第74話 王の乱心!金華猫&チェシャ猫!3

「にしし! わてはチェシャ猫のグリグリ! 覚悟しておくんなまし!」バヒュン!


「早いにゃ!? にたにた笑いが残像に残って瞬間移動したにゃ!」


「息子よ! チェシャ猫は児童文学『不思議の国のアリス』に登場する猫!

 耳から耳へ口の端が届くような笑い方をし、そのにたにた笑いだけを残して姿を消すとされました!

 あれは超スピードで動くさまを表していたのでしょう!」


「作者絶対そんな意図で書いてないと思うよ!?」


 そして妖艶なるねこみみ妙齢女性も動く!


「フー……アタイは金華猫きんかびょうのユエニィエ……全力でいくよ……

 ムーンシニカルパウダー・チェーンジアーップ!!」


 呪文とともに片手を上げると、景色が暗転!

 月の光がスポットライトのように降り注ぎ、ユエニィエの衣装はフリフリキラキラに変ぼうする!(エリザベスカラーはつけっぱ)


「息子よ! 金華猫は中国に伝わる化け猫!

 月の光を食べ、美男美女に化けて人心をまどわすとされます!

 つまり月の光でミラクルなロマンスということですね!」


「怒られろ!! どっかから怒られろ!!」


 ユエニィエは月光ビームで攻撃! 突風! エノコローが防御!


「ケヒャヒャヒャ……兵士ともやり合ってみたがァ、洗脳されてるせいでねこじゃらしの効きがイマイチだぜェ……」


「わ、私のイカ触手なら効くかもしれませんけど、必要以上に傷つけちゃうかもしれません……!」


「ス、スズががんばるにゃ!」


「ダメだスズ君! 彼らの狙いはキミなんだ、突出しちゃあ……!」


「はい切りまーす」パチン


「ギャーッ!! イケメンのボクの指が深爪にーッ!!」


「あんたねぇそもそもパティシエでしょう! 爪は短い方がいいじゃないのぉ!?」


「はい切りまーす」パチン


「ギャーッわたくしのエジプト四千年ネイルがーッ!!」


「誰かまともな緊張感持てる人いないかなあ!?」


「招き猫のカムカムは爪切りとは無縁」


「はい切りまーす」パチン


「以前の戦闘で猫の性質が芽生えていたことを失念……ばたんきゅー」


「カムカムー!?」


 そしてスズの背後、高速移動したグリグリが出現。

 スズの首に、エリザベスカラーをつけた。


「あ、っ……」


 スズの目から、光が消えた。


「スズ!?」


 キウイは駆け寄ろうとした。

 スズの口から、言葉が漏れた。


「スズ、は、新王クロの妃となり、王の威光を支える……にゃ」


「スズっ!!」


 伸ばした手が届く前に、グリグリによってスズは連れ去られた。

 瞬間移動、キャベツ馬車へ。王と側近二人、そしてスズを乗せた馬車は走り出した。

 最後に王の、焦燥にも似た眼光を残して。


 兵に道をはばまれながら、キウイは叫んだ。叫ぶしかできなかった。


「スズっ!! そんな、スズ、スズ!! スズーッ!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る