第76話 仲間よ結束せよ!スズ奪還作戦!2

 ウルタール市街のはずれ。

 爪切り兵士をまいたキウイたちは、物陰で息をついていた。


「ハアッ、ハアッ……! と、とりあえず助かった、次はスズを助けにいかないと……!」


「落ち着きなさいよぉダーリン。無策で突っ込んでも、返り討ちに遭うわよぉ」


 ジャミーラはキウイの手を取った。

 キウイの手は、ふるえていた。


 あたりの様子をうかがっていたアブリマルは、町内放送のスピーカーがオンになる音を聞いた。

 次の瞬間には、大音響で国王の声が届けられた。


『オイラは真なる猫の王、クロである。すべての町民に、王への忠誠を示してもらう。

 すなわち、この町のすべてのかつおぶしは、王宮へと献上せよ』


「そっそんな!? オラたちの日々の楽しみが!?」


『にぼしもすべて献上せよ』


「うちには病気の子供がいるんです! どうかこの子のにぼしだけは!」


『逆らう者の家には、水の入ったペットボトルを並べる』


「ヒィィィ家に帰れない!? どうか、どうかそれだけはーッ!?」


「ねぇもしかしてマジメなトーンなのこの世で俺しかいなくない!?」


「ムッ、その物陰に誰かいるな!?」


「やべえツッコミで居場所がバレた!?」


 殺到する兵士!

 ハンサミィが真っ先に前に出た!


「みんなをかばうイケメンムーブで輝けボクのイケメン☆フラーッシュ!!」


「ぎゃあああペットボトルに乱反射して四方八方から襲いくるー!?」


 兵士の第一波は目を回して全滅!

 しかし新手はまだまだ来る!


「ここはボクが引き受ける! キウイ君たちは王のもとへ向かうんだ!

 綿密な計画には見えなかったから、電撃作戦が功を奏するはずだよ!」


「ハンサミィ……! ありがとう! 気をつけて!」


 騒乱の間をぬって、一行はダッシュ!

 途中、ジャミーラはキウイの顔を見た。

 今まで見たことがないほど、心配でつぶれそうな顔をしていた。

 ジャミーラは静かに、前を向いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る