第857話初音の家庭内関係

「ど、どういうことだ?」


「どういうことって?そのままの意味だよ?」


 多分初音の家っていうのはお父さんの収入があって成り立ってると思っていたが、そのお父さんを無視して良いっていうのは・・・


「そのままって・・・仮にも初音のお父さんなんだし、無視なんてできるわけないだろ?」


「んー、力関係がお父さんに大なり記号百個くらいつけて私の方が強くて、その私に大なり記号2つくらいつけて強いのが私のお母さんなの、だから本当にお父さんのことなんて気にしないで大丈夫」


 一体どういう家庭環境なんだ、こんなに美人で頭も良い完璧人間な初音が育った環境だから異様なことに驚きはしないがそれにしたってその力関係には驚きを隠せない。


「なるほど・・・じゃあ、そのお母さんっていうのは?」


「お母さんも基本的には私の意思を尊重してくれるから大丈夫だと思うよ?もしかすると初対面だとちょっと怖いって感じるかもしれないけど、根は優しい人だから」


「わ、わかった」


 初対面だとちょっと怖いか・・・色々と脳内でシミュレーションしてその怖さを紛らわしておかないといけないかもな。


「うん!じゃあ話も一旦落ち着いたところで、言わなくてもわかるよね・・・また恋人に戻って証に、ね」


「えっ、何の話───────」


 俺が一体何を言わなくてもわかるんだと疑問を口にしようとしたところで、初音は目と唇を閉じて何かを待っているような素振りを取った。

 やはり俺も経験的に成長しているのか、このシチュエーションがどのようなシチュエーションなのかを瞬時に理解することができた。


「・・・・・・」


 俺は無言のまま、その初音の要望に応えた。

 その後、教室に向かう道中。


「そーくん、今日保健体育の授業あるけど、そーくんは他のどんな授業よりも最優先でその授業をちゃんと受けてね?」


「いやいや、学生的に見るならどう考えたって数学とか国語とかの方が大事じゃ無いのか?」


「そんなのそーくんには必要ない可能性だってあるんだから、そんな不確実性のあるものよりも絶対に必要になるものをちゃんと勉強しておいた方が絶対に将来に繋がるよ」


「そんなこと言ったって・・・ん」


「どうしたの?」


 目の前の廊下を天銀がものすごいスピードで何かを抱えるようにして走りすぎて行った。


「天銀・・・?あんなに焦ってどうしたんだろ、まぁ別に私からすればそーくん以外どうだっていいんだけど」


「どうだっていいことは無いだろ?・・・なんか心配だ、初音は先に教室に戻っててくれ、ちょっと天銀のこと追いかけてくる」


「・・・わかった、すぐ戻ってきてね」


「あぁ」


 俺は初音にそう告げてから、天銀の後を追いかけた。

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