第16話 驚異のねこじゃらしマスター!2

 スズはキウイの前に立って身構えた。


「オマエ、何者だにゃ!? 見るからに怪しいにゃ、キウイをどうする気だにゃ!?」


「ケヒャヒャヒャ……なァに、悪いようにはしねェよ……マタタビ人間としての力をォ、存分に使ってもらうだけさァ……

 オレのすみかに連れ帰ってェ、じィィっくりとなァ……!」


「なんか気持ち悪い! 絶対にヤバイヤツだよねこいつ!?」


「キ、キウイは渡さないにゃ! どうしてもというなら、スズを倒してからにするにゃ!」


「ほーう? 猫又スズゥ、あんたがオレの相手をしてくれるのかァ? 威勢がいいねェ……

 いいぜェ、オレはあんたみたいなァ、元気のいい猫ちゃんがァ、だァァい好きだからなァケヒャヒャヒャ!」


「ぶるるっ! おおおおオマエみたいなヤツに好かれるなんてゴメンだにゃ! 問答無用だにゃ食らえ毛玉爆弾!」


 スズは毛玉を投擲!

 だが……狙いが外れる! 男の横をすり抜けた!


「スズ!? 見当違いのとこに投げてるよ!?」


「お、おかしいにゃ!? いっぱい投げるにゃ、えいえいえーいにゃ!!」


 毛玉をいくら投げようとも、男には命中しない!


「あ、あの男の手! あれにスズの視線が引き寄せられるんだ! 伸ばした手の先で揺れる、緑色でフサフサした先端を持つあれは……ねこじゃらし!!」


「息子よ! ねこじゃらしの植物としての正式名称は狗尾草(えのころぐさ)! そしてあの男は、ねこじゃらしマスターの旋風狗尾郎(つむじかぜエノコロー)!」


「知ってるの母ちゃん!? 夕飯の支度ほっぽり出して来たんだね手に持ってるのはタルタルソースだね今日のメニューはエビフライかなチキン南蛮かなー!?」


 男、エノコローは高笑いした!


「ご紹介どうもだぜェ……! そうオレはねこじゃらしマスターのエノコロー! 猫を愛し、猫と遊ぶのを至上の喜びとし、ねこじゃらしさばきに人生のすべてをかけた男ォ……! 猫をモフるためならァ、どんな汚い仕事もしてきたぜェ……!」


「き、汚い仕事……! いったいどんな!?」


「例えばァ、ご町内のドブ掃除とかァ……!」


「あっ汚いってそういう!? 犯罪的とかじゃなくて!?」


「介護施設でのオムツ交換とかァ……!」


「普通に人にほめられる仕事だ!?」


「海岸のゴミ拾いもしたぜェ……!?」


「この人怪しいのは雰囲気だけでいい人だね!? 別に悪者でもなんでもないね!?」


「ためた金で猫と遊ぶ日々よォ……! 猫又スズゥ、あんたもオレがァ遊び倒してやるぜェェケヒャヒャヒャ!」

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