第858話天銀の危機
今日で三度目になる校舎裏まで天銀のことを追いかけてきた。
天銀はこんな人気の無いところに何をしにきたんだろうか。
「天銀!ど、どうしたんだ?」
「さ、最王子くん!?何故ここに・・・いえ、ちょうど良かったです、少し手伝って欲しいことがあるんです」
「あぁ、その抱えてる何かが問題なのか?」
天銀は全力で走りながらもずっと何かを大事そうに抱えていた、一体何をそんなに大事そうに抱えているんだろうか。
「・・・少し僕に近づいてきてください」
「え、あ、あぁ」
俺は戸惑いながらも天銀に言われた通り天銀に近づく。
「大きな声を上げないでくださいね」
「え?わ、わかった」
正面に来て近づいてみても、やはり何かを抱えているように見える。
・・・いや、抱えているというよりも、何かを隠している?
「実は・・・」
天銀がその何かを隠しているであろう手をゆっくりと離した。
すると・・・
「え、え!?」
「し、静かに!」
天銀が抱えていた・・・ではなく、やはり隠していたものは。
膨張しすぎて大変なことになっている制服だった、胸部が。
「な、何でこんなことになってるんだ!?」
「それが・・・朝少し急いでしまったせいで晒しの締めが甘かったようで、先ほどいきなり解けてしまったんです」
「だ、だからってなんでそんなことになるんだ?例えに出すのはなんだか申し訳ないけど結愛だってそんなことにはなってないと思うんだが・・・」
「それは、僕が男子生徒用の制服を着ているからだと思います」
「あ、そういうことか・・・」
「それよりも、最王子くんにお願いがあるんです」
この状況でのお願いというのは俺でも簡単に想像がつくが、一応聞き返してみることにしよう。
「なんだ?」
「晒しの代わりになるものを取ってきて欲しいんです」
やっぱりそういうことか。
「代わりになるものって・・・タオルとかか?」
「はい、小さすぎるもので無ければバスタオルでも構いません」
「わかった、ちょっと待っててくれ」
俺は天銀に言われた通り晒しの代わりになるものを持ってこようと校舎裏を後にしたところで、初音が校舎裏に入ってきた。
「え、は、初音!?」
「そーくん?ちょっと遅いから見に来ちゃったけど、どうしたの?」
まずい・・・
「あ、天銀、絶対に初音の方を向かずに背を向けておいてくれ」
「は、はい」
天銀はすぐに俺の意図を理解して初音に対して背を向けた。
「結局天銀がなんであんなに走ってたのかわかった〜?」
初音は近づいてくる。
「あ、あ〜、えっと、体調が悪いとかで───────」
俺が咄嗟に、すぐにボロが出そうな言い訳をしようとしたところで、天銀がその俺の墓穴をカバーしてくれた。
「落とし物を探すのを手伝って欲しいと言われ校内を隈なく探していて、今はこの校舎裏ということなんです、心配させてしまったみたいですみません」
天銀は自然な素振りで初音に背を向けながらその場にしゃがみ込んだ、これなら地面に落ちている何かを探しているという風に捉えられて背を向けていることを怪しまれることもない。
「あ、そう、これ以上そーくんと離れたくないし私が手伝ってすぐに見つけてあげる」
そう言って初音は更に近づいてきた。
「さ、最王子くんはそろそろ戻っていただいても大丈夫です、あとは僕の方で見つけておきますから」
「え・・・」
・・・そうか、俺が居るから初音がここに残ろうとしてるなら俺がどっかに行かないといけないのか。
「わかった、また困ったら呼んでくれ」
「あ、そーくん戻るんだ、じゃあ戻ろ〜」
こうして俺と初音は一緒に教室に戻った・・・が、あのまま天銀を1人にしておくわけにはいかないし、次の休み時間にでも様子を見に行かないとな。
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