第846話イレギュラーな人物

「ねぇそーくん、約束通り結愛と仲良くなったし、早く恋人に戻ろうよ」


 ・・・確かに今のところは2人が仲良くなっているように見えるが、それは1日だけで今後長く続く保証は今の所ない。


「・・・もうちょっと様子見させてくれ」


「え〜、早く〜」


「・・・わかった、じゃあ今日は3人で出かけよう」


「え?3人?・・・あっ!なんでもないよ!うん!いいね!楽しみ〜!」


 今の「え?」という声はとても友達と3人で一緒に出かけようと提案された人とは思えないほど重たい声だったような気がしたが気のせいだろうか。


「じゃあ結愛も呼ぶね」


「あぁ」


 そして俺たちは、3人でボウリングやダーツとかがある場所に遊びに行くことになった。

 先日までなら考えられなかったことだ。


「そーちゃん!3人でお出かけなんて嬉しいよ!ありがと!」


「あぁ」


 ・・・2人には申し訳ないが、これはある意味、本当に2人が仲良くなったのかのテストでもある。

 正直あの俺の説得だけで2人がこんなにもすんなりと俺の意見を受け入れてくれるのか疑わしい。

 だからその確認を込めてのテストだ。

 俺がそのテストのために今いる校門からその遊び場に向かおう・・・と思っていたところで、イレギュラーが発生した。


「あれー?先輩と初音先輩と結先輩ー?3人集まって何してるんですか〜?」


「あ、あゆ!?」


 まさかのあゆと遭遇、全くの計算外だ。


「なんですか〜?私に見られちゃいけない用事とか〜?」


「いや、そういうわけじゃないんだが・・・」


「それにしても3人一緒で初音先輩と結愛先輩が言い争ってないなんて珍しいですね〜、なんか良いことでもあったんですか〜?」


「うん、私たちもう仲直りしたから」


「ねー」


「・・・へぇ」


 あゆは何かを疑っているようだ。


「どうしていきなり仲直りなんて?」


「それは俺が───────」


「別に?ただ仲悪いよりは仲良い方が良いって思うのは自然なことでしょ?」


 初音は俺に説明させたくないとでもいうように俺の話に割り込んできた。

 ・・・どういうことだ?


「そうそう、それだけ」


「え〜?きっかけも無しに先輩たちがいきなりそんな風になるなんて私思えないんですけど」


「あぁ、そのきっかけっていうのが───────」


「仲悪くなりすぎてそーちゃんに迷惑かけてるって思ったから仲良くしだしただけだよ?そんなにおかしいかな〜?」


 今度は結愛までもが俺に説明させたくないとでもいうように俺の話に割り込んできた・・・そうか。

 2人とも俺と別れたことを言いたくないんだ・・・でも結愛が俺の浮気相手なことはあゆは知らないはずなのにどうして結愛まで?

 ・・・と思ったが、自意識過剰でなければ今俺に恋人が居ないとあゆにバレたくない、ってことなんだろうか。


「先輩、私もついてって良いですかぁ?」


「え、な、なんでだ?」


 あゆとはこの前のトイレの一件から話してないからちょっと気まずい。


「え、別に〜?先輩たちと遊びたいってだけですよ〜?それともやっぱり私がいちゃまずいんですか〜?」


「・・・そんなことはない」


 こうして、俺たちは4人で遊びに行くことになった。

 ・・・あゆは何かを企んでいるんだろうか。

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