第59話 踊れや踊れ!猫踊り!1
「犬たちはともかくよォ、猫は無理だろ、みんなでダンス覚えるとかよ。オレサマたちがやるしかねぇよな」
苗宮家。
いぬみみ人間らのダンスバトル提案を受けて、ねこみみ人間らは会議をしていた。
「つーわけでだ、オレサマが助っ人を呼んできたぜ! 踊りと楽器が得意なねこみみ人間の——」
アブリマルは隣を見て、いると思った人物がいないのに気づいた。
きょろきょろ探すと、部屋のすみっこで隠れそこねた、ねこみみが見えた。
「くぉらシャラヒメ!! オレサマがせっかく紹介してんだよ!! 特技の見せ所だろーが!!」
「ひぃぃぃ勘弁してよぅアブりん〜! わたし無理だよぅ〜人前で笛とか踊りとかできないよぅ〜!」
半ベソのねこみみ少女を立たせて、アブリマルが紹介した。
「踊り猫のシャラヒメだ! よろしくな!」
「息子よ! 踊る猫の民間伝承は日本各地に見られますが、とりわけ有名なのは静岡県の一地域に伝わるもの!
ただの飼い猫だと思っていたのが人語をしゃべり踊ったり笛を吹いたりすると気づき、飼い主から気味が悪いからやめてくれと言われて退去したという逸話があります!」
「えっなんかかわいそう」
「ちなみに町おこしのイベントとして、その猫をモチーフとしたお祭りも開催されています」
「えっそうなの? リアルに?」
「リアルにです」
バステト女神ジャミーラが、ぷるぷるふるえるシャラヒメをつつきながらアブリマルに尋ねた。
「この子、アブちゃんとどういう関係なのぉ?」
「旅をしてたころに同行したことがあったんだ! お互い根無し草で助け合ったりしてなぁ!」
「ふぅん? 同行ねぇ」
懐かしんで笑うアブリマルに対し、踊り猫シャラヒメは涙目で見上げた。
「アブりん、頼ってくれてうれしいけどぉ〜、どうせわたしなんて気色悪がられるだけだからさぁ〜、絶対力になれないよぅ〜」
「おまえ今こんだけねこみみ人間がいて気色悪いも何もねーだろーが! 時代が違うんだよ時代が!」
「無理だよぅ〜トラウマだもん〜」ぷるぷる
「だーもー! なら前に出なくていいからオレサマたちの後ろで笛吹いてりゃいいよ! オレサマたちが踊るから!
その代わりオレサマたちに踊りを教えろ! 本番までにみっちりな!」
「うぅ……それくらいなら、いいけどぉ〜……」
「よっし決まりだ! よろしくなシャラヒメ!」
アブリマルはばんばんとシャラヒメの背を叩いた。
それから、不意に真面目な顔をして言った。
「けどな、シャラヒメ。おまえ本当に、それでいいのか?」
「そ、それは……うぅ……」
シャラヒメは目をそらし、うつむいた。
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