第70話 シャル・ウィ・ダンス

 帰宅して、苗宮家。

 夜もふけて、寝静まっていた。

 その中で猫又スズは、一人リビングで、夜空を見ていた。


「眠れないの? スズ」


「キウイ」


 キウイはスズの横に座った。


「俺もね、疲れてるのに寝れなくてさ。いろいろありすぎたからかな」


「まあ、めちゃくちゃだったにゃ。よくあんなの準備したにゃ、スズに相談せずに」


「あ、もしかしてすねてる?」


「そりゃ……そうにゃ。アブリマルとかエノコローとかには相談して、スズにろくすっぽ相談しなかったのは、ショックだにゃ」


「あー、ごめんねスズ。アブリマルはシャラヒメのこともあって、いろいろ考える機会があったからさ」


「まあ……いいにゃ」


「ごめんねスズ、おわびになんかしてほしいことある?」


「じゃあ……踊るにゃ」


「え? 踊る?」


「結局、スズたち踊らなかったにゃ。せっかく練習したのに、もったいないにゃ」


「ああ……そうだね。それじゃあ」


 キウイは立ち上がり、手を差し出した。

 スズは手を取り、寄り添った。


 ステップ。ステップ。身を寄せて。ステップ。


 この夜、二人はさほど言葉を交わさなかった。

 ただお互いに胸の内を打ち明け、付き合うことになった。それは事実だ。

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