第854話自然な状態
「何って・・・俺はただ2人に仲良くして欲しくて───────」
『好きな人が同じで、お互いに浮気を許す気がないんだから仲良くなんてできるわけないよね?そんなのわざわざ私が言わなくてもわかると思うんだけど』
「それはもちろんわかってる・・・」
初音があっさりと認めたことと初音の真面目な声音から、俺が間違っているのかと感じてきてしまった。
「・・・でも、やっぱり俺のせいで俺に好意を向けてくれてる2人がずっと喧嘩してるなんて、俺は嫌なんだ」
『難しいね、だってそーくんは私のなのにそのそーくんを奪おうとするんだもん、そんなのと仲良くなんてできないよ』
多分今初音が言ったことと同じことを結愛も思っているんだろう、本当にどうすればいいんだ。
『でもね、別にそーくんのせいってわけじゃないよ、私たちが喧嘩するのはそれが自然なの』
「自然・・・?」
『んー、ほら、野良猫とかが縄張り争いをするために喧嘩するとかね、でもそれって別にどっちが悪いとかじゃなくて、生物的に自然とそうなるものでしょ?人間だって同じ、人間は理性がある生き物だけど、それでも本能っていうのはやっぱり存在するの』
「・・・そうか」
俺は喧嘩するのを悪いことだと思ってたけど、それを自然なことだと捉えるっていう考え方もあるのか。
『それとも、そーくんは前みたいに私たちが演技で仲良くしてるフリしてた方が気持ち良い?』
「・・・いや」
もちろんそんなわけがない。
・・・なるべく仲良くして欲しいという考え自体に間違えがあるとは思っていないが、それでも仲良くなれないのを無理矢理仲良くして欲しいと思うのは間違っていることだと、俺は今気づくことができた。
「・・・やっぱり自然にして欲しい」
『うん、そうするよ』
初音も、納得の回答が得られたみたいだ。
『そーくんは本当に、いつまで経ってもそーくんだね』
「別に貶し言葉じゃないのに貶されてるような気がするのは俺の気のせいか?」
『どうだろうね〜』
だがそれは俺も感じていることで、初音はいつでも俺より一枚上手なような気がしている。
『・・・でも、それがそーくんの良さでもあるから、そーくんはずっとそのままのそーくんで居てね』
初音はおそらくは本音であろうことを俺にぶつけた。
・・・初音は優し───────
『でも、そーくん・・・わかってるよね?』
「え?」
初音は少し空気を変えると、初音がまたも本音であろうことを切り出してきた。
『私と別れる、なんて言ったの撤回して』
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