第3話 ピラミッド襲来!バステト女神!2

 すると学校の横にピラミッドが鎮座していた。


「なんで!?」


 ピラミッドのてっぺんがパカっと開き、中からエキゾチックな褐色美女が出てきた。ねこみみの。


「ほーっほっほっほ! わたくしの名はジャミーラ! マタタビの力を持つ人間よ、わたくしの所有物としてくれるわぁ!」


「あれって俺を指名してる……?」


「キウイ、モテモテだにゃ」


「あれはバステト女神の分霊、ジャミーラ!」


「知ってるの母ちゃん!? てかなんでここにいるの!? もう学校なんだけど!?」


「息子よ、バステト女神とはエジプトにてまつられる愛と豊穣と月の女神。猫の頭を持った女神です。なので当然、マタタビ人間パワーで引き寄せられます」


「そこを『当然』って俺言いたくないなぁー! 俺やだよマタタビでホイホイ引き寄せられちゃう女神とか格を落とさせることになっちゃって!」


「キウイ、そこは考え方を変えるべきだにゃ。キウイが世界をすべる力を持つ偉大なるマタタビ人間だからこそ、異国の女神すらも従えるのにゃ。キウイの格が高ければ、引き寄せられる猫たちの格も守られるにゃ」


「なんかいいこと言うフリして俺に世界征服を推し進めさせようと考えてない?」


「気のせいだにゃーフフフーン」


「目を合わせようかスズ?」


 言ってるうちに、褐色美女ジャミーラが月面回転ジャンプで飛んできた。キウイの眼前に着地。


「お、猫らしいしなやかな敏捷性」


「わたくしの美しさに見とれたかしらぁマタタビ人間? そうでしょうとも何しろわたくしは高貴なるバステト女神の分霊なのだから! 見せてあげましょうわたくしの素晴らしき肉体美を! とうっ!」


「おおっ見事なエビ反りだにゃ! 指先でかかとにタッチしてるのにゃ! これはまさしく三日月をかたどったクレセントブリッジだにゃ!」


「いやあの、マンガだと両端がくっつきそうな三日月って見るけどさ? 実物の三日月はそんな急カーブじゃないからね? 半円だからね?」


「ん? こんな感じかしらねぇ」よじよじ


「いや手の位置微調整して直さんでも。柔軟性とか関係ないただのブリッジになってるよ」


「とりもなおさず!」ぐぃーん


「うおっ反った状態から一気に立ち上がった。ホントにすごい柔軟性だ」


「このジャミーラ、マタタビ人間のあなたを我が手中に収め、我が祖国エジプトのねこねこ王国を復興させるわよぉ!」


「ねこねこ王国って何!?」


「息子よ、古来よりエジプトでは猫は神の遣いとしてあがめられていたのです! 古くはネズミ駆除として飼育された猫ですが、家畜を超え愛玩動物をも超え崇拝の対象となるそのありさまは、まさに猫が人を支配するサンプルとして興味深いでしょう!」


「母ちゃんずっといるの? このまま解説役としてやっていくの?」


「さあマタタビ人間! わたくしのしもべとしていざエジプト!」


「ちょっと待つにゃ」


 キウイに詰め寄るジャミーラに、スズが割り込んだ。


「むっ、何かしらぁこのちんちくりんは?」


「猫又のスズだにゃ。スズはキウイの世話役だにゃ。大切なキウイを、よそから来たノラ猫には渡さないにゃ」


「あらぁ〜いいのかしらそんな態度を取って? わたくし女神よぉ? 不遜な態度を取っていいのかしらぁ?」


「しょせんは分霊だにゃ? バステト女神本人じゃないにゃ。本体の威光を笠に着ていばってる相手なんて、ノラ猫以下のドブネズミだにゃ」


 にらみ合う女性二人。目からバチバチと火花が出る。


「闘って決着、とするべきかしらねぇ」


「望むところだにゃ」


「えっちょっと穏便に……」


「こんなこともあろうかと! 母が準備を整えておきました! 今日は学校は休校とし、校庭を貸し切ってあります!」


「母ちゃん何やってんの!? そんな権限どこにあったの!?」


「ふふ、準備万端みたいだしぃ……」


「いざ尋常に勝負、だにゃ」

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