第26話 動物病院パニック!2

 性別不明のねこみみ人間に対し、アブリマルはトウガラシを構えた。


「誰だか知らねえが、オレサマはそう簡単に止まらんぜ! ヤケドしたくなかったらどいてな!」


「能力展開。『招く』」


「おっ! このトウガラシ丸々として特大サイズだぜ! ラッキー! ガブガブ!」


「はっ! アブリマル君油断するな! 敵の術中にある可能性がある!」


「ゲェーッ!? これトウガラシじゃなくて『いちご』だー!?」


「なんでそうなる!?」


「はい五徳猫のアブリマルさん打ちますねー」ブスッ


「ギャー!!」


 性別不明猫は無機質に語った。


「カムカムの名はカムカムという。オリジンは招き猫の化身。能力は『幸と不幸をまとめて招く』」


「幸と不幸を……まさか!?」


「禍福はあざなえる縄のごとし。トウガラシが特大という幸と、それが実はいちごという不幸。これにてプラマイゼロ」


「いやゼロになってなくない!?」


「くっ……!

 だけどアブリマル君の尊い犠牲で、君の能力は把握した! 直接攻撃する技でないなら、光の速さでイケメンを届けるボクの方が有利だ!

 道を開けてもらおうかカムカム君! さもなくば、ボクは即座にかっこいいポーズを取る!」


「ビーム撃つって意味だろうけどまずもって今の状況がかっこよくないからね!?」


「カムカムはすでに……次の運命を『招いた』」


「む! 壁にちょうどよく鏡がかかってるじゃないか! ボクのイケメンを存分に輝かせるため髪を整えたりできるぞ! いそいそ髪いじいじ」


 ガチャリ。鏡だと思っていたドアが開いた。


「あの、中から全部見えてます……」


「ウワーッ『鏡だと思ったらマジックミラーだった』!? 髪とかメイクとか直してる様子を一部始終見られてしまう恥ずかしいヤツだー!!」


「鏡を見つける幸と、それがマジックミラーだった不幸。これにてプラマイゼロ」


「だからゼロじゃなくない!? 恥ずかしさのマイナスの方が勝ってるよね!?」


「キャスパリーグのハンサミィさん打ちますねー」ブスッ


「ギャー!!」


 猫たちは全員ダウンした。獣医のお姉さんは招き猫カムカムの頭をなでた。


「ありがとうーカムカムー。助かったよー」


「マスターの助けになったのなら光栄。カムカムは喜ぶ」


 お姉さんはキウイに向き直った。


「初診ですし身体測定と健康診断もしますねー。飼い主さんは待っててくださいー」


「あ、はーい」


 スズたち四匹は奥に連れてかれた。キウイは待合室のイスに座った。

 ……周りの話す声が聞こえた。


「あの獣医さん、前からいたっけ?」


「初めて見るよねー」


「えっ?」


 キウイはその会話に振り向き、それからスズたちが連れて行かれた方を見た。嫌な予感がした。

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