第73話 王の乱心!金華猫&チェシャ猫!2

 ウルタール中央広場。

 即位式に先立ち、王のお披露目パレードが通る予定のこの場所は、すでににぎやか。


「うわぁー豪勢ねぇ! キャベツ焼き屋台にキャベツ風船にキャベツ花火にぃ、キャベツティラミスやキャベツこけしなんてのもあるわぁ!」


「キャベツ推しすぎじゃない!?」


「いい感じの洋楽も流れてるにゃ、りみつうよどおう、だにゃ」


 そして、パレードがやってきた。

 キャベツ馬車に乗る王、その両脇に側近二人。ねこみみ兵士が護衛の行進。

 その姿を見て、観衆はどよめいた。


「なんか様子が変だぞ、兵士や側近、目がうつろで……」


「あ、あれはマジックアイテム『王威の色付け』じゃないか!? なんであんなものを!?」


キウイは首をひねった。


「マジックアイテム? って、兵士や側近が不自然に首に巻いてるアレ?

 なんて名前だっけ、動物病院でペットがつけられる、ラッパみたいな形の首巻き」


「キウイさん、あれはエリザベスカラーです!

 猫ちゃんワンちゃんが体をなめないようにガードする、いわば行動制限装置!

 つまりあれをつけられた彼らは、一種の洗脳状態にあるのでは!?」


「あっ今回はセピアさんが解説するんだ!? そうだよね獣医だもんね!?

 そして発想が飛躍しすぎてない!?」


 そして、馬車から王が顔を出した。

 息を呑むほどの漆黒ねこみみ美少年。

 王はキウイらに視線を向け、言った。


「オイラは新王、ケット・シーのクロ。

 王位を万全なものとするため、猫又スズ、あんたの力が欲しい。

 よって、オイラの妃になれ」


「は? ……はぁ!?」


 反応する間もそこそこに、兵士が展開! 取り囲む!


「にゃにゃっ、衆人公開で熱烈プロポーズとは恐れ入るにゃ!

 軽くぶっ飛ばしてノーを突きつけてやるにゃ!」


「い、いやアネゴ! ヤバイ! 兵士たちの武器は……!」


 パチン。パチン。

 兵士は武器を鳴らし威嚇する。


「つっつっ『爪切り』だァー!!

 猫がイヤがる行為を猫がやるなんて、てめぇらの血は何色だー!?」


「そこまでビビること!?」


「息子よ! 猫の爪切りはスキンシップと慣れが重要!

 普段からきちんと優しく爪切りをしていれば、不要に怖がることはなかったはずです!」


「俺アブリマルが自分で爪切るとこ見たことあるんだけどな!?

 なんならジャミーラとハンサミィはやすりやマニキュアまで使ってるよね!?」


「キウイ……スズは、キウイがしてくれるなら、怖いのも痛いのもガマンするにゃ……っ」


「なんでスズは顔赤らめてまで意味深な言い方するのかな!?

 正式に付き合い始めたからって立場と状況にかまわずふざけていいわけじゃないんだよ!?」


 そして馬車から、二人の従者が飛び出した!

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