第19話 猫よ結束せよ!キウイ奪還作戦!1
帰還したスズから、事情が説明された。
「スズのアネゴが、負けた……!?」
五徳猫アブリマルは絶句。キャスパリーグのハンサミィも難しい顔をし、バステト女神ジャミーラはそっぽを向いている。
「スズだけでは、キウイを助けられないにゃ。オマエらお願いだにゃ! 一緒に戦ってくれにゃ!」
だが、アブリマルはこわばった表情を向けた。
「スズのアネゴで勝てない相手に……オレサマたちで、戦力になるんですかい?」
スズは一瞬、絶望的にひるんだ。
ハンサミィも言葉を継いだ。
「レディの頼みには応じたいし、困ったことがあれば助けると言った……けれど、困難なミッションをただ安請け合いするのは、カッコいい行為だろうか」
「ちょ、ちょっと待つにゃ、オマエらキウイを見捨てる気かにゃ?」
「そもそもだけどぉ」
ジャミーラが進み出た。
「スズ、あなたはわたくしたちがダーリンを奪おうとしたとき、戦ってしりぞけてきたわよねぇ。それが何? 戦って負けたら、徒党を組んで奪い返すわけぇ? もしわたくしたちがあなたを集団で組み伏せたら、ダーリンを取られてもよしとするのかしらぁ?」
「う、そ、それは……」
「や、ジャミーラさん、オレサマは何もそんなことを言いたいわけじゃなくて……」
「黙ってなさぁい」
「逆さまピラミッド脳天カチ割り落下!?」
ジャミーラはスズを見つめた。
「スズ。あなたはあの『マタタビ人間』が、そんなに大事?」
スズはぴくりと反応した。
見下ろすジャミーラの視線を、スズは見上げて迎え撃った。
「オマエらやエノコローにとって、キウイはただのマタタビ人間かもしれないにゃ。でもスズは、キウイのことを昔から、知ってるにゃ。だから」
スズの顔に、決意の色が浮かんだ。
床にひざをつき、手をつき、それから頭を下げた。
「お願いだにゃ、みんな。ただスズのために、苗宮キウイを取り戻すのを、協力してほしいにゃ」
全員が、そのスズの姿を、願いを見た。
沈黙が、しばらく流れた。
やがて不意に、アブリマルが両手で自分のほおを張った。
「悪いアネゴ。オレサマ寝ぼけてたわ。強い相手にビビるんじゃなくて、心躍るのが漢の生き様だってこと、忘れてたぜ。それをアネゴに頭下げさせて思い出すなんて、自分が情けなくてムカっ腹が立ってくる」
アブリマルは拳を握りしめ、宣言した。
「オレサマはやるぜ!! 尊敬するアネゴのために!! 弱気な自分は、もう忘れたッ!!」
ハンサミィも髪をかき上げ、続けた。
「ボクとしたことが、女性に恥をかかせるなんて、イケメンの風上にも置けないよ。ボクならなんとかなる、なぜならイケメンだから。それがボクの、生き様ってやつだったよ」
「お、オマエら……!」
スズは笑顔を向けた。それから、ジャミーラの方を見た。
ジャミーラは視線をそらし、何事か考え、それから視線を戻して、スズに問うた。
「スズ。あなたダーリンのことが好きなのぉ?」
「んにゃっ!? い、今そんなこと関係な……」
「答えなさい。『愛の女神』バステトに対し、彼が好きだと誓える?」
「……! 誓うにゃ!」
ジャミーラはふっと笑い、それから白々しく言った。
「そ〜ぉ。誓われちゃったら仕方ないわね〜ぇ? わたくし愛の女神であるからしてぇ? 愛に生きる人を守護するのが本分だからぁ? 協力しないわけにはいかないわねぇ? あ〜あわたくし個人としてはライバルであるスズの協力なんてしたくないけれどぉ? 女神だから仕方な〜く手伝うしかないわぁ〜」
「ジャミーラ……。アブリマルも、ハンサミィも、ありがとうだにゃ」
「お礼を言うのは、成功してからにしなさいな」
ジャミーラはひざをつき、スズと目線の高さを合わせた。
「わたくしたちが結束して、勝機はあるの?」
「……きっとあるにゃ! 対策を練るにゃ、みんなで!」
アブリマルも、ハンサミィも、力強くうなずいた。
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