いた穴。後に特異点（シンギュラー・ポイント）と呼ばれる事になる時空の歪みは、まさに人類にとっての未知だった。

　その内部には、まるでファンタジー小説のように、こちらの世界とはまったく異なる法則が支配する異世界が広がっていた。

　そして時を同じくして、世界各地にはこの世ならざる力を振るうことが可能な異能力者たちが現れ始める。

　彼らは時空の歪みへと侵入し、こちらの世界には無い未知の技術や物質を持ち帰った。

　既存の人類を越えた力を有した異能力者たちはやがて人々の憧れの的となり、世界各地に出現した時空の歪みはこちらの世界へ新たなる技術や力をもたらす重要な場所となる。

　人間とは恐ろしいほどに適応力が高い種族だ。これまでの常識を粉々に破壊する非常識も、昨日までの日常を根底から覆すような非日常も、やがてはそれが日常であり常識へと変わっていく。

　今や時空の歪みは"特異点（シンギュラー・ポイント）"、この世ならざる力に目覚めた者は"覚醒者（シンギュラー）"と呼ばれ、なくてはならない日常の1ピースとしてこの世界に存在している。

　これはそんな、"特異点（シンギュラー・ポイント）"と"覚醒者（シンギュラー）"の物語。