第31話 無機なるガーディアン!招き猫!3

 カムカムは構えた。それより早く、エノコローは腕を振った。


「風が……あれ!? エノコローさん消えた!?」


「風を目くらましに、隠密を行なったと推測。不意打ちに警戒」


 構え続けるカムカムは、反射的に飛びのいた。かわしきれず、風のようなエノコローのねこじゃらしが、カムカムをなでた。


「無意味。それは変わらない」


「ケヒャヒャヒャ、もうちょっとつきあえやァ……」


 エノコローは隠密を繰り返す。カムカムは集中し、回避を続ける。ねこじゃらしがなで続ける!


「エノコローさん、効かないと分かっても、なんでねこじゃらし攻撃を続けるんだ……?」


「息子よ、効かないと決めつけるのは早計です」


「母ちゃんいたの!? もう今回はいないと思ってたよ!?」


 カムカムはよけながら分析する。


「この状況。無効な攻撃を繰り返し、油断したところで別種の攻撃を加える戦略を想定。カムカムは警戒を継続し回避を……っ!?」


「カムカムがひざをついた!?」


 カムカムは身をふるわせた。エノコローがその正面に立った。


「未知の知覚……高揚……何、をした!?」


「なでただけさァ……」


 エノコローは悠然と言った。


「そもそも招き猫ってのはなァ……触覚以前にィ、ものを見たり聞いたりできねェんだぜェ?」


 母が解説した。


「ねこみみ人間として活動する以上、触覚は当然あります! エノコローさんは隠密によりカムカムさんが五感を研ぎすませるのを強要し、鋭敏になった知覚をなで続けることで快感を開放させた!」


「簡単に言うとゴリ押したのかな!?」


 カムカムはふるえながら、戦闘態勢を続けようとした。エノコローはなでた。


「!? っ!? !?!?」びくんびくん


「ケヒャヒャヒャ……! 気持ちいいだろォカムカムゥ……! それが人間になでられるってことだァ……!

 冷酷な飼い主にはァ、きちんとなでられたことなかったかァ……?」


「黙れ……!」


 予想外に、カムカムから攻撃的な言葉が出た。エノコローはその顔を見た。燃えるような目で、カムカムは言葉をしぼり出した。


「おまえにマスターの……! セピアの、何が分かる……!」


「……ヒュゥ。安心したぜェ。今やってることの是非はともかくゥ、ちゃんと飼い主から愛を受けてたようだなァ……!」


 エノコローは上を指さした。


「敬意を表してェ、最高のなでなでを与えてやるよォ……」


 カムカムは見た。天井一面に、逆さまのねこじゃらしが並んでいるのを。


「あ……あ……」


 カムカムは絶望した。不可避の快感を、予測してしまったからだ。


「堕落におぼれなァ……【颪狗尾吊天井オロシエノコロツリテンジョー】」


 上から下の風! 全ねこじゃらしを叩き落とし、カムカムの体をなでつくす!


「ごろにゃ〜〜〜〜ん!?」


 カムカムは悶絶し、目を回し、仰向けに倒れた。

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