第875話これからの俺

「二人でこうしてのんびり過ごすのもいいね〜」


「そうだな」


 俺たちはコンロの火で魚を焼きながらゆっくりと雑談していた。

 初音は焚き火とかをしたかったらしいが、万が一のことがあったら危ないため流石にしてはいけないらしい。


「・・・そーくん、この際だからハッキリさせておきたいんだけど」


「ん?あぁ、なんだ?」


「そーくんは将来的に私と結婚したい、って思ってる?」


 二人きりでのんびりと魚を焼いているときに、いきなりの大きすぎるワードが飛び込んできた。

 初音と結婚したいか・・・か。


「まぁそーくんがどう思ってようと私とそーくんが結婚するのはもう決定事項なんだけど、一応そーくんの気持ちだけは聞いておきたくて」


 俺がどう答えても選択肢は一つしかないと初音は俺に伝えてくる。


「・・・正直、まだ俺が将来どんな仕事をしていてどんなふうに生計を立てているのかが俺にはあまり想像することができない」


「だから、そんなのは私が居れば関係無───────」


「それだと俺は初音に頼りきりになる、俺はそんなのは嫌なんだ」


「私は・・・もっと色々と手伝いたいのに」


 初音が俺に体を傾けてきた。


「十分すぎるほど今まで手伝ってもらってきたし、迷惑もかけた・・・だからあとは初音に返すだけだ」


「その返し方はそーくんが働いて生計を立てるんじゃなくて・・・私への愛で返して?それの方が嬉しいから」


「・・・あぁ、わかった」


「・・・そーくんが行動に移した愛情表現が苦手なことはわかってるよ?だから、もし私に愛情表現したいけど照れちゃうって時は、私に口で教えて欲しいの、そうしたら私はその気持ちだけでも嬉しくて、今度は私が行動で応えてあげられるから」


「それも・・・わかった」


 今更かっこつけたって仕方ないけど、それでもできることなら俺からアプローチしたいな。


「それにしても本当に天国みたい、二人で好きなだけ話せて、そーくんが見てるのは私だけ・・・邪魔も入らないなんて」


「お、俺が普段は初音のことを見てないって言うのか?」


「この前まで浮気してたのはどこの誰だっけ〜?」


 初音はその一瞬だけ虚の目で俺のことを見てきた。


「それは・・・本当にすみません」


「あんなにずっとずっと言ってきたのに、まさか本当の本当に浮気しちゃうなんて、これで一人でも大丈夫なんてよく───────」


 初音は俺が過去に浮気したことを改めて想起して怒りに火をつけてきた、せっかくのキャンプが暗くなるのは嫌だし、俺は初音に伝えたいことがあったため初音の両肩を軽く掴んでいう。


「俺が浮気した事実は消えないけど・・・これからの俺を見てて欲しい」


「ちょ、ちょっとそーくん、ダメだって!このキャンプ中は自制しようって決めてたのに・・・!」


 初音はすぐに俺から距離を取ったかと思えば、今度は俺に抱きついてきた。


「え、え・・・?」


「・・・しばらくはこれで我慢する」


 初音はその後、しらばく無言のまま俺に抱きつき続けた。

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