第22話 猫よ結束せよ!キウイ奪還作戦!4

「楽しもうぜェ!」


「速いにゃ!? ねこじゃらしが増えてジェット機みたいにカッ飛んでるにゃ!」


 無数のねこじゃらしが猫たちをなでる!


「くうっ、ピラミッドの守りが削り取られてるわぁ!? 頑丈な岩も風にさらされ続ければ風化する、ねこじゃらしの波状攻撃で幾万年にも匹敵する歴史崩壊を招いているというのぉ!?」


「オレサマはあきらめねえぜ! トウガラシガブガブ! ガツ、ガツ! ガブガブガブゥ!」


「ケヒャヒャヒャ食い方がきたねェなァ食べこぼしてるぜェ……! そして頑張ってるトコ悪いがァ!」


 アブリマルは火を噴く! 当たらない!


「た、大量のねこじゃらしが風に揺れて、目を持ってかれる……! 狙えねえ!」


「守りを削り切ってェ……直接なでてやるぜェ!」


「サモン・ピラミッド!」


「イケメン☆フラッシュ!」


 バリケードと目くらましで時間をかせぐ!


「まだ勝負は決まらないにゃ! アブリマル! もっとトウガラシを!」


「スズのアネゴが言うならァ! ガブガブガブゥ! もっしゃもっしゃ! 辛ぇー!」


「ケヒャヒャヒャ腹ァ壊しても知らねェぜェ! そしてオレは待たねェぜェ! 風を巻き込み攻め続けるゥ!」


「も、もうダメだわぁ! ピラミッドの守りが……崩れる!」


 ねこじゃらしが猫たちの体に、届いた!


「……!?」


 エノコローはいぶかしんだ。猫たちが快感にもだえる様子がない。


 スズがにやりと勝ちほこった。


「ヒリヒリするだけで、全然気持ちよくないにゃ」


 エノコローは気づいた。

 ねこじゃらしのフサフサに、赤い粉がまとわりついている!


「こいつァ……トウガラシの粉かァ!? いつの間にィ、ハッ!?」


 アブリマルがドヤ顔をした!


「このためにオレサマが食い散らかしたのさ! 風ごと巻き込んで、ねこじゃらしにトッピングだぜ!」


 母がピンときて解説した!


「強い辛さのトウガラシは、触れると痛みを生じさせるほど強烈な刺激! それがねこじゃらしを覆えば、なでても快感を与えられず威力減退は必然でしょう!」


「それホントに威力減退してる!? むしろ攻撃力上がってない!?」


 猫たちは構える!


「このままトドメ、いくわよぉ!」


「う……おおおおォォォ!!」


 エノコローは飛翔! 攻撃を回避! 上空から猫たちを見下ろし……


「……猫又スズは、どこだァ?」


「上だにゃ」


 スズがエノコローの背中に、着地した!


「いつの間に上にィ……!?

 いや、オレの体に、ヒモ……絡まっている、オレが飛び上がるのに合わせて跳ね上がったのかァ!?」


「毛玉を『ほぐした』にゃ! ちっちゃくてぷりちーなスズの体、引っ張られて一緒に上がるくらいわけないにゃ! そしてそれだけ強靭なヒモにできたのは、キウイがきちんと毛づくろいしてくれたキレイな毛だからだにゃ!!」


「それ俺が整えた毛が抜けちゃってない?」


 エノコローはアクションしようとする。一手足りない。人間の手足は、背中にすぐには届かない。後ろ足で首筋をかく猫のようには……!


「ゼロ距離ならねこじゃらしでそらされないにゃ! スズの必殺! 【朧鈴成オボロスズナリ】!!」


 スズは嘔吐した。あふれ出る毛玉の奔流がエノコローの顔面を、叩く、叩く、叩く!


「おぼろろろろろろろろろろろろろろ」


「ギャアアアアーーーー!?」


 エノコローは目を回し、ダウンした。自由落下した着地点には、やわらかな毛玉が敷き詰められていた。

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