第50話 神話を超えて!世界樹ユグドラシル!2

 カイジュは、自身の目を疑った。

 自身が放った果汁水流、それがはばまれている。スズの嘔吐によって。


「バカな……!?」


 カイジュは見た。激突する水圧の向こう。

 スズの胸に丸い光点があった。その配置はカイジュと同じ、セフィロトの樹!


 母が、解説した。


「聞いたことはありませんか? 猫には九つの命があると」


 カイジュは気づいた。それは、命の光。


「スズさんは先ほど、命など惜しくないと言った。すなわち命の価値を『なめた』!

 これにて毛玉の封印が成立し、セフィロトの、『生命の樹』を構成する球体セフィラとしたのです!」


「まさか、自分の命でセフィロトを起動しただと!? い、いや! セフィロトの玉は十個! 命が九つでは足りないはず、はっ!?」


 カイジュは見た。光点のひとつは黄緑色だ。キウイフルーツの果肉のように!


「俺だ!! 俺の命だクソ親父!! あんたがこさえて、あんたが生まれるべきでないと言った、俺の、苗宮キウイの命だッ!!」


 十の命を毛の小径パスがつなぐ! キウイとスズは手をつなぎひとつとなる! それはまさに猫と人との相思相愛! 生命神秘のねこねこ比翼連理!


「いっけええええスズーッ!!」


「おぼろろろろろろろろろろろろろ!!」


「ぬ……ぐわぁーッ!?」


 相殺! 爆裂!

 互いに押し合った宇宙創造もぎたてジュースと生命創造ねこねこ嘔吐は、打ち消しあい、はじけ飛んだ!




   *




 天国、入り口。

 目を回して倒れた大天使ミッキィを尻目に、ジャミーラとアブリマルは肩貸し合いながら歩いた。

 そして、遠くでエネルギーが爆発するのに気づいた。


「スズとダーリン、やったみたいねぇ」


「さすがはアネゴにアニキだぜ。オレサマたち、出遅れちまったかねえ?」


「あら、もう戦いが終わってるなら、やるべきことがあるでしょぉ。お疲れ様って、出迎えてあげなきゃ」


「確かにな。帰りを楽しみにしてるのが、家族ってもんだぜ」


 二人はほがらかな顔で、空を見上げた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る