第23話 猫よ結束せよ!キウイ奪還作戦!5

「ケヒャヒャヒャ……完敗だぜェ。オレのねこじゃらしを上回る技と結束ゥ、相手してて実に楽しかったなァ……」


 エノコローは満足げに、大の字のままでいた。

 スズたちはキウイに駆け寄った。


「キウイ! 大丈夫かにゃ!? 守れなくってごめんだにゃ!」


「ありがとうスズ。俺は大丈夫だよ。ジャミーラにアブリマルにハンサミィも、わざわざ来てくれてありがとう」


 猫たちはそれぞれに返事をした。


 エノコローが起き上がり、スズたちに声をかけた。


「来たついでだァ……いいもんやるよォケヒャヒャヒャ」


「お、オマエもう動けるのかにゃ!? キウイをさらった悪いヤツからもらうものなんてないにゃ!!」


「そう言わずにィ……ほらァ」


「ん、これはアロマオイル? あ……マタタビの……キウイの体のにおいだにゃ」


「ケヒャヒャヒャ……キウイの体からエキスを搾りとってェ、猫たち大満足の至高の一品を作ったぜェ……! キウイんトコにばっかり猫が集まるのも防げるしなァ……! もちろん猫に無害な材料を厳選してるぜェ……!」


「……もしかしてオマエ、悪いヤツじゃないにゃ?」


「そうなんだよスズ、この人めちゃくちゃ怪しいだけで、ただ猫と遊びたいだけみたいなんだ」


 スズはキウイの顔を見て、それからエノコローの家を見た。ピラミッドでぺっしゃんこ。


「あァ、家は気にしなくていいぜェ……元気な猫と遊んでりゃァ、柱で爪を研がれたり障子を破られたりィ、家が壊れるくらい日常茶飯事さァ」


「そういうレベルの話かなー??」


 エノコローは家の中に入っていった。


「じゃあなァキウイィ、そして猫どもォ……気が向いたら、また存分に遊ぼうぜェ……ケヒャヒャヒャ」


 その場にはキウイと、スズたち猫と、母が取り残された。


「……疲れたにゃー」


 スズはアスファルトに座り込み、キウイは苦笑した。


「まあ、帰ろっか」


「もう歩くのもしんどいにゃー」


「しょうがないなあ」


 キウイはスズを抱え上げた。


「ちょっキウイ!? スズは別にそういうのして欲しいわけじゃないにゃ!?」


「あ、そうなの? でも頑張ってくれたし、このくらいは俺サービスするよ」


「や、あの……」


 スズは横目で他の猫たちを見た。猫たちは(主にジャミーラが)にまにまと見守っていた。


「や、やっぱキウイ、降ろして欲しいにゃ

、スズ自分で歩くから……」


「ありがとね、スズ」


 不意打ちのように、キウイは言った。


「結果的に問題なかったけどさ、俺のピンチに頑張って助けてくれて、本当にうれしかったよ」


「えっ、あの」


 それはそれは予想外の一撃で、スズは感情のやり場が分からなくなった。


 スズの目から、ぽろぽろと涙がこぼれた。


「やっにゃっ、ちょ、タンマにゃ、こんな、泣くような場面じゃないのに、オマエ、そんな、どうしてこんなっ」


 見守っていた猫たちが、えびす様みたいに破顔した。


「あらあらスズぅ〜よかったでちゅね〜愛しのダーリンにだっこされてほめられちゃってぇ〜?」


「大変だったけど、スズのアネゴがこんだけ喜んでる様子が見れたら、疲れも吹き飛ぶぜー」


「女性の涙はうれし涙に限るね。その涙を引き出せたキウイ君、ナイスだよ!」


「フシャーッ!! オマエらスズは見世物じゃないにゃ!! 好き勝手言うなだにゃー!!」


 スズは真っ赤になって毛玉を投げた。ジャミーラたちは笑いながら逃げていった。スズは追いかけようとして、思いとどまり、キウイの腕に沈み込んで、沸騰するように蒸気を噴いた。


 キウイは苦笑したまま、空を見た。完全に夜になって、月が出ていた。

 わけも分からず始まったこの生活だけど、悪いもんじゃない。キウイはそう思った。

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