第4話 定時連絡と生姜焼き弁当

 近所の食料品を扱うスーパーヤマダと看板にある店で、加熱処理された肉入りのお弁当が250円で売っているのを発見、さっそくゲットして上機嫌で基地に戻る。

 基地の前に到着して改めて見る外観はほんとにボロイ、まあ外観の見てくれなんて任務には爪の先ほども関係無いのだが、今ひとつ気持ちが盛上がらない、ほんとは事前調査のデータで見た〈近代和風建売住宅3500万〉の家にしたかったのだが、とても予算が足りないので諦めた。日差しのまぶしいリビングで故郷のハーブ茶をいただく想像が出来上がっていただけに残念でならないが、現地時間でほんの1500時間程度の滞在なので贅沢を言ってもしょうがない。

 それに以前この地域に来た事のある同僚に、ここには面白いギャンブルがあると聞いていたので、賭け事研究家(趣味)の私としては体験しない訳にはいかないだろう。

 そう、確か〈パチンコ〉とか言っていた。

 それが近所に3店もある。

 それがこの物件を決めた理由の一つではある。まあ、妥協するだけの地理的条件は揃っていたので外観の事は目を瞑る。理由など一つあれば十分なのだ。ようは仕事の合間の息抜きに趣味を満喫する、科学調査とか言ってもこの惑星のネットワークを使いながら文化に触れ、たまに出掛けて体験したり、科学技術の進歩の具合を調べたりして、それらを基地でまとめ中継端末でAIチヨに送り分析、それの繰り返し。誰にでもできる簡単なお仕事のために趣味の充実は必要なのだ。

 実に合理的選択だ。

 調査などはほどほどに、さあ、待っていなさい!この惑星のギャンブル場のオーナー諸君たっぷりと楽しませてもらうから。

 私は調査の趣旨を少し忘れているような……

 しょうが焼き弁当と書かれた容器のフタをあけながら中継端末をオンラインにしてトモーフを介してリンクする。

「勤務日誌起動、惑星連合宇宙艦隊第58星間惑星調査隊ニーナ・バーヴェル少尉、本国標準日時クロン暦0431、W327、26時17分、地球暦2019年3月20日14時37分、本日の行動の報告、一昨日契約に至った基地の開設作業を開始する。必要な物資を現地調達、途中下等生物の襲撃にあうが極秘裏に鎮圧、平和的解決により同種族の協力を得る事に成功、フリーモビルを提供される。それにより基地の開設が予定時間より早く終了す。報告終わり」

 トモーフがロボットらしいカチャカチャ音をかわいく奏で通信が終了した。

 私はお弁当を味わいつつトモーフのかわいい仕草を楽しんだ。

 一つ報告を忘れた。

 地球の食事は安くてレベルが高いと、まっ、いいかそのうちにすれば、それにしてもこのしょうが焼きと言うのはうまいな、何の肉だろう?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る