第56話 いぬみみ人間襲来!クー・シー!3

 その場にいた全員がどよめいた。

 母もさすがに動揺していた。


「苗宮家が犬神の家系など、母の父、虎徹コテツも言っていませんでした。おそらく本人も知らなかったのでは?」


「なげかわしいことです。猫の魔性にたぶらかされなければ、やがて偉大なる犬の王に目覚めたでございましょうに……!」


「いや、ちょっと待って、あのさぁ」


 キウイは話を止めた。そして床に突っ伏した。


「俺の人間要素、まだ薄まるんかい!?」


 スズがなぐさめた。


「キ、キウイ、家系ってだけだからにゃ。大昔のご先祖様が犬神ってだけで、血はきっとほとんど人間だにゃ」


「そ、そうだよね……俺の血、二分の一が世界樹で四分の一がマタタビで、残り四分の一の大半は人間だよね……」


「虎徹氏の父君は先祖返りしていたので、ほぼ百パーセント犬神でした」


「はちぶんのいちィィィィ!!」


 ねこじゃらしマスター・エノコローが肩に手を置いた。


「家系なんて気にするなァ……どんな生まれでも、キウイはキウイだろォ……ケヒャヒャヒャ」


「貴殿にも無関係な話ではありませんよ、旋風つむじかぜエノコロー氏」


「あァ?」


 ワン・チャンは玄関を開けた。マイクロバスが待機していた。


「続きは小生らの拠点で話しましょう。キウイ少年がリーダーとなるまで、犬の指導者を預かる者が待っています」




 バスに揺られ、面々は山奥に来た。


「ここ、何もない普通の山だったよね? なんか城みたいな建物があるんだけど……」


「この中でございます」


 中には、たくさんの犬が行儀良くおすわりし、通路を作っていた。


「キウイさんちに集まった猫ちゃんみたいな感じですねー」


「うちの猫たちはこんな礼儀正しくないですけどね……」


「仕方ないにゃ。ねこみみ人間ならともかく、普通の猫は人間の言うことなんて聞かんにゃ」


「スズたちもたいがい話を聞いてないからね?」


 そして最奥。

 威厳たたえる大広間、一段高くなったそこに、その人物は、犬の指導者たる人物は座していた。


「よくぞ参られた。

 余は徳川五代将軍、徳川綱吉である。

 今の世には、犬公方というあだ名の方が、通りがよいかもしれぬな」

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