第883話ずっとそーくんのもの

 俺たちは、初めて・・・というものを一通り終えた。

 ・・・最初の方はなんとなく覚えているし感覚もなんとなく覚えているが、後半初音が今までの我慢を解放するように荒々しくなり、俺はとうに限界を迎えていたため後半のことが朦朧としている。


「はぁ〜、今までで一番最高な気分だったよ、最高・・・」


「そんなに良かったのか?」


 正直一応どんな感覚かは覚えているが、緊張とかなんとかで初音ほど全身でその良さを体感できていなかったかもしれない。


「うん!最高だったよ!もちろん快楽的な意味でも良かったけど、何よりそーくんと一つになれたっていうのが本当に嬉しいの!」


「そうか・・・なら良かった」


「・・・そーくんは?途中から疲れちゃってたみたいだけど、大丈夫?」


 こんな大事な時までしっかりと初音の方が余力を残しているというのが男として本当に悔しいというか、切ない。


「あぁ大丈夫だ、ちゃんと、その・・・良かった」


 これは事実で、少なくとも悪い感覚は一切なく、良い感覚しかなかった。


「なら良かった〜!」


 今はもうしっかりと服を着て、水を飲んだりして休憩中だ。


「そーくんの気持ち良さそうで色々と我慢してる感じの声と頑張って呼吸整えようとしてる息遣い良かったな〜」


「お、思い出させないでくれ」


「冗談!でも、これからは定期的にするからね!わかった?」


「・・・考えとく」


「考えとく?そこはわかった、でしょ?私は全然今からもう一度したって良いんだよ?ていうか本当はしたいところを、そーくんが疲れてそうだったから初めてだったし良い思い出にして欲しくてあのくらいでやめてあげたのに」


「わ、わかった、悪かった」


 あのくらいって・・・俺はあんなに疲れたのにな。

 流石に今からというのは体力が持たないし、俺だってしたいかしたくないかで言うと前者になるため、喧嘩になる前に従っておこう。


「でもようやく、これで完全にそーくんが私のになったね」


「あぁ・・・初音も、俺の───────」


 俺が普段は言わないがここぐらいは今の初音みたいなことを言っておこうとしたところで、初音がこっちに顔を近づけてきて言った。


「何言ってるの!」


「・・・え?」


「私はずっとそーくんのものだったよ?それなのに、そーくんが、他の女に騙されたり惑わされたりしたせいで、こんなにも時間かかっちゃったんだから!」


 初音は大きな声で、泣きそうな顔で言った。


「・・・本当に、ごめん」


「・・・でも、いいよ、最後は私のところに戻ってきてくれたからね」


「・・・ありがとう、もう離れない」


「・・・うん」


 俺たちはその後しばらくの間沈黙の時を過ごしたが、それは気まずい沈黙ではなく、心地良い沈黙だった。

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