第884話霧響は子供じゃない

 時間というのは早いもので、とうとうキャンプをしてから三日目の朝になってしまった、これから帰らないといけない。


「あ〜!楽しかったね〜!」


「そう・・・だな」


「どうしたの?そーくんはキャンプ楽しくなかった?」


「た、楽しかった」


 キャンプはもちろん楽しかった。

 楽しかったが・・・昨日のことを思い出すとなんだか恥ずかしくなってくる。


「・・・思い出してるの?」


「べ、別に───────」


「帰ったらいつでもしてあげるから、安心して」


 俺はその初音の言葉に対して否定も肯定もできなかったが、それでも心のどこかで何か温かいものを感じていた。

 ・・・そして、俺たちは二泊三日のキャンプを終え、それぞれ家に帰ることとなった。


「た、ただいまー」


 霧響に黙って出かけたとかではないため、気まずいことはないはずだが・・・初音とのことについてとかで何か後ろめたくなってしまい、その感情が声に出てしまったようだ。


「おかえりなさい、お兄様」


「あぁ、ただいま」


「・・・お兄様、抱きついてもよろしいでしょうか」


「初音に見られたら怒られるから頭を撫でるとかでもいいか?」


「私はもう頭を撫でられただけで喜ぶ子供ではありませんよ!」


「そうなのか」


 俺は試しに霧響の頭を優しく撫でてみる。

 するとその直後、霧響が少し嬉しそうな顔をした。


「嬉しそうにしてないか?」


「・・・最近はお兄様と会えていなかったですし、仕方ありません」


「会えてなかったって言っても二泊三日分だけだ」


「それほど期間があれば、頭を撫でられるということでも喜んでしまうのは仕方の無いことです、普段であれば私はこんなことで喜ぶ子供ではありませんからね」


 あくまでも自分は子供ではないと主張したいらしい。

 ・・・霧響の頭を撫でていると、なんだか兄として言いたいことが出てきた。


「・・・きっと霧響には良い恋人ができる」


「お兄様が白雪さんを振って私と恋人になってくだされば一番早いと思います」


「それは確かに早いけどそういうことじゃ無いだろ!」


「・・・私にはどうしても、お兄様以上の方がこの世界に居るとは思えませんし、これまでずっと一緒に過ごしてきたのはお兄様なんです」


 前ほど俺と恋人になりたいという感情からどうにか新たな道に進もうとしているという努力は感じるが、それでもやはり難しいといった感じなんだろう。


「ですから・・・どうすればいいのかわかりません」


「霧響・・・今は立ち止まってもいいから、ゆっくり一緒に考えていこう」


 俺はそう言いながら兄として霧響のことを抱きしめ、しばらくした後リビングに二人で座りキャンプでの出来事をたくさん霧響に話した。

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