第86話 猫よ世界たれ!ねこみみ地球、爆進!

 ゴッドホッピーに対峙するねこみみ地球は、ニャーとひと鳴き、オーラ増大! オーラで作った四肢をみなぎらせ、猫パンチで突撃した!


「ぐぬぅぅ、こしゃくなのサー!!」


 こたつブースター全開! 二者は宇宙空間を飛び回りながら殴り合う! 太陽系重力圏から離脱し、天の川をサーフィンし、アンドロメダ星雲を突き抜け、宇宙の端を三角跳びし、超新星爆発を背景に、殴る、殴る、殴る!

 じれるゴッドホッピーはこたつブースターをしゃにむに燃やす! だがそれはマタタビオーラ有効範囲を拡大する行為だ。ねこみみオリオン座が棍棒で殴りかかり、ねこみみさそり座が尻尾の針で突き刺し、ねこみみみずがめ座が水をぶっかける!


「な、なんなのサこれ!? 猫ってなんなのサ!? 猫をパワーアップさせる存在なんて、聞いてないのサ!! マタタビ人間って、どういうことなのサ〜〜!?」


「願いだ!!」


 ねこみみ地球から、マタタビ人間キウイの声が響く!


「俺は、願われてここにいる!

 いろんな願いが積み重なって、俺という存在は、苗宮キウイはここにいるんだ!!」


「キウイ、高校生にもなって厨二発言はどうかと思うにゃ」


「なんで水差すかな!? ここカッコつけていい場面じゃない!?」


「なお願いとは、息子の祖父が猫と仲良くしたいという私利私欲のことを指します」


「母ちゃんもうちょっと言い方あるよね!? もうちょっといろいろ要素があって俺産まれてない!? 誕生の奇跡をもっと彩ってくれてよくない!?」


「パパはキウイたんのこと、やさしーく見守ってるゾ☆」


「あんたは戦えやクソ親父!!」


 ゴッドホッピーは歯ぎしりひとつ。


「ふざけるんじゃないのサ……! こんなふざけたヤツらに、ミーは負けないのサ!」


 両手を突き出す! その手には、殴り合いながら拾い集めたもの。この宇宙中に散らばっていた、ブラックホール!


「ぶっ潰れればいいサーー!!」


 重力波をビームとして放出! 極度圧縮された重力はこの宇宙そのものを縮退歪曲させ、世界の存在まるごとを一本の矢として存在価値を叩き潰さんとする!


 そのとき、ゴッドホッピーは見た。

 ねこみみ地球の口に当たる部分。

 白い光。

 ねこみみ地球もまた、拾い集めていた。

 ブラックホールと対になる存在、吸い込まれた物体の出口とされる天体、ホワイトホール!


 ここで、ブラックホールについて解説を加える。

 ブラックホールに吸い込まれた物体は、あまりに強い重力に引かれるため、スパゲティのように長く引き伸ばされるという。

 今、そうなった糸状の物体は、くしゃくしゃに丸められていた。毛玉のように!


「おぼろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろろ!!」


「ぎゃああああああ〜〜!?」


 宇宙毛玉が炸裂! ゴッドホッピーの超合金装甲も圧縮質量体の毛玉にボコボコに砕かれ、エネルギーが漏出! ねこみみ地球からもオーラが放出され、縮退した宇宙が強引に押し広げられて二本の突起を生じる。ねこみみ宇宙!


 そして後には、毛玉のもふもふが残った。

 極上のもふもふだった。

 ホッピーはもふもふの中、宇宙空間をただよった。

 ねこみみ地球は、そんなホッピーに、手を伸ばした。


 ——ともだちになろう。


 その言葉は、もふもふの感触とともに、ホッピーの心に染み渡った。


「……ごろにゃあ……」


 ホッピーは涙を流し、その手を取った。

 今、地球上に、ホッピーやその他の地球外存在が住める空間が作られた。

 みんなが仲良く、平和に暮らせる世界。その中心には猫。サンキュー猫。ラヴイズ猫。猫イズオール。猫アンドピース。猫イズフォーエバー……!


「だ・か・ら!! 猫うんぬんの話から!! なんでこんな規模の大きな話になるんだーー!!」


 苗宮キウイの叫びは、不可逆変質したねこみみ宇宙に、長く長く、響き渡った。

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