第55話 いぬみみ人間襲来!クー・シー!2
キウイは腰を浮かせた。
「宣戦布告……! って母ちゃん、クー・シーって何?」
「クー・シーはイギリスはスコットランドに伝わる犬の妖精!
名前の似た猫の妖精ケット・シーと対比される場合もありますが、あちらは人語をしゃべり二本足で歩く場合もあるのに対し、クー・シーは大きくて暗緑色である以外は通常の犬に性質が近く、妖精たちの番犬であるとも言われます!
ところで息子よ、母を便利な辞書扱いするのはいかがなものかと」
「今まで自分でさんざん解説してきたじゃん……」
五徳猫アブリマルが前に出た。
「堂々来て宣戦布告たァ気に入ったぜ! さっそくタイマン張るかァ!?」
そこに飛び出すもうひとつの影! アブリマルは拳を合わせ、そのいぬみみ人間と打ち合った!
「ははは! 猫にも威勢がいいのがいるねぇ、アタシはうれしいよ!
アタシはフェンリルの分霊、リィルゥだ!」
「息子よ! フェンリルとは北欧神話に伝わるオオカミの怪物! 神々に災いをもたらすとされ魔法のヒモ・グレイプニルで封印されました!」
「いやオオカミ!? いぬみみ人間なのに!? まあ広い意味で犬の仲間だからいいのかな!?」
リィルゥはにぃーっと犬歯を見せた。
「因縁の猫どもとの戦い、ワクワクしてるよ!
知ってっか? アタシの本体を縛った魔法のヒモ、素材のひとつは『猫の足音』なんだぜ?
そこで足音を消費しちまったから、猫は歩くとき足音を立てないって話らしいな!」
「そうかァオレサマは知らねーな! 分かるのは、あんたとケンカするのは楽しそうってことだけだぜ!」
「はぁーいアブちゃんまずは話し合いしましょうねぇー」
「タライのごとくピラミッド落としッ!?」
「リィルゥ女史、小生らもまずは対話をいたしましょう」
「巴投げッ!?」
目を回したアブリマルとリィルゥを隅に置き、ワン・チャンは語った。
「さて、まず宣戦布告の理由ですが。
近ごろの猫とねこみみ人間の台頭に対し、犬こそ人の友としてもっともすぐれた種であることを知らしめたいのです」
「まあ、猫への嫉妬だよね……こないだ神様が襲ってきたみたいに」
「そして苗宮キウイ少年。
この勝負に勝ったあかつきには、貴殿には猫ではなく犬のリーダーとなっていただきたい」
「え? 俺?」
予想外の話に、キウイも、そしてスズも目を丸くした。
「オマエ、なんでキウイが犬の仲間にならんといけないにゃ!? キウイはマタタビ人間なのに!!」
「フー……やはりご存知ないのですね」
ワン・チャンは首を振った。
「苗宮キウイ少年。苗宮家がそもそも、猫に嫌われる一族だというのは知っていますか?」
「あー……そういや母ちゃん言ってたね。マタタビ人間に覚醒した日に」
「それはなぜか! 苗宮家は、猫と敵対する犬の一族……『犬神』の血を引くからなのですよ!!」
「ふざけさらすな俺の血統!?」
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