第861話単刀直入な質問
授業終わり。
「天銀さん、今日は少し姿勢が低かったようですが、体調が悪かったのですか?」
授業中、天銀の姿勢が低かったらしく、天銀は普段そんなことは絶対に無いため今の授業担当の先生がそれを心配しているようだ。
「い、いえ、そういうわけでは・・・」
「あなたに限って授業中に眠くなったなんてことは無いと思いますが、もし何かあるなら教えてください」
先生はそう告げると教室を後にした。
俺は天銀のところへ駆け寄る。
「天銀、どうしたんだ?本当体調は大丈夫なのか?」
天銀はまだ少しいつもに比べると姿勢が整っていない。
「は、はい、大丈夫です」
天銀は俺に返事をしてから耳元に小声で話しかけてきた。
「今姿勢を良くすると、ほとんどの方には気づかれないと思いますがあゆさんのように勘の鋭い方、白雪さんや桃雫さんには僕の胸部について疑問を持たれる可能性があります」
「なるほど・・・」
それでその部位を隠すために姿勢を低くしてたってことか。
「今日はもう何か理由をつけて早退した方が良いんじゃないか?」
「いえ、それには及びません」
「そうか」
しばらく天銀と雑談をしていると、教室の外からあゆの声がしてきた。
「せんぱ〜い、ちょっと来てくださいよ〜」
あゆが俺に向かって来て欲しいと言ってきているが、今あゆのところに言っても絶対に良いことは無いため俺は華麗に無視する。
「せんぱ〜い!ちょっと来てくださーい!」
だが、あゆは教室全体に声を張り上げることで俺があゆのところに行かないといけない状況を作った。
「・・・ちょっとあゆのところに行ってくる」
「はい、わかりました」
「安心してくれ、絶対に天銀の秘密はあゆに教えない」
「ありがとうございます」
俺は天銀に約束してから、あゆの居る廊下に出た。
「何か用か?」
「はい、単刀直入に聞くんですけど、天銀先輩の性別って本当に男ですか?」
「えっ・・・」
天銀もあゆが何かに勘づいているとは思っていたがもうほとんど答えまでバレてしまっている。
だが俺に聞いてくるってことはまだ確証はないんだろう。
「あぁ、もちろんだ、じゃないと男子の体育に参加なんてできない」
「待って、今の質問どういう意味?」
「は、初音!?」
あゆが教室全体に声を通したことでそれがもちろん初音にも聞こえていたらしく、俺たちの会話に興味を持っているようだ。
「どういう意味って、そのままの意味ですけど〜、だって私たち天銀先輩の着替えてるところとか一度だって見たことないじゃないですか〜?」
「それは、異性なんだから当たり前だろ?」
「じゃあ天銀先輩に私の着替え見せてあげるから天銀先輩の着替えてるところも見せてって交渉してきちゃいます!」
「え、お、おい!」
あゆは突拍子もなくそんなことを言うと、2年生の教室であるにも関わらず全く躊躇なく教室に入っていった。
・・・普通先輩の教室ってなったらもっと緊張するものじゃないのか?
「・・・そーくん」
「ん?」
「一応聞いとくけど、隠してること・・・ないよね?」
「・・・あぁ」
俺はそう答えるしかないためそう答え、急いであゆと天銀のところへ向かった。
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