第29話 無機なるガーディアン!招き猫!1

「それでェ……一人じゃどうにもならねェから、オレを頼りに来たとォ……ケヒャヒャヒャ」


 ねこじゃらしマスター・エノコローの家。

 スズたちをイカ人間獣医セピアに強奪されたキウイは、彼に助けを求めた。


「こないだオレをしりぞけといてェ……虫のいいお願いだと思わねェのかァ?」


「思わなくもないけど、エノコローさんなら協力してくれると思って。猫が危険な目に遭ってるのを、見過ごせる人じゃないでしょう?」


「ケヒャヒャヒャ……正解だァ」


 エノコローは茶を淹れた。それからキウイの様子を観察し、その肩をもんだ。


「えっ何……あッさすがマッサージうまい……」


「こわばってヒデェ顔してるぜェ……そんな顔してちゃァ、猫どもの方が心配するぜェ」


「……!」


「ネガティブは今のうちにィ、吐き出しときなァ……」


「……くやしかった。心配な気持ちもあるけど、何もできなかったのが、一番。

 スズたちは、俺がピンチだって知って、必死で戦ってくれたのに。マタタビ人間なんて変わった力を持ってても、みんなを守ることができないって」


 エノコローはその顔を、静かに見つめた。それからキウイの頭を、ポンポンと叩いた。

 キウイは奥歯を噛みしめ、涙をこらえた。


「さァて……そろそろ出発するかねェ」


 エノコローは部屋の奥へ行き、いろいろな荷物を袋に詰めた。


「持っとけェ」


「わっとと……アロマオイルに、予備のねこじゃらしに、それから……本?」


「マタタビの生態やらァ、利用方法やらァ、いろいろ書いてあるぜェ……何もできないって嘆くんならァ、できること調べて考えりゃァいいさァ……ケヒャヒャヒャ」


「……! ありがとう、エノコローさん」


 エノコローは返事せず、扉を開けた。エノコローの背中を追って、キウイも外に飛び出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る