第25話 動物病院パニック!1

 動物病院。

 待合室に座るキウイと、がくがくふるえる猫たち四匹。


「キウイはひどいにゃ。いたいけな幼女をマタタビの魔力でへべれけにして、強引に連行するなんてにゃ」


「見た目は幼女でも、実年齢は母ちゃんより年上なんでしょ」


「妖怪としては全然ヤングだにゃ! ジャミーラやハンサミィとは比べ物にならんにゃ!」


「ちょっとおスズ! そりゃわたくしの本体たるバステト女神は紀元前の存在だけど、分霊たるわたくしはそんなに歳取ってないわぁ! 現代の人々の信仰を受けて再誕したピチピチよぉ!」


「ボクも本体のキャスパリーグは中世だけど、なにぶん本体から逸脱した存在だからねえ」


「オレサマは何歳なのか忘れちまったぜ」


 受付から声がかかる。


「苗宮さーん、診察室にどうぞー」


「あ、はーい」


「「「「ギャーーーー!!」」」」


 猫たちは叫び、ジャミーラが真っ先に動いた。


「てこでも動かないわよぉサモン・ピラミッド!」


「うわっこんなトコでピラミッド出さないでよ!? またこたつに埋まるみたいに閉じこもって!」


 奥から獣医のお姉さんがやってきた。


「中まで連れてくの大変そうなのでここで打っちゃいますねー。バステト女神のジャミーラさーんちょっとチクッとしますよー」ギュィィィンガガガガ


「音と見た目が注射器じゃないんだけど!?

 それどう見てもドリルですよね!?」


「ひぃぃわたくしのピラミッドが削られるぅ!? 墓暴きだわぁ歴史の冒涜だわぁ!?」


「はい打ちますねー」ブスッ


「ギャー!!」


 一部始終を見ていたスズがぶるぶると震えた。


「こ、こんなのやってられんにゃ! 断固として戦うにゃ! 毛玉おぼろろろろ……あれ、毛玉が出ないにゃ!?」


「猫又のスズさーん、あなた受付のおやつ食べましたよねー?」


「た、食べたにゃ、『ご自由にどうぞ』って書かれてたから……ま、まさかにゃ!?」


「あ、これ毛玉ケア用のキャットフードだ」


「な、なんてことだにゃ!? 毛玉を吐けないスズなんて、ただの愛玩動物だにゃ!?」


「じゃあ打ちますねー」ブスッ


「ギャー!!」


 アブリマルとハンサミィは抜き足差し足で逃げ出そうとした。


「アネゴたちには悪いが、オレサマは逃げるぜ……」


「イケメンが隠密なんて不本意だけど、背に腹は代えられない……はっ!?」


「逃走者発見。対応を開始する」


 二人の前に立ちはだかる者がいた。キウイもそれに気づいた。

 少年か少女か判別のつかない、ねこみみ人間。

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