第82話 旧神戦争勃発!暗躍のニャルラトホテプ!1

「フー……新王クロは前王が素質を見いだし、後継を任せた逸材さね……

 自分の才能を自覚するまで、アタイらがサポートすればいいと思ってたけど……」


「えらいすんませんなあ、巻き込んだのはわてらの落ち度ですがな」


 王宮の奥へ。

 戦いを経て洗脳が解けたユエニィエとグリグリが、キウイたちを先導する。

(なお巨大お好み焼きはセピアが一人で食べ切った)

 突き当たり、キウイは扉を開け放つ。


「アブリマル! 勝手に進むなんて何を考えて山盛りトウガラシわんこそばフェスティバル!?」


 部屋ではアブリマルが大量のトウガラシを刻み、ひーひー泣くクロのどんぶりに、母がおかわりトウガラシをついでいた。


「ひぃぃぃん辛いよぉぉぉオイラもう食えないよぉぉぉぉ」


「だーまーれ! このくらいで音を上げるんじゃねえ許さねーぞ!」


 アブリマルは鬼のような顔で言って、それから不意に真剣な表情で怒った。


「ジャミーラさんはな、もっとつらかったんだ!

 アニキたちはきっと許すだろうけどな、おとがめなしで済ませちゃいけねえんだよ!」


「はぁーいそれでもちょっとストップしましょうねぇー」


「脳天ピコハンピラミッド!?」


 ピラミッド落としでのびたアブリマルに、ジャミーラは歩み寄り、それからふっと笑った。


「ありがとう、アブちゃん。わたくしのために、怒ってくれたのねぇ」


 トウガラシから解放されたクロは、しかし取り囲むキウイやスズたちを見て縮こまった。


「ひぃっ、ごめんなさい……!

 でもオイラ、不安で仕方なかったんだよ!

 急に王だなんて言われて、特別な能力もないし家柄だってよくないのに、なんで……!」


「フー……クロ、猫の王に、能力や家柄がいると思ってるのかい……」


 金華猫ユエニィエの言葉に、クロは顔を上げた。

 隣に立ったキウイが、言葉を継いだ。


「俺はこないだ、一国の君主を経験した人と会ったんだ。

 その人に言われたよ、人の上に立つのに必要なのは、理想や能力や家柄じゃないって。

 本当に必要なのは……」


「猫の王に必要なのは!! かわいいこと!! それが一番さね!!」


「あ、あれー!?」


 ユエニィエが力説した。


「狩りも護衛も荷物運搬も食用にすらも役立たない猫が、世界に君臨し人心を掌握できるのは!! 何よりもかわいいから!! それこそが真理!!

 ならば猫の王に求めるのは、かわいい以外に何があると思うさね!!」


 横でグリグリも同意!


「クロはんは、あの美しい前王ですら心酔して肖像画を描き続けるほどの逸材でおまんがな! 猫の王として適正ピカイチでっせ!」


「ちなみに肖像画は大量複製されて、もう国民みんなが買って溺愛してるさね!」


「オイラの肖像権は!?」


 ユエニィエはクロの手を取った。


「フー……クロ、猫のアイドルとして、アタイらが献身的にマネージメントするさね……!」


「にしし! ライブに握手会に撮影会に、王の仕事は大忙しやけれど、わてらがきちんとサポートしますさかい!」


「オイラそういう方向性を期待されてるの!?」


 わいのわいの騒ぐ側近たちの後ろで、キウイらはぼーぜんと成り行きを見ていた。

 やがて盛り上がりが終わり、クロがスズへと歩み寄った。


「ごめんなさい、スズさん、キウイさん、他のみなさんも。

 オイラのやったことで、みんなに迷惑かけちゃって」


「すっごい迷惑だったけど、もういいにゃ。

 せっかくウルタールに来たんだし、後は存分に遊ばせてもらうにゃ」


「俺ら謎のこたつに召喚されて、てんてこまいだったもんね。

 あのこたつもクロが用意したものなのかな?」


 キウイの言葉に、クロは首をかしげた。


「いや……オイラそういうのはやってないよ。

 そういや今日はマジックアイテムの保管庫のカギが落ちてたり、変なことが続いてるね……」


 その場にいた全員が、誰となしに顔を見合わせた。

 そして気配に気づき、全員の視線が集まった。

 玉座。赤と黒に光る多面体の宝石を持ち、おそろしく顔の整ったねこみみ人間が笑っていた。


「混乱と激戦の甲斐あって、王宮の封印はぼろぼろサ。

 ようやくミーの悲願が達成できるサ!」

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