第855話結愛の原点
「待ってくれ、それに関しては俺だけで決められることじゃない」
『え、私たちのためとか言って浮気したって言ってたのにもしかしてまたあの女と付き合うって言うの?』
「それも違うんだ、ただ結愛に隠れて勝手に俺たちだけで話を進めるのは忍びないから、ってことなんだ」
『・・・はぁ、そーくんは普段簡単なくせに一回何か決めちゃうとそれを揺るがせないからどうせ私が何言っても意味ないよね』
普段・・・簡単?
『・・・じゃあ約束してね、どうなっても私とまた恋人に戻るって』
「あぁ、約束する」
そうして俺と初音は息が詰まるような話を終えた。
「・・・ぁぁ」
初音とのこういう話はいつも疲れるな。
ちょっとでも言葉選びを間違えたりしたら俺の首が飛ぶ。
そして次の日。
「・・・結愛、その───────」
俺は朝一に結愛のことを校舎裏に呼び出し、早速かなり言いづらいことではあるが切り出そうとしたところ、結愛が強く乗り出してきた。
「あ、あのねそーちゃん!」
俺は結愛がそんなにも積極的に話を展開するとは微塵も考えていなかったため、少し戸惑ってしまうが、聞かないと話が進まないためそれに聞く態度を見せた。
「そーちゃんが言いたいことはわかってるし、私も私なりに考えてみたの」
「え・・・?」
「私は、やっぱり浮気相手としてなんかじゃなくて、ちゃんとしたそーちゃんの恋人になりたい、それが私の原点・・・ううん、原点って言うならそーちゃんと居られるなら何でもいいから、恋人になるのはあくまでも手段で目的はただそーちゃんと一緒に居たいだけってことを思い出したって感じかな」
結愛は何だか、憑物が少し落ちたような顔をしていた。
「でも、だからってそーちゃんのお嫁さんになるのを諦めるなんてことは全くしないからね!」
・・・俺は何だかその言葉にグサッと心をナイフで刺されたような感覚に陥っていた。
・・・仮に結愛がどう想っていたとしても、俺が初音と恋人でいることを選択している限り結愛のその想いに応えることはできない。
「結愛・・・その、今のところ俺は初音のことを振ってまで他の人と恋人になるって言うことは想像できないんだ、だから───────」
「だから?時間を無駄にしないためにも他の良い人を探してって?」
「っ!?」
結愛は俺が言いたいことを先読みしてきた。
「そーちゃん、そーちゃんは私の中でそんな小さい存在じゃないし、むしろ一番大事な存在なの」
「でも、結愛はきっと俺なんかで収まるような───────」
「そーちゃん?そろそろ私も刃物出しちゃうよ?」
「え、えっ!?わ、悪い!」
「ふふっ、冗談だよ、でも私はそーちゃんが好きなの・・・それは、そーちゃんにも否定させないから」
結愛はそう冗談めかしく笑うと、俺の手を引いた。
そして、一緒に教室に向かった。
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