第870話霧響は寂しい
霧響は突然のことに驚いた顔をした。
「ちょっと待ってくださいお兄様、ということはこれから三日間お兄様は居なくなってしまうと?」
「そういうことにはなるが・・・そんな寂しそうに言わなくても、三日と言っても多分二泊三日になるだろうから、三日目の夜には戻ってくる」
「そういう問題ではなくて!その間私はどうすれば良いんですか!?」
「どうすればって・・・」
霧響は別に俺が居ないと生活できないような生活力の無さではなく、むしろ霧響と一緒に過ごしていると俺の方が何もしなくても円滑に回っているという現状だ。
それに対してどうすればも何も無い。
「別に霧響は俺が居なくても生活には困らないだろ?」
「困りますよ!何言ってるんですか!」
「え・・・?」
「私、お兄様が一緒に居てくださらないなら生活なんてしないですからね!ずっと寝ますから!」
霧響は俺が思っている以上に寂しがっているのか、かなり感情的になっている様子だ。
ここは論理的に諭してみよう。
「何言ってるんだ、6月は学校が始まるからって実家に帰ってて俺が居なくても普通に生活できてたんだろ?・・・そういえばそうだ、あんまり気にして無かったけど6月は家に帰ってたのにどうして学校が始まった今は帰ってないんだ?」
「それは私が邪魔、ということでしょうか、そういうことならいやでも私が居ないとお兄様は生活すらできないということを分かっていただく必要が───────」
「そうじゃない、ただ俺は疑問に思っただけなんだ」
「・・・以前は久しぶりに顔が見たいとお母様が言っていたというのと、色々将来についてのお話等もするということで帰省していましたが、今は特にお兄様と一緒に居ることを放棄してまで実家に帰らなければいけない理由はないというだけです」
霧響は最後の一文を強調して言った。
明日から三日間居なくなると言った俺に対する怒りだろう。
「それはそれとしてお兄様、もしお兄様がキャンプに行くというのであれば私はきっと寂しくなってしまいます」
「・・・あぁ」
「そこで、提案があります」
「提案・・・?」
「私のことも連れて行ってください、そうすればお兄様のことを恋しくならずに済みますから、何も問題は無いはずです」
もしそれが実現可能なのであれば確かにそれは全てを解決する良い手段になるのかもしれないが・・・
「初音にはどう説得するんだ?」
「お兄様の話術を期待します!」
「わ、話術!?お、俺にそんなものは───────」
「今まで数々の危機を乗り越えてきたお兄様ならきっと大丈夫なはずです、お兄様の成長を見せてください!」
うっ・・・その言い方をされてもし俺が否定したらまるで俺が成長してないみたいになるから否定はしたくない。
「・・・わかった、じゃああとで初音に聞いてみる」
「今お願いします」
「え」
俺は霧響の圧に負けて、初音に霧響も連れて行って良いかを聞くことになった。
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