第886話俺の将来の話
10月に入り、俺の誕生日まであと一週間となった。
そしてその日は、初音の両親に会う日・・・
「何か手土産とかを用意した方がいいのか・・・」
やはりこういうのは礼儀として、しっかりと何かお菓子とかを持っていくべきなんだろうが・・・初音の家が控えめに言ってもお金持ちなのはもうわかっていること、そんな人たちに一体何を渡せばいいんだ。
「そーくん!手土産なんて要らないよ!」
「え・・・?」
休み時間、自分の席で悩んでいた俺に対して、初音はそう一喝した。
「どうせ私の両親に何渡せばいいかわからないって悩んでるんでしょ?」
「それはそう・・・だけど───────」
「え〜?なんですかぁ?なんか面白い話聞いちゃった気がしちゃうのは気のせいですかぁ?」
「───────あ、あゆ!?」
いつの間にかあゆが俺の後ろに居たらしく、ニヤニヤ顔で俺と初音の前に出てきた。
・・・本当にいつも思うが、よく上級生の教室にそんなに平気で入れるものだ。
「先輩の驚きリアクション頂きました〜!それでそれで、初音先輩の両親みたいなワード聞こえたのでそっちを教えてくれませんか〜?」
「関係無いから、消えてもらっていい?」
「辛辣〜!もしかしてもう結婚の相談とかをしちゃう感じですか!?熱いですね〜!」
「お、おい!声が大きい!」
ほとんどの人が黒板前に集まってるから良かったけどもし周りに人が居たら変な誤解を生んでた可能性が───────
「え、そーちゃんもう結婚するの・・・!?」
「さ、最王子くん・・・結婚、するんですか?」
よりにもよって一番誤解しそうな二人に聞かれてしまった。
「するわけないだろ!俺はまだ16歳だ!」
仮に次の誕生日を迎えたとしても17歳、まだ結婚できる年齢では無い。
「まぁ、そーくんが私と結婚するのは決まってるんだけどね」
「まだ決まってないし」
「決まってるから」
「決まってないって」
「お二人とも、落ち着いてください」
初音と結愛が喧嘩し、それを天銀が落ち着かせる・・・普段通りの日常だ。
・・・俺の日常って、もしかしてかなり物騒なのか?
「ていうかいい加減、もちろん天銀も含めてそーくんに寄ってこないで欲しいんだけど」
天銀が実は女子だということを、普段天銀とよく話す機会のある人にだけ天銀が説明していたため、もう天銀にとっても隠し事は無くなっている。
「別に恋人だからってそーちゃんのこと全部決めれる権利があるわけじゃ無いでしょ?」
「そうですよ〜!・・・あ!そうだ!私ずっと気になってたことあるんですけど!先輩って、どこの大学行くんですか〜?」
「え・・・」
以前いつかのタイミングで、初音と大学の話をしたときに「そーくんは大学なんて行かなくていいの」みたいなことを言われたことを思い出したため、初音の様子を窺ってみる。
「・・・そーくんは、どこか行きたい大学とかあるの?」
え・・・!?
俺が大学に行くことを否定しない・・・?
・・・初音も、本当に変わったんだな。
俺は改めてそう認識する。
「まだちゃんとは決めてないけど、こういうのが良いな、みたいなのはある」
「え〜!そうなんですか〜?教えてくださいよ〜!私も先輩と一緒のところ行くので!」
「・・・は?」
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