第78話 仲間よ結束せよ!スズ奪還作戦!4

 王宮。

 猫の王クロはわたわたしていた。


「つ、次はどうしよう……! 何すればいいんだ……!」


 隣でうつろな目をしたスズが、指を差した。


「クロ、お客さんだにゃ」


「ええっ!?」


 目を向けた。

 バステト女神の分霊ジャミーラが、扉に背をもたれて立っていた。


「わたくしの本体であるバステト女神は、ここウルタールと縁深い『クトゥルフ神話』においても、神として名を連ねているのよねぇ。

 バーストって名前で、猫をすべる神とも記されているわぁ。

 その縁のおかげで、この王宮のセキュリティも簡単に通してもらえたわぁ」


 ジャミーラはそして、クロとスズに視線を向けた。


「ごきげんよう、王様ぁ、そしてバカスズ。

 そんなおマヌケな顔を王に向けるなんて不敬だから、わたくしが責任持って迎えに来たわよぉ」


「くっ……! スズはオイラの嫁になるんだ! 身をわきまえろ!」


「身をわきまえろ?」


 ジャミーラは歩き出した。クロは後ずさりした。

 ジャミーラが床を踏みしめるたび、みしり、ずしり。背後でピラミッドが召喚された。


「分霊とはいえ、わたくし神の一柱なのだけれど? この国では、神より王の方がえらいのかしら?」


「ひ、ひっ……!」


 クロはスズを盾にした。


「スズ!! オイラを守れ!! あいつをやっつけるんだ!!」


「了解したにゃ」


 クロは逃げ去り、スズは構えた。

 ジャミーラは足を止めた。


「あらあらスズぅ、あなた完全に王様のものになっちゃったのねぇ?

 それならダーリンがフリーになっちゃうしぃ、わたくしが誘惑しちゃおうかしらぁ〜?」


 スズは答えない。無表情のまま。

 ジャミーラはため息をつき、それから、オーラを燃やした。


「いいわスズ。わたくしが目を覚まさせてあげる。

 歯ァ食いしばりなさいよ、スズッ!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る