第80話 ジャミーラvsスズ!猫よ友情を取り戻せ!1

 王宮! ジャミーラとスズの殴り合い!


「いい加減ッ! 正気に戻りなさいよ! ピラミッドドリルパァーンチ!!」


 右手につけたピラミッド! エリザベスカラーを叩く! 壊れない!

 スズは後退し、毛玉を投げようとした。それより早い、接近、頭突き!


「にゃっ……!」


 ふらついたスズを、ジャミーラは床に押し倒した。


「どぉ!? ちょっとはスッキリしたかしらぁ!?」


 スズは目を向け、口を開いた。


「スズは……国王クロの、妃……」


「あんたねぇッ!!」


 ジャミーラは殴った。殴った。ピラミッドが滑落した素手で、エリザベスカラーも顔面も関係なく、殴り続けた。


「なっさけないツラしてんじゃないわよ!! キウイ君がどれだけ悲しんでると思ってるの!! あんな、あんな顔、あんな顔させてんじゃ、ないわよ!!」


 殴った。殴った。殴り続けた。


「キウイ君のあんな顔初めて見たわ!! 見たくもなかったけどね!! ねぇ賭けましょうか、セピアにあたしたち四人がさらわれたときとどっちがひどかったと思う!? 断言するわ、今でしょうね!!

 あんたのせいよスズ!! あんたがそれだけ、キウイ君にとって、大事な存在になったから!!」


 殴り続けた。


「あのときのあんたよりひどかったんじゃない!? キウイ君がねこじゃらしマスターにさらわれたとき!! あんたあたしに誓ったわよね、キウイ君のことが好きだって!!

 あれはウソかッ!! あのときの気持ちは、そんなもんかッ!!」


 殴り続けた。

 自分が泣いていることにすら気づかずに。


「ふざけるな、ふざけるな、ふざけるなッ!!

 あたしは一体なんなんだ!! あんたにあこがれたあたしはなんなんだッ!!

 あたしあこがれてたのよあんたにッ!!

 好きな人のために土下座までして、戦った相手とも友達になれちゃうあんたにッ!!

 あたしうれしかったのよ、友達だって手を差し伸べてくれて!! 恋の応援までしてくれて!!

 幻滅させるなあたしをッ!! あたしが勝手にあこがれたなんて言わせないぞッ!!」


 ジャミーラはスズのエリザベスカラーに手をかけ、引きちぎろうとした。


「こんなもんッ、自力で抜け出してみせろッ!!

 あんた猫でしょうが!!

 猫なら猫らしく、わがままで、自分勝手に!! やってみせろ、スズッ!!」


「にゃああ……あああアアアーッ!!」


 スズの妖力がはぜた。

 エリザベスカラーが、ちぎれ飛んだ。

 スズとジャミーラの視線がかち合った。

 スズはボコボコの顔で、あきれたように、笑ってみせた。


「オマエ、ムチャクチャだにゃ。

 こんな腫れ上がった顔じゃ、それこそキウイ、心配するにゃ。

 ……ありがとにゃ、ジャミーラ」


 足音が聞こえた。

 追いついてきた、キウイたちのものだった。

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