第42話 恐怖の猫ジャム作戦!4

「いやー大変だったぜ、まさかメキシコまでフッ飛ばされるとは思わねぇよ。でも本場ユカタン半島のハバネロ買ってこれたからよしとすっか」


「あなたよくメキシコから半日で帰ってこれたわねぇ?」


 夜。

 苗宮家はてんやわんやしていた。


「ただいまだにゃ。いろんな猫たちに危険を知らせてきたにゃ」


「おかえりなさいスズさん。息子はベランダにいますよ」


「そんなスズがいつもキウイのそばにいるみたいに……で、ベランダで何やってるにゃ?」




 ベランダ。

 キウイは空をながめていた。


「お父様に言われたこと、気にしてるのかい? キウイ君」


「ハンサミィ」


 隣にならんだハンサミィに、キウイは顔を向けた。


「まあ……さすがにちょっとショックかな。

 実の父親に、生まれるべきじゃなかったなんて言われたら」


 ハンサミィの表情を見て、キウイは笑いかけた。


「ありがとうハンサミィ。心配してくれるんだね」


 キウイは手すりに背を預け、家の方を向いた。


「でも俺はそれより、うちの家族のせいで猫たちがひどい目に遭うのが、ガマンならないよ。ただしょげかえってあのクソ親父の好きになんて、させるもんか。ねぇ、スズ?」


 家から顔を出したスズが、うなずいた。


「スズたち猫は、やすやすとカミサマのエネルギー源になんてならんにゃ。この世から猫がいなくなったら、マタタビ人間キウイの存在意義がなくなるにゃ」


「いや俺マタタビ以外にも価値あるよ?」


「具体的には?」


「ねぇハンサミィなんで追い打ちかけるの? 心配してくれたんじゃないの? 俺泣くよ?」


 アブリマルたちも顔を出した。


「メシできたぜー! ハバネロたっぷりの激辛タコスだ!」


「オマエこんな激辛スズが食えるわけないにゃ!? ふざけんなにゃ!?」


「わたくしも盛りつけをがんばったわよぉ!」


「テーブルにピラミッド盛りつけてどうすんだにゃ!? マジメにやる気ないだろにゃ!?」


 猫たちは騒がしくリビングに行った。

 入れ替わりに、母が来た。


「息子よ。明日は父との決戦となるでしょう。その前にひとつ、言っておきます」


 母は続きを言いかけ、少し口をつぐみ、それからきっぱりと言った。


「お母ちゃんはね。あなたが生まれてくれてよかったと、本当に思っています、喜初キウイ


 キウイはその言葉を、表情を、真正面から受け止めた。

 それから、笑った。


 空には月が、まるく浮かんでいた。

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