第885話初音と結愛の変化
三連休が明け。
登校日を迎えた今日、学校に向かうために家を出てマンションの下に出ると、そこでは初音が俺のことを待っている様子だった。
「おはよ、そーくん!」
「おはよう」
特に待ち合わせとかをしていたわけではないが、初音が登校するときに家の前とかに居ることは珍しくもないため俺は特に驚かずに、初音と一緒に学校へ向かって歩き出した。
「昨日はよく眠れた?キャンプで疲れてたでしょ?」
「あぁ、おかげさまでよく寝れた」
「うんうん!良かった〜」
共に大きなことを経験したからか、初音の俺に対する雰囲気が少し変わったような気がする。
柔らかくなったというか、雰囲気が前よりも優しくなったというか、そんな感じだろうか。
俺がそんなことを思っていると、初音が俺の腕を組んできた。
「そーくん!キャンプだけじゃなくて、色々なところ一緒に行こうね!」
「もちろんだ・・・その前に、俺の誕生日の10月10日に初音の両親に会うっていうかなり緊張することがあるから、そこだけがちょっと心配だ」
「それは絶対大丈夫だから安心して!本当に将来結婚するのに向けて軽くそーくんのことを知ってもらいたいってだけだから」
初音は明るい声で話した。
・・・この様子だと本当に心配はいらないのかもしれない。
「だからそーくんは───────」
「そーちゃん!おはよー!」
隣に居る初音が誰かに弾き飛ばされて何事かと思ったら、いつの間にか俺の腕を組んでいるのが初音から結愛になっていた。
「結愛・・・!」
「三連休挟んじゃったから三日振りだね〜!三連休楽しかった〜?」
「───────私のことをそーくんから離した挙句そーくんの腕を組むなんて、本当にいい度胸してるよね」
「虫のことなんてどうでもいいの、私は今そーちゃんと話してるんだから」
「だったらそーくんの代わりに話してあげる、三連休そーくんと私は二人きりでキャンプに行ってたの」
「・・・二人きり?」
俺と一緒に居ることが目的で恋人になるのははあくまでもそのための手段だと思い出したらしい結愛だが「でも、だからってそーちゃんのお嫁さんになるのを諦めるなんてことは全くしないからね!」とも言っていた。
そのため、二人きりでキャンプという言葉には少し引っ掛かりを覚えても無理は無い。
「そうだよー?それでね、そーくんの初めてももらっちゃった」
「お、おい初音!そんな余計なことまで・・・!」
「余計なことじゃないよ、この女のそーくんに対する恋心はちゃんと折っておかないと、もしかしたら将来的に手に負えなくなる可能性だってあるんだから」
初音がそこまで言うってことは、初音もやはり結愛の色々な部分を認めてはいるんだろう、認めるが故に容赦しない、それが初音のやり方。
「そっか、そーちゃんの初めてを・・・」
結愛は流石に精神的にダメージが来ているのか、ショックを受けている様子だった・・・見ていられなくなった俺は、フォローの言葉をかけようと口を開く。
「結愛、確かに俺は初音と───────」
「って、そーちゃんと別れるまでの私ならショック受けてたと思うけど、今の私はそーちゃんと一緒に居られればそれで良いの」
結愛は迷いの無い口調で言う。
・・・本当に、結愛も変わったんだな。
「それに、その辺の調子も最初の方は良かったけど後から良く無くなってきて別れるなんていう話も聞くし、そうなったらそーちゃんは私が貰っちゃえるから、そーちゃんのお嫁さんになるっていう私の夢にとって何の邪魔にもならないよね!」
結愛はむしろ肯定的に捉えているようだ。
「・・・そーくん、なんかこの女前より厄介になってるんだけど、もしかしてそーくんのせいじゃないよね?」
「お、俺は何もしてない!結愛が自分で変わっただけだ」
「・・・本当、厄介」
俺たちは三人で学校に向かった。
・・・学校に向かう道中、相変わらず初音と結愛は喧嘩していたが、やましいことが何も無くなった俺にとっては、その日常がとても温かく感じた。
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