第41話 恐怖の猫ジャム作戦!3

 アブリマルがトウガラシを構えた!


「よく堂々と来やがったな!? ジャム事件の犯人、オレサマは容赦しねぇぜ!?」


「もぎたてカバラ!」


「ほぎゃーっ!?」


「アブリマルーっ!? 部屋の天井ーっ!?」


 果汁一閃! 世界樹の化身カイジュの胴に十個の光る果実が生じ、フレッシュなジュースが爆裂した!


「息子よ! あの果実の配列は『セフィロトの樹』! 宇宙創造をつかさどりビッグバンに匹敵するエナジーを持った新鮮ジュースを放出します!」


「すごいのかマヌケなのか分かんないけどそんなもん息子の部屋でぶっ放さないで!?

 アブリマルどこまでスッ飛んでった!?」


 カイジュはどっかと座った。


「うるさそうだからまずぶっ放したが、戦いに来たワケじゃあない。今日はな、事情を説明しに来たのよ、キウイ」


「事情って……猫をひどい目に遭わせる、正当な理由があるとでも!?」


 カイジュはにかっと笑った。


「それよな、正当な理由。神々連合は今、危機にある。世界崩壊を招きかねないほどのな……!」


「そんな危機が……!?」


 キウイとカイジュは、緊迫してにらみ合った。沈黙。タメ。ごくりとキウイはつばを飲み込む。


 そしてカイジュ。


「人間が猫ばっかかまけて、神様を見てくれんのだ!! 信仰パワーが足りないのッ!!」


「そういう理由!?」


 カイジュはハンカチをかんだ。


「神様みーんな猫に嫉妬しちゃって、ダメ押しにキウイたん覚醒でモー大変なんだから! そりゃ猫滅ぼすしかないでしょ!?」


「そんなメチャクチャな!?」


「そこでワシ考えた! 天界特製ジャム!」


 ふところからジャムを取り出し掲げる!


「これで猫たんぐるぐるさせて永久エネルギー機関にすれば、信仰パワーの代用にもなって一石二鳥! ただのジャムじゃないぞ、なんと原料は世界樹もぎたて『禁断の果実』だ!」


「禁断の果実をそんなもんに使わないで!?」


「しかも無香料無着色、特Aランクの果実だけを百パーセント厳選の最高級品だ!」


「禁断の果実にBランク以下があるような言い方しないで!? 神聖さが薄れるよ!?」


「でも、お高いんでしょお?」


「それが今なら大特価! 猫の存在をリソースにして現実世界に降臨召喚!!」


「カードゲームやってんじゃないんだよ!?」


「息子よ! 禁断の果実は一般にリンゴとして描かれることが多いですが、実際にはイチジクやオレンジ、ブドウ、ザクロなど様々な説があります!

 その中で最新の研究家ウッソリーニ・クチジャミーセン氏によれば、真実は猫を酩酊させるさまが悪魔のささやきを連想させるマタタビ類縁植物の果実、すなわち『キウイフルーツ』であるそうです!」


「絶対ウソだーっ!?」


 カイジュは生卵をぐびぐび飲んだ。


「そういうわけで、猫たちはカンベンしてくれな。何も死ぬわけじゃあない。次元が変わるから、人間とは会えなくなるがな」


「そんなんカンベンできるワケないにゃ! ふざけるなだにゃ!」


「ほぅ、なら、やり合うかい?」


 カイジュはにぃっと笑った。スズはひるんだ。カイジュの胴体には、十個の果実が輝き続けていた。


「んじゃ、ワシ帰るわ。

 明日になったら、この空に天国からのゲートが開いて、天使の軍勢が来る。すべての猫にジャムを塗りにな」


「ちょっと!? そんな一方的な……」


 カイジュは浮かび上がり、大穴の開いた天井から空に向かった。背中を向けたまま、カイジュは言った。


「遅かれ早かれ、この事態は起こっただろう。だがそれが今になったきっかけは、キウイ、間違いなくおまえさんの存在だ」


 カイジュは振り向いた。


「キウイ。おまえさんは生まれてくるべきじゃあ、なかった」


 キウイはその言葉を、表情を、真正面から受け止めた。


 カイジュは手を振り、空に消えていった。

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