第81話 ジャミーラvsスズ!猫よ友情を取り戻せ!2

「ジャミーラ!! ……スズッ!!」


 部屋に飛び込み、キウイは二人の姿を見た。

 ジャミーラは振り返って笑顔を向け、スズを抱きかかえて見せつけた。


「遅いわよぉダーリン。偉大なるわたくしがフライングして、一人でスズを解放しちゃったわぁ。

 ちょーっとボコボコにしちゃったけどぉ、王様にひどいことはされてないみたいだし安心してぇ」


 キウイは歩み寄り、スズの顔を見た。

 それからジャミーラの手と、顔を。


 視線を再度スズに向け、目を合わせた。

 そしてキウイは、スズごと、ジャミーラを抱きしめた。


「えっちょっダーリン? ちょっとそういうのは、スズだけにしてあげた方がぁ……」


「ありがとう、ジャミーラ。俺のために、一人で頑張ってくれて」


 ジャミーラは、言葉をつまらせた。

 キウイはジャミーラの手に、殴って傷だらけになったその細い指に、自分の手を重ねた。


「ジャミーラは優しいね。スズと戦うことになったら、俺が悲しむと思ってくれたんだね。だから一人で突っ込んで、一人で傷ついた。

 ジャミーラだって、スズのこと大好きなのに」


 ジャミーラは、口を開きかけた。

 それよりも早く、涙は、あふれていた。


「う、ぁう……うぁぁぅ、ああ、うえええん……! ああ、うああ……! うわあああん……!」


 泣きじゃくるジャミーラの頭を、キウイは抱きかかえ、なでた。


「ありがとう。本当に。頑張ったね。感謝してる。

 そのうえで、言わせてもらうよ」


「うぇう、ひっぐ、ええぇぇん……!」


「俺に心配かけるなよ……! ジャミーラが傷ついたって、心配するよ!

 スズを心配するのと同じくらい、ジャミーラだって、アブリマルやハンサミィだって、他の普通の猫だって!

 ずっと一緒にいる家族が傷ついたら、心配するだろ!

 自分だけ傷ついて済まそうとするな!」


「うわあああん……! あああ……! うわああああん……!」


「本当に……! 本当に、ありがとう、無事でいてくれて……!

 スズもジャミーラも、無事でいてくれて、本当によかった……! ありがとう……!」


「えぅっ、ええええええん、うぁう、うえええん、うええああああん、わああああん……!」


 二人の泣き声にはさまれて、スズも、涙を流した。


 キウイの意思を尊重するなら、このとき母は、独断専行を止めるべきなのだろう。

 ただ、みんなにそれぞれの思いがあり、意思があった。

 間を取った母は、先行するアブリマルについて、先に進んだ。

 三人分の泣き声が、母の背中にあたたかかった。




 奥の部屋。

 国王クロは、頭をかかえていた。


「つ、次はどうすれば……! 何をしたら……!」


 扉が荒々しく開け放たれた。

 クロは縮こまり、そちらを見た。

 リーゼント、そして煮えたぎる怒りの表情。


「ジャミーラさんの、あんな泣き顔、初めて見た。

 忘れようもないくらい頭に焼きついちまって、なんでだろうな、ジャミーラさんをあんな泣かせたことが、たまらなく許せねぇんだ」


 五徳猫アブリマルは、トウガラシを握りつぶした。

 沸き立つ炎、それよりも苛烈な目で、アブリマルはクロを見すえた。


「てめぇ、絶対許さねえぞ。

 ジャミーラさんを泣かせたこと、百万回でも反省しろや」

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