第12話 災厄なるイケメン!キャスパリーグ!4

 スズはビームをよける! よける!


「ふざけた能力だけど、威力も連射性能も申し分ないにゃ! アーサー王をほふったともいわれるキャスパリーグの異能、あなどれないにゃ!」


「イケメンビームで殺されたかもしれないアーサー王が不憫なんだけど!」


 ハンサミィはポーズを変え、長い脚を組み替えながらスズに迫る!


「もし素直にキウイ君をボクのものにすると言ってくれれば、いたずらに君を傷つけたりしないんだけどな?」


「断るにゃ! キウイはスズのものにゃ!」


「そうか。なら……仕方ないね」ずいっ


「ッ!!」


「目にも止まらぬ接近でスズが壁際に追いやられた! あ……あれは『壁ドン』だ!!」


 吐息がかかるほどの距離に顔を寄せ、ハンサミィはスズにささやく!


「君が悪いんだよ。ボクを、本気にさせるから」びかーっ


「ふにゃーッ!?」


 至近距離でイケメンフラッシュ炸裂! スズは空中に打ち上げられた!


「うわあああスズーっ!?」


 空中のスズを、ハンサミィは見上げた。

 スズの姿が太陽に重なり、ハンサミィはまぶしさに目を細め、手をかざした。

 細い指が顔に引く影、アンニュイな表情が、イケメンオーラを増幅させ、イケメンフラッシュは最高潮に達する!


「フィナーレといこうか。必殺……イケメン☆フラッシュ☆ミリオンダイヤモンドライズ」


 天空に伸びる光の奔流! 宙を舞うスズの姿を、その光瀑は飲み込んだ!


「この罪深さを胸にいだいて、悲しみとともに感謝するよ。猫又スズ君。すばらしい戦いは、夢のようだった」



「——デイドリーマーは構わないけど、勝ち負けも見えないようじゃ困るにゃ」



 ハンサミィははじかれたように振り向いた。

 空中で打ち抜いたと思ったスズが、背後にいた。


「何が起こったか分からないって顔してるにゃ。周りに何が浮いてるか、確かめてみるがいいにゃ?」


 ハンサミィは周囲を見る。光を乱反射させる薄い膜が、あたりを漂う!


「こ、これは鏡……いや! 『シャボンの膜』か!」


「その通りだにゃ! 毛玉に染み込ませたシャンプーでシャボン液を作ったにゃ! オマエが楽しそうに打ち抜いたスズは、シャボンの鏡に映ったマボロシだにゃ!」


 戦況を見ていた母の目が光る!


「スズさん、伝承をうまく利用しましたね」


「何か知ってるの母ちゃん!?」


「アーサー王とキャスパリーグとの戦いはアーサー王が勝ったとも、キャスパリーグが返り討ちにしたとも伝承されます! その中でアーサー王が勝利した方法は、鏡の盾を用いて幻惑したというもの!」


 スズはシャボン膜を展開! ハンサミィの周りを囲み、その姿を四方八方に映す!


「ああ……! 一人でも罪深いイケメンのボクが、二人、四人、八人……! あまりのイケメンシンフォニーに、ボクの胸ははちきれそうだよ!」


「思った通りにゃ! それだけイケメンを自称するナルシストなら、鏡で囲えばきっと動きが止まると読んだにゃ! そして!」


 スズは飛びかかり、ハンサミィの頭に組みつく!


「今回の戦い、スズが毛玉をどうやって出すか省略してたにゃ。この機会に、毛玉が出るところを間近でじっくりと見てみたいと思わないにゃ?」


「え? いやいや、毛玉ってあれだよね? ボクも猫の端くれだから、どこから出るかは知ってるよ? それを、間近でって、ちょっと待って、このイケメンのボクの真上で、そんな、そんなこと、ちょ、やめ」


「おぼろろろろろろろ」


「ぎゃあああーーーー!!」


 ハンサミィはスズのリバースをもろに食らった。ハンサム顔は見るも無惨に汚され、ハンサミィは目を回し、倒れた。


 母は旗を振り上げた。


「勝負あり! 勝者はスズさんです!」


 観客の悲鳴が響き渡った。スズは意に介さず、口をぬぐい、キウイにサムズアップしてみせた。


「キウイ、この通りスズが守ってやったにゃ。感謝するがいいにゃ」


「感謝したくねぇ〜〜……」

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